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シネマ365日

2013年7月21日

偶然の旅行者 (1988年 恋愛映画)

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監督 ローレンス・カスダン
出演 ウィリアム・ハート/キャスリン・ターナー/ジーナ・デイビス

力のある女性像 

 本作にさかのぼる7年前…というだけでピンときたら相当の映画ファンですね。いわずとしれたこのトリオ、ローレンス・カスダン監督、ウィリアム・ハート、キャスリン・ターナーの悪女映画の名作「白いドレスの女」(1981)がありました。キャスリン・ターナーはその後「シリアル・キラー」(連続殺人犯)の語源になった「シリアル・ママ」を演じました。悪女というか猛女というかすごい役でしたが、本作では息子を不幸な事件で失くした母親サラです。夫のメイコン(ウィリアム・ハート)にある日いきなり家をでると一方的に告げる。そしてスクリーンから消えて「おや、キャスリン・ターナーはこれで出番が終わりか、いやそんなはずはないよね」と思うころ案の定復活!▼悪女ではないとしてもかなり強引な女性として存在感を示します。強引といえばメイコンが飼い犬をしつけるため知り合う犬の調教師ミュリエル(ジーナ・デイビス)が、個性的というか自分勝手というか、こまかいことを全然気にしない大らかな女というか、どっちにしても強烈な女二人に挟まれたメイコンの煮え切らなさ。あまりの優柔不断ぶりに「なにこのオッサン」といらいらさせられる女性観客は少なくないはず。メイコンはメイコンでけっこうなご都合主義者なのです。こんな男を相手にする以上、女はキョーレツにも強引にもならんとラチがあかんわと妙に納得させられます▼メイコンは観光客ではなくビジネスマン向きの旅行ガイドブックのライターだ。仕事柄あちこちに出張する。その日も仕事から自宅へ直行、妻のサラが迎えてくれたが様子がヘンだ。二人の息子は一年前スーパーに入った強盗事件に巻き込まれ射殺された。以来夫婦の歯車が狂ってしまった。妻は夫がスーパーに連れていったからだといい、もうひとり子供をつくろうという夫を冷たい心の持ち主だと思う。心の溝が埋まらないまま妻はアパートを借りて家をでた。メイコンは兄や妹がいる実家で寝起きすることにした。飼い犬エドワードを連れていくがメイコンにさえ吠え噛み付く。通りすがりにみかけた「ワンちゃん、ネコちゃん病院」にそこでは行くと調教もするというので頼むことにした。調教師がミュリエル(ジーナ・デイビス)だ。彼女はバツイチ。7歳か8歳のアレルギーの息子がいる。ミュリエルはメイコンを夕食に招くが、迷ったあげくメイコンは断りに行く。在宅のミュリエルに息子を失くしたこと、まだ心の整理がつかず同じ年頃の男の子ととても話ができないことを打ち明ける。ミュリエルはだまって招き入れなにも考えず休むように言う▼ミュリエルのやさしいような突き放したような、自分を愛しているような愛していないような、とらえどころのない、でも依頼心の全然ないきっぱりした生き方がメイコンは新鮮だった。いつしか二人で再出発しようという気になったとき、妹の結婚式で別れた妻サラに再会する。彼女は自立して明るくたくましくなっており、二人は忘れていた幸福な結婚生活を思い出す。メイコンはサラにもたれかかりサラも以前は唾棄すべき弱い性格にみえていたそんなメイコンが、はかなげな影のある、やはり自分がいて守ってやらねばならぬ男に見えるのだった。ではミュリエルはどうなる。ふーん、それならそれでいいわよ、とはいうもののなんでか未練は断ち切れぬ。メイコンもサラと関係を戻したもののミュリエルの奇妙な魅力は忘れられない。あっちへふらふら、こっちへふらふら、この映画ざっと2時間ですが後半はほとんどメイコンの彷徨です。いったいどうするつもりやと嫌気がさしてきそうな寸前「必要なのはだれを愛しているかではなく、自分がどう見られているかだ」とか、じつに謎めいたセリフを発してメイコンはミュリエルを選びます。ほうか、ほうか、まったくけっこうなこと▼ジーナ・デイビスは本作でアカデミー助演女優賞を受賞しました。演技力もありアクションもできる女優として「テルマ&ルイーズ」や「プリティ・リーグ」「ロング・キス・グッドナイト」と1970年代から80年代にかけ行動し主張する強い女性像の一翼をにないヒットを飛ばします。リドリー・スコットとジェームズ・キャメロンという監督たちとともに登場したシガニー・ウィバーやジーナ・デイヴィスやリンダ・ハミルトンらが演じた女性像は、そののちアンジーやミラ・ジョコヴィッチや、最近では「ドラゴン・タトーの女」のように、銃や暴力を辞さないどころか、それに加えハイテク頭脳を武器とする戦う女を作り出しています。そういう見地からみると本作のジーナ・デイビスは古典的な存在です。

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