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シネマ365日

2013年7月19日

アフターグロウ (1997年 恋愛映画)

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監督 アラン・ルドルフ
出演 ニック・ノルティ/ジュリー・クリスティ/ジョニー・リー・ミラー/ララ・フリン・ボイル

黄昏の橋の出会い 

 二組の夫婦の「成熟のあと」つまり盛りを過ぎたあとのお話。一組は典型的な倦怠期。あと一組の熟年夫婦は家庭内離婚だがちょっと複雑なわけがある。ルドルフ監督はロバート・アルトマンの助手を長年つとめ監督に進出した。そのせいか彼の監督作品はアルトマンが製作したケースが多く本作もそのひとつ。熟年夫婦がモントリオールに住んでいること、彼らにセックスがないことなどの理由が映画の後半明らかになっていくが、解析にいたる独特のテンポ、つまりくどくど説明しすぎず、といって独断的にならず、どこにでもいる二組の夫婦の心模様を丁寧に映像に語らせていく映し方、そこのテンポはやはりアルトマン的だな▼ジェフリー(ジョニー・リー・ミラー)と妻マリアン(ララ・フリン・ボイル)はどこで歯車がちがったのか、最近すべてに噛み合わなくなっている。妻は子供がほしい、夫は子供にしか関心がなくなった妻がウザったい。子供をつくろうと迫る妻をつきとばして家を(超豪華なマンション)出てきた。オフィスの自分の専用室に入って、落ち着いた知性的な中年の秘書の女性の心遣いに(上質のワインのような女性だ)とつぶやき、やっと人間の女に出会えた気がする。妻は子供部屋がほしいといいつのり「勝手にすればいいだろう」という夫の捨て台詞でさっそく便利屋ラッキー(ニック・ノルティ)を呼んだ。このラッキーがマリアンと深い仲になるのだが「なんでこのオッサンと不倫になるのか」ようわからん野暮な風体でニック・ノルティは登場する。ところが彼はもてるのだ。エリートの若い男にはない汗の匂い、頑丈な体つき、テキパキした仕事の処理もあるが、なんといっても彼のお話の心地良いこと。とりたてて女をほめるわけでもくさすわけでもないが、心の隙間にじわっと沁みる理解ある言葉。ごついオッサンの態度振る舞いに隠された意外な感性に女の心はほぐれる。ついいっしょになって笑う。これが曲者だ。いっしょに気持ちよく笑いあえる男にであうこと。これが最大の「ご縁」になることを知っている女は案外少ない▼さてラッキーの妻フィリス(ジュリー・クリスティ)はB級映画の女優だった。今は自宅で昔の出演映画を見てくらす過去の女。退廃であわれでちょっと滑稽な気位の高い女をクリスティは陰影濃く彫り込んでいく。ラッキーとの間にセックスがなくなったことをラッキーは「ちょっとしたトラブルで、まあつぐないみたいなものさ」とマリアンに告げる。つぐないってなんだ。キャシーという一人娘がいた。フィリスが共演者との不倫でもうけた子だ。自分の子だと信じていたラッキーはある日フィリスから打ち明けられ「キャシーは俺の子じゃない」とわめき、それを聞いた娘はショックで家出してしまう。後日モントリオールに来たとだけ書いた手紙がきて、夫婦はモントリオールに引っ越し8年になる。夕暮れ時キャシーに似た娘の後ろ姿をみかけ、かけよったりする。フィリスは夫の不倫に感づき、リッツ・ホテルのバーで密会を目撃する▼妻の素行を調べにリッツにきたジェフリーはバーでフィリスを見て惹かれる。隣のテーブルにすわる。フィリスはタバコをのんでいる。「煙が目にしみる」ジェフリーがつぶやくと「J・カーン作」とフィリスがひとりごちる。ジェフリーの脳内電球がパッとともる。あとさき忘れ「少々大胆ですが」と切り出す「一応それなりの男です。あなたほどの女性ならお気づきと思いますが。きみ」とウェイターをよびとめ「ドンペリ二人分」正面突破で口説くのである。週末を湖畔の城ですごそう、そこはすべてが一流、あなたにこそふさわしい、わたしはジェフリー・バイロン3世、とまあそんな具合だ▼フィリスはいっときの夢だとわきまえている。ラッキーも親子ほど年のちがう若い女相手に「電球はいつか切れる」と彼らしい例えで別れの因果を含める。ジェフリーはフィリスが抑圧してきたセックスの欲求がほとばしるのに恐れをなして城の寝室から退散する。ジェフリーとマリアンは元の鞘におさまり、どっちの子か知れないがめでたく妊娠した。ラッキーはある日の夕暮れ橋を歩く後ろ姿がキャシーにそっくりな娘を見た。夢中で走りより声をかけた。「キャシーだろう、パパだよ。ぼくが悪かった。帰ってくれ。お願いだ」泣きながら訴えるラッキー。無表情に眺めていた娘の顔にあるかなしかの薄い感動が浮かぶ。ラストシーンはフィリスが狂ったように号泣しているから、やっぱり人違いだったのかなーと思うのですが、ラッキーは必死で妻をだきしめなにか口走っています。アングルが横にずれていき、橋の上でみかけた娘がとなり部屋で待っているのですよね、微笑を浮かべて。ということはやっぱりキャシーだった、ついにめぐりあったのだ。人生いろいろ。アフターグロウもいろいろ。良質の小説を読んだあとのような後味のいい「いろいろ」でした。

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