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シネマ365日

2013年7月27日

クッキー・フォーチュン (1999年 コメディ映画)

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監督 ロバート・アルトマン
出演 グレン・クローズ/ジュリアン・ムーア/パトリシア・ニール/リヴ・タイラー/チャールズ・S・ダットン

孤独ですら、ない 

 ロバート・アルトマンの映画ってどこか気色わるい人物がぞろぞろでてくるのよね。はみだしたというか、逸脱したというか。「三人の女」でシェリー・デュバルが演じた付き添い看護師がいたでしょ。見栄っ張りで知ったかぶりで、でもどこか気がよくて憎めない。自称グルメで料理の達人なのだけど、開いてくれたパーティはカナッペとファスト・フードばかり。みな閉口して退散するという…「クッキー・フォーチュン」ではちょうどそれがグレン・クローズ扮する田舎町の主婦カミールなのね。彼女と妹コーラ(ジュリアン・ムーア)は、復活祭の出し物に教会で催す芝居を演出する。カミールはいっぱしの監督気取り、サロメを演じる妹の箸のあげおろしにまでケチをつけ、また妹は姉がいなけりゃなにも出来ぬ、というあんばい。若い保安官や牧師や弁護士やらが共演する。同じ町にすむフォーチュン(パトリシア・ニール)は夫に先立たれた。時々様子を見によってくれる隣のウィリス(チャールズ・S・ダットン)と口喧嘩がたえないが、最近フォーチュンがひんぱんに夫を回顧することが、ウィリスは気になっている。ここまでの配役を聞いただけでもただならぬ芸達者たちであることがわかるだろう。「危険な情事」のクローズが後先みえないこっけいなジコチューを、姉にこき使われるおバカ妹がラストにみせる妖しさはジュリアン・ムーアが一場をさらう。チャールズ・S・ダットンはトニー賞の常連です。そしてこの人パトリシア・ニール。よたよたと腰をかがめて歩く老婦人の双眸に、熟練の聡明な名女優が隠れていることさえこの女優は跡形もなく消してしまう▼本作は一言でいうと「でっちあげ殺人事件」が引き起こした大騒動だ。叔母フォーチュンが夫の後追い自殺した。発見者はカミールで、敬虔なキリスト教徒の家に自殺者がでるのは恥ずかしいこととし、殺されていたと警察に届ける。言ってみればこれは彼女の虚癖の延長であり嬉々としてまやかしの殺人事件を脚色する。それによって居もしない犯人の捜索が行われる。コーラの娘エマは町の因習に反抗し家をでて、男に棄てられ帰ってきた。彼女は大叔母のフォーチュンが好きだった。フォーチュンの面倒をみてくれているウィリスとも気が合った。ウィリスは勤勉で誠実な黒人の青年だ。釣りが大好きで保安官や弁護士が釣り仲間だ。警察が逮捕した容疑者はこのウィリスだった。だれも彼が犯人だなんて信じない。ウィリスがブタ箱入りならわたしも入るわと、へんな名目をつけてエマも檻の中に。保安官の奥さんがごうせいな夕食を差し入れてくれ、弁護士が接見と称してチェスをしに来た▼真相は意外なところから明るみにでた。現場にくだけていた硝子の破片にわずかに付着していた血液がめったにないAB型マイナスだった。合致する人物はたった一人。犯人探しが劇の本筋ではないからカミールの嘘は早い段階でばれてしまう。アルトマンの黒い手品はそのあとから始まる。フォーチュンの遺言が発表されるに及び、全財産はウィリスに譲られることになる。彼のおじいちゃんは白人でフォーチュンの縁戚にあたるのだ。いちばん血の近い自分こそと目論んでいたカミールはアテが外れたばかりか、妹の証言(今まで自分を虐待してきた姉に、コーラはトンマなふりをして最悪の証言をする)によってカミールは殺人犯として刑務所入り。筋書きがそっくり自分の身にふりかかってきたカミールは絶望して獄中自殺する▼この映画のキーパーソンはやはりグレン・クローズだろう。悪意とすれすれのでしゃばり。犯意とすれすれのうそ。それらはみな自分の虚栄と自己愛を満たすためだけの道具だ。アルトマンはそんなエゴが崩れていくときの、孤独ということばはカッコよすぎる、もっとはかない、もっと弱々しい、寄る辺ない人間の弱さとでもいうものを外科医のように捌いていく。それらの主人公がたいてい女だというのが頭にくるけどな。アルトマン、きみは女嫌いだったのかよ。

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