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シネマ365日

2013年7月28日

鷹 (1983年 犯罪映画)

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監督 アラン・ドロン
出演 アラン・ドロン/アンヌ・パリロー

癪にさわるセレブ男 

 昨年(2012)4月、アラン・ドロンが不整脈の手術をした記事がでた。76歳だ。引退するすると言っては依然テレビやら雑誌やらに出ている。露出度はぜんぜん衰えていませんね。二年ほど前パリの雑誌がドロンをでかでか表紙にして「もっとも癪にさわるフランス人セレブ」を特集した。一位がカーラ・ブルーニ。二位がドロン、三位がジェラール・ドパルデューだ。説明の要はないと思うけど、やっかみついでに一位のヒトのフルネームを言えばカーラ・ブルーニ・サルコジ。フランス大統領の妻、夫婦でなにかと話題の多いカップルですね。彼女の実姉ヴァレリア・ブルーニは映画監督で「愛する者よ、列車に乗れ」「プロヴァンスの贈り物」などを撮っています。三位がドパルデューだ。ジャン・ギャバンの後継者と言われた彼も64歳。日本だったら「あの人はいま」に登場してもいい年だけどとんでもない、クロード・シャブロル監督の遺作「刑事ベラミ」で主演、カトリーヌ・ドヌーブと「しあわせの雨傘」で共演、つい最近では「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」にシェフになって登場、監督のアン・リーがオスカー(監督賞)を射止めました。要するに76歳のドロンと64歳のドパルデューがフランス人にとっていちばん腹の立つセレブ男なのだ。このへんがちょっと日本と、感覚というより文化がちがうような気がする▼「鷹」はもちろんドロンのワンマン犯罪映画。主人公ジャック(アラン・ドロン)は8年前の宝石商殺しの罪で逮捕され仮出所する。逮捕直前に60万フラン(当時)のダイヤを隠したことになっている。どこに隠したのか、殺しの黒幕はだれなのか、ドロンの周辺に謎と陰謀がムンムン。彼に味方する相棒や恋人はつぎつぎ殺され、傷心のドロンの前に過去のある暗い美女が現れ助けを求める。定石といえばいえるベタの展開。これといったヤマもなくどんでん返しもなく、ドロンの趣味につきあわされるだけ。監督なんかやめときゃよかったのに、と思いつつ2時間つきあってしまう、いつものドロン映画のパターンだ。共演のアンヌ・パリローはこのとき23歳、7年後の「ニキータ」でブレイクしハリウッド進出「仮面の男」でレオナルド・ディカプリオと共演したりしますが、最近は軸足をフランスにもどしたようです。フランソワ・ペリエは「仁義」や「サムライ」でドロンとはおなじみです。本作はしかし主人公は平気でバンバン人を殺すし、泥棒稼業から足を洗うふうもないし(劇中南米に高飛びしたあとは知らんけど)女はいつも尽くしてくれる。こんなばかな話があるかという映画だ。ドロンは本作で48歳になっていて主演作も減っていたし、アクションも難しくなっていた、だから自分がジャン・ギャバンにしてもらったように、若手育成に力をかす後方支援にまわっているとみる向きもあるが、そうかなあ。それもないとはいわないが、百になっても踊りを忘れないのが雀でしょうが。それに殺人や犯罪を屁とも思わない彼の映画のつくり方が、ドロンの暗黒面をはからずも表象している▼パトリス・ルコント監督が、ドロンとジャン=ポール・ベルモンドを主役に「ハーフ・ア・チャンス」を撮ることになったとき、伝説によって美化されているアラン・ドロンが、過去に監督や相手役に対する、多くの高慢な要求をつきつけてきたことについて語っている「彼は明らかに二重人格をもった人だ。一般に受け入れられているイメージとまったく同じ態度を取ったかと思えば、そのすぐあとに逆の態度で接してくる。これは監督にとって常に心地いいはずはない」リビング・レジェクト(生ける伝説)としてアラン・ドロンがフランス映画界の尊敬を集めていることは疑いようがない。しかしドロン自身は「マスコミが好意的に流している本当の自分とはちがう姿」があることを自分で語っていてびくともしない。どんな暗黒面のどんな風評だろうと、ドロンは意に介さず一顧だに与えていない。あらゆるスキャンダルさえ錦上花を添えてきたこの野郎の富と名声とは、フランス人でなくとも「癪にさわる」といわずしてなんと言う。

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