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シネマ365日

2013年7月23日

ブルースチール (1990年 サスペンス映画)

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監督 キャスリン・ビグロー
出演 ジェイミー・リー・カーティス/ロン・シルヴァー

ビグロー監督の佳品

 キャスリン・ビグローの男性観には「男は銃を持つと変態になる」という項目があるのです、きっと。マグナム44を隠し持ったとたんユージン(ロン・シルヴァー)は殺人鬼になるのですよ。発端は新米女性警官メーガン(ジェイミー・リー・カーティス)が警察学校を卒業しあこがれの警官として職務に就く。最初のパトロールでコンビニの押し込み強盗を目撃し、男は客達を床にはいつくばらせ、マグナムを店主の頭にあてていた。武器を捨てろといっても女だと舐めた強盗は「へっ。アホかお前は」とせせら笑う。再度連呼したメーガンに強盗はこれでもくらえと銃を向ける。ここで男を説得させるようなビグロー監督ではない。あっというまにメーガンはガンガンガン、コルト38を連射して強盗を蜂の巣にしてしまう。強盗の手から落ちたマグナムを床に這いつくばっていた客の一人、ユージンがこっそりひろって現場から逃走した▼オープニングはあらゆる角度からアップになったレボルバーです。監督は「武器の美しさ」に惚れ込んでいるのにちがいありません。そもそも「ブルースチール」というタイトルは「銃」ですからね。撃鉄・銃身・弾倉・引き金・装填した弾丸がブルーの色調のなかで冷たく光る。青いシャツをブラジャーの上に着用したメーガンはきりりとネクタイを締め、拳銃をホルダーに収め黒い厚底の革靴のヒモをくくり最後に帽子を目深にかぶる。制服に身を固めたメーガンは、きょう警察学校の晴れの卒業式だ。監督はメーガンの警官への熱い思いを観客に手短に伝え、強盗シーンに移るのですが上司は「拳銃を乱射した」といってメーガンを停職にする。早くも彼女の警察官人生は頓挫だ▼マグナムを持った男は拳銃の威力に魅入られたとしか思えない。あっちこっちでバンバン無差別殺人に走り、その一方で自分が「時の人」だということを世間に知らせたくてたまらない。メーガンに近づき男の正体を知らないメーガンは恋心をだく。このへんのウブな風情がカーティスは32歳でしたがなかなかフィットしている。ユージンはますますエスカレートしてメーガンを待ち伏せして親友は殺すわ、同僚は射撃するわ、もう完全にイカレ状態。無理やり病院に収容されたメーガンは夜明けとともに脱出し、出勤で混み合うニューヨークの市街でユージンを追い詰める。壮絶な射撃戦であります。百発百中でなく弾がなかなか当たらない、弾切れになって銃撃しながら装填するディテールなんか監督の小技が効いていました▼メーガンは父親の家庭内暴力で母親が殴られるのを見て育った。だから父親が許せない。母親にも親父をつけあがらせた責任があるとして、要は両親に打ち解けない娘なのだ。ある日いきなり警察に姿をみせた母親に「お母さん、なにしにきたの」などとつっけんどんな言い方をする。母親はこういう「ここがお前の職場なのね」だれも書いたことがないと思うから敢えて言うがこれは隠れた名シーンである。娘がどんな場所で働いているかを母親なら知っておきたい母親の気持ちを現すとてもよくできたシーンだ。若いメーガンはそんな母親の気持ちが察せられず「そうよ、ここで働いているのだから」なんて答えている▼ビグロー監督の最新作「ゼロ・ダーク・サーティ」のCIAの女性情報分析官はメーガンの延長線上にある。警察とかCIAとか閉鎖的な男社会で圧倒的なマイノリティにもかかわらず奮戦する女性とは、ハリウッドで監督をやってきたビグローの半身だろう。主演のジェイミー・リー・カーティスもなかなかのもので、目の美容整形を受けたのちペインキラーの服用からドラッグとアルコールを常用し、ハリウッドが求める永遠の若さの犠牲になりかけたことを告白、以来髪を染めることをやめ美容整形も繰り返さず、しかし50歳にして上半身ヌードで雑誌の表紙を飾る快挙をみせた。本作はビグロー監督とカーティスの隠れた名作だ。本作撮影中のカーティスをある日男性が訪ねてきて出演を交渉した。だれあろう、ジェームス・キャメロンだった。彼が提示した映画が「トウルー・ライズ」シュワちゃんとタンゴを踊るラストシーンは絶品だった。そうそう、キャメロンとビグロー監督がそもそも知り合ったのが、ほかならぬ彼がカーティスを訪ねてきたこの日だったという話がある。蛇足だけどご存知ですよね、キャメロンとビグローがこのあと結婚したってこと。

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