女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「過剰な女たち」

2013年8月1日

特集「過剰な女たち」 バンガー・シスターズ (2002年 コメディ映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ボブ・ドルマン
出演 ゴールディ・ホーン/スーザン・サランドン/ジェフリー・ラッシュ

こんな人いない

 主役のスゼット(ゴールディ・ホーン)とヴィニー(スーザン・サランドン)を演じる二人の女優はこのとき57歳と56歳だ。人間の、特に女の可愛らしさとは、顔がどうの、シワがどうの、美人であるとかないとかとはまたちがうものだとつくづく思った。この映画を過激に、過剰に、でもハートフルにしているのはヒロイン二人の性格、またそれを演じる女優たちのキャラだろう。ライブハウスでウェイトレスをするスゼットは無断で店の酒ばかり飲んでクビ。借金も車の修理費もかかえ(どうしてくれるのよ)八つ当たりしながらも涙にくれ、ボロアパートで思い出の写真を取り出す。なつかしい親友ヴィニーがいた。スゼットはボディとドアの色が別々のポンコツに乗ってロスからフェニックスへ、一路砂漠を走ってヴィニーに会いにいく。20年ぶりだ。途中拾った中年男がハリー(ジェフリー・ラッシュ)というハリウッドの脚本家。一発だけ弾を込めた拳銃を持って父を撃ち殺しにいくというヘンなやつ。探し当てたヴィニーの家は豪邸でプールがあり、娘が高校卒業の記念パーティーにでかけると家中で浮かれ記念撮影中。幸福な雰囲気。自分がいる場所じゃないな~とスゼットは無言で去る▼ヴィニーの娘が覚せい剤でぶっ倒れ、ホテルの廊下で大騒ぎしているところにでくわしたスゼットは、無責任な同級生たちを追い返し看病してやる。スゼットに強引に部屋に泊まり込まれ辟易していたハリーは、アバズレだと思っていたスゼットのやさしい側面を知る。翌日娘を家に送っていったスゼットははからずもヴィニーと再会するが、かつての親友の言葉は「わたしはここの名士なの。5000ドルあげるから消えて」。金を受け取らずアタマにきてホテルにもどってきたスゼットに「君は立派だよ」とハリー。そこへヴィニーが花束をもって「さっきは悪かったわ」と食事に招待してくれた▼ディナーのテーブルについたスゼットにみえたのは、弁護士のエリート亭主と娘たちに囲まれ自分の過去をひたすら隠しているヴィニー。ヴィニーとスゼットはかつてバンガー(つぎつぎ男と寝る)シスターズと異名を取り、ロック・スターたちのパンツを脱がせナニの証拠写真まで収集する、史上最強といわれたグルーピーだった。その母の前歴を知らない娘たちは母親を下女扱いし、旦那は良妻賢母の一面しか妻に認めようとしない。むしゃむしゃ平らげるのに忙しいスゼットが、食べ物で口いっぱいにしながらポツポツ受け答えしているうちに、家人の想像もしていなかったヴィニー像が垣間見えてきた。ヴィニーもまたスザンナの話す思い出の中に自分が見失ってきたものに気づく。「ママはダンスがヘタよ」という娘たちに「ヴィニーはダンスの名人よ」落ち着き払っていうスゼットにみなキョトン。ソースを唇にベトベトつけてしゃべっているスゼットの口のまわりをヴィニーは指でふいてやる。そしていきなり言う「スゼットのタトーは何だと思う? メキシコへ追っかけをしてピラミッドの頂上に上り、一睡もせず彫ったのよ」彫った文字は伝説のロッカーのアナグラムだった。ママの声に底力がこもり一座はシーン。ヴィニーはいきなり鳥の胸肉を夫のシャツになげつけ、ワインのびんを片手にラッパ飲みしながら席を立った▼ここからがクライマックスである。バーにくりだし一晩中踊り明かして戻った二人。そこでは母親がトチ狂ったのはアンタのせいだと娘たちは責め、スゼットは黙って出て行く。ヴィニーは激昂し「母親をクソ扱いにするあなたたちこそなによ。そう、わたしは忙しいの。庭の木の手入れもし、娘をサッカーに連れていき、部屋を片づけ犬の予防注射にも連れていく。もうイヤそんな生活、あなたたちは全然わかっていない」後を追ったヴィニーは公園のベンチで肩を落として座っているスゼットをみつけた。自分が自慢できるのは若いときにロック・スターと寝たことだけだ、ほんとにろくでなしだと泣くスゼットをヴィニーは抱きしめ「あなたが来るまでわたしは自分の過去を隠していたわ。今はそんな自分が笑い飛ばせる。強い人ね。あなたが大好き。こんな人いない。愛しているわ」文字で書くとキレイだが涙と鼻汁でぐしょぐしょのスゼットの顔を、ヴィニーは何度も袖で拭いてやりながら言うのだ▼脚本がうまいと思ったのはたとえばこういうところだ。スゼットがヴィニーの家から失望してホテルにもどる。心配顔のハリーに「朝食は?」「まだだよ」「ドーナツ買ってきたの。食べない?」(差し出す)ハリーは気遣わしげに「もっとましなもの食えよ。朝食を頼もう」「いいのよ、出て行くから」とガブリ。たったこれだけだがその人の食事の心配をするようになるとは、半分はまってしまっているのである。ハリー演じるジェフリー・ラッシュ。今更だが「シャイン」でアカデミー主演男優賞、「英国王のスピーチ」で同助演男優賞。脚本の原稿執筆がノリにのって一人で踊りまくるシーンがある。その体技。彼が只者でない役者であることが一瞬でわかるみごとな場面だ。

Pocket
LINEで送る