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シネマ365日

2013年7月31日

シェイム (2011年 社会派映画)

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監督 スティーブ・マックイーン
出演 マイケル・ファスペンダー/キャリー・マリガン

共感しにくい主人公 

 どうにも首をかしげてしまったのだ。本作はヴェネツィア国際映画祭作品賞、セビリア・ヨーロッパ映画祭監督賞・主演男優賞、英国インディペンデント映画監督賞・主演男優賞、ロスアンゼルス映画批評家協会主演男優賞、アフリカン・アメリカン映画批評家協会監督賞など主たる映画賞を軒並み受賞、ノミネートまで含めたら数えきれない。いい映画だと思うし主演男優賞も助演女優賞も妥当だろうけど、性依存症を扱ったからといってことほどさように、嵐のような激賞を受けることか、と思ってしまうのだ。日本人が性にいい加減だとは思わないが、本作の登場人物たちほど深刻にもおおげさにも「性依存」を取り上げていないのとちがうか▼主人公のブランドンのアタマを占めるのはセックスだけ。お金を払って、あるいは行きずりのナンパした女性としかセックスできないという変則男性だ。気立てのいい同僚女性ときちんとホテルに行っても出来ずにしょげ返り、気にしないでもいいわよと慰める女性を帰し、代わりに娼婦を呼ぶとたちまち噴火炸裂する、確かにいささか病気でしょうな。しかし彼の身の上を考えてみよう。一流企業に勤め広いアパートに一人住まい、親に仕送りするわけじゃなく自分の好きなことに金は使い放題、上司の受けもいい、金があって暇があって独身で特に上昇志向はなく仕事はほどほど主義、しかも体は至って健康。これじゃ考えることってイヤでも女ばかりになっちゃうでしょ。それが「シェイム(恥ずべきこと)」なのだからなんだか返答に困るのだ▼妹シシ(キャリー・マリガン)が男と別れ転がり込んできて兄と同居する。兄妹は親元離れニューヨークにやってきて助けあって暮らしてきたのだと思う。劇中で説明はないが歌手であるシシがニューヨークへの思いを歌うと兄は涙ぐむのである。仲のいい兄妹だがシシの兄への思い入れは度が過ぎていて兄妹の境界を超えそうだ。兄もまたその危険を知っている。シシが自分の上司とセックスに及ぶと嫉妬で居ても立ってもおれず深夜の大都会をジョギングするのである。屁理屈こねるようだけど、近親相姦と性依存は問題がちがうでしょう。いったいこの映画はどっちに軸足をおいているのだ▼こんな地割れ現象みたいな見解の相違が生じるのは、もともと性に対する基本的なアプローチが欧米とアジアでは全然ちがうからではないの。アンコールワットの彫刻の交合や密教の曼荼羅や歓喜天を考えると、どうもアジアのセックスの観念が「恥ずべきこと」であるとは思いにくい。性というやっかいで扱いにくい、破滅もすれば歓喜もする、そんなわりきれない対象に「混沌だから愛する」アプローチと「混沌だから分析する」アプローチがあるように思える。アジアは典型的に前者。欧米は後者。精神分析なんてヨーロッパでなければ生まれなかった学問だ。そういう精神風土では混沌としたわかりにくいものに屈服するのが「恥ずかしい」のでしょうか。どっちでもいいけど、アジア人のはしくれとしてはあんまりこまごましたことつつきまわしてだれか幸せになるのかって気になっちゃうのよ。ブランドン、あなたもパソコンにいやらしい画像をとりこんでいる暇があれば、少しはせっせと仕事するべきだわ。しかもそれ会社のパソコンよ。公器じゃないですか。性依存どころか、依存しているものがあまりに多いから限りなく病的になるのよ。恥ずかしいのは下半身ではなく上半身の大脳よ。本作は制作費6500万ドルに対し興行収入は226万ドルだった。お金だけが価値をきめる総てではないけど、主人公に共感できる人が少なかったことだけは確かだわ。

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