女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

シネマ365日

2013年7月24日

失踪  (1993年 サスペンス映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ジョルジュ・シュルイツアー
出演 ジェフ・ブリッジス/キーファ・サザーランド/ナンシー・トラヴィス/サンドラ・ブロック

監督のヒイキ 

 副題は「妄想は究極の凶器」これだけでズバリ本作の解題になっています。大学で化学を教えるバーニー(ジェフ・ブリッジス)はよき父・よき夫である。ある夏の日川で溺れかける女の子を一人娘デニースがみつけた。パパは勇敢にもバルコニーから真下の川に飛び込み女の子を救出。以来娘にとって「おれは神様になった」とある。普通の神経なら自分のこと「神様」だなんてなかなか気恥ずかしくいえないものでしょうけど、バーニーパパは自分が娘の神だと思い込むのよね。このあたりから充分バーニーの「危ないおじさん」像がちらほらする。だんだん「神様」という自己認識はエスカレートし、娘に最上の自分をみせたのだから極悪の自分も悟らせないといけない、それでこそ自分はほんとうの神になるのだなんて「どうしてそうなる?」というブッ跳びかたですが、シュルイツアー監督は急かず慌てず、じわじわとバーニーの妄想ぶりの照り焼きにかかります。ジェフ・ブリッジスが粘着的な異常者の気質を、コテコテと脂で固めるように造型していきます。適役でした。ハリウッドで最も過小評価されている男優の一位に再々あげられてきましたが、2009年「クレイジー・ハート」でノミネート五回目にしてめでたくアカデミー主演男優賞受賞。ちなみに「報われていない女優」トップはジェニファー・ジェイソン・リー(「イン・ザ・カット」「ジャケット」など)です▼ジェフ・ブリッジスに対抗するもう一人の主人公役は失踪した恋人を3年にわたって探し続けるジェフ(キーファ・サザーランド)ブリッジスもサザーランドもどっちも父親が俳優です。ロイド・ブリッジスとドナルド・サザーランドです。二世俳優同士ですがこの映画に限っていえばジェフ・ブリッジスのほうがもうけ役だ。キーファ・サザーランドは恋人を思うイイ人を演じるのですが、いかんせん、劇中ではダイアン(サンドラ・ブロック)やリタ(ナンシー・トラヴァス)にすぐにおこられ、仲直りし、また喧嘩して愛想をつかして女が出て行くという構図で、どうみてもシャープとはいいがたい。それに比べイカレテいるし主張することは一見まともそうだがよくきくと支離滅裂・意味皆目不明、でもわけがわからぬなりに男の迫力を備えたブリッジスが役柄でトクをしています(かなりはた迷惑な主張と迫力ですが)▼ドライブインでコンビニに入ったきり行方不明になった恋人ダイアンが29歳のサンドラ・ブロックです。この翌年「スピード」でブレイクします。本作では表情がまだ生硬で女性の29歳にしては幼いくらいです。頼りないジェフにいらいらさせられながら最後まで彼を見捨てず、頭の狂ったバーニーと渡り合うナンシー・トラヴィスはこのとき32歳。二児の母になった現在はすっかり貫禄がついてテレビで活躍していますが、本作ではしゃきしゃきした、まるで下町のクラリス(「羊たちの沈黙」)のような存在です。しかしですね、彼女が殺人鬼を恫喝して睡眠薬入のコーヒーを飲ませ、生き埋めになった恋人の棺桶を釘抜きでこじあけ、分厚い板をガンガンひっぱたいてぶちやぶるのです。そこへ妄想男バーニーが襲いかかる。場所は夜中の森の湿原地、つまり泥地である。悲鳴をあげて泥まみれになるリタをさておき、カメラは棺桶のなかでモウロウとしてまぶたをひくひく、ひとつも起き上がってこないキーファを意地悪く映します。監督っていうのはだいたい俳優をいじめて喜ぶマゾが多いのですがシュルイツアーもその一人でしょう▼真相は極悪人を証明したいバーニーが犠牲者となる女性をドライブインで物色し、何度か失敗したあげくダイアンを車にひきずりこみ、クロロフォルムで眠らせ山小屋に連れてきて睡眠薬入のコーヒーをのませ棺桶にいれて生き埋めにした、ということです。でもテレビでダイアンをさがすジェフの一生懸命さにうたれ(?)では恋人にあわせてやろうとバーニーは再び同じ行動を起こすが、今度はリタがいたために失敗、棺桶から這い出したジェフにシャベルで頭を叩き割られて死ぬ。以上です。いくら失踪したダイアンのことを知りたいといったって、みるからに異常なバーニーのいうことをウダウダ受け容れていくジェフと「わたしは自分に賭けるわ」勝手にほざけ、変態男とばかりバーニーを張り倒すリタと、監督はあきらかにひいきの度合いがちがいますね。

Pocket
LINEで送る