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特集「過剰な女たち」

2013年8月3日

特集「過剰な女たち」 私がウォシャウスキー (1991年 アクション映画)

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監督 ジェフ・カニュー
出演 キャスリン・ターナー

シカゴという街の女 

 キャスリン・ターナーが「白いドレスの女」を演じたのが1981年27歳だった。映画史に残る悪女として語り継がれる女優になり、「シリアル・ママ」ではルールを守らない奴らに、まったなしで制裁を加える連続殺人主婦。ここから連続殺人犯のことを「シリアル・キラー」と呼ぶようになった。「ナイルの宝石」ではマイケル・ダグラスと組んで女ターザンのような脚線美を惜しげもなくさらした。ついでだが彼女と共演した男優はマイケルが「ローズ家の戦争」、「クライム・オブ・パッション」はアンソニー・パーキンスと、「ペギー・スーの結婚」ではニコラス・ケイジと。おわかりと思うがマゾ役が似合う男優と相性がいいのだ。彼女は確かに必要とあれば惜しげなくセクシーな肉体をみせるが、それはじつにたくましいといえる肉体美だ。最近では「どすこい。ターナー関」と声をかけてしまいそうな体幅の拡張ぶりだが、本作の時点ではカトリーヌ・ドヌーブを彷彿させる容貌に、キャスリン37歳の寒ブリの照り焼きのように脂の乗った筋肉美で、ハードボイルド・タッチのアクションをみせてくれる▼原作はサラ・パレツキーのデビュー作「V.I.ウォシャウスキー」。つまりウォシャウスキーは彼女の創作した女探偵で独特のスタイルを持っている。すなわち「スコッチを好む。捜査のためには無断侵入も辞さない。格闘技(合気道)に優れる。上等の靴を大事にする。シカゴ・カブスの実況中継」を好み気性が激しく、たとえ探偵業が不景気でお金に困っても独立独歩を維持し、命の危険にあいながら凶悪犯、詐欺師、男性至上主義者といった面々に打ち勝っていくところが読者の共感を呼んだ。ニューヨークでもない、L.Aでもない、サンフランシスコでもワシントンでもない、アメリカ中西部独特の閉塞感のある灰色のトーン、むき出しの城壁のような壁の上を走る地下鉄、強い季節風に煽られ波を逆立てるミシガン湖、そんなシカゴの背景にキャスリン・ターナーの無愛想なウォシャウスキーが似あう、それがまずこのヒロインのカッコよさを際立てている▼父を殺された9歳の女の子キャットは継母を毛嫌いし、父が依頼した探偵・ウォシャウスキーにしか心を開かない。子連れで捜査にあたるウォシャウスキーは依頼人が大規模な海運業の後継者三人兄弟のひとりで、利権をめぐって兄弟間に争いがあったことを知る。そこへウォシャウスキーの同級生で、今はギャングのアールが「事件から手を引け」と脅し、その場でウォシャウスキーは袋叩きにあう。女もタフでなければ生きていけない。やがてウォシャウスキーは真相にたどりつく。土壇場のアクション・シーンは特別見ものでもないが、そう不出来でもない。錯乱したキャットの継母が拳銃を発砲し犯人を射殺したばかりか、その場の全員を皆殺しにしようというすごいことになるが、ウォシャウスキーはためらいもなく撃ち殺す▼さてこのキャスリン・ターナーが「自伝」を著し共演者たちをなで斬りした。シネマ・トゥデイによるとニコラス・ケイジは「バカみたいな声、にせものの歯、考えただけでぞっとする」また彼は「道端でみかけたチワワが可愛いといってジャケットのふところにいれて盗んだ」。「スイッチング・チャンネル」で共演したバート・レイノルズが「キャスリン・ターナーの名前を聞くと吐き気がする」と公然と言われたこと、「白いドレスの女」のウィリアム・ハートは酒とドラッグの常習でつぎつぎ女をとりかえていたなど撮影秘話がてんこ盛り。うまかったのは「私がウォシャウスキー」という邦題。劇中ヒロインが自分の名刺の説明をする。V.I.ウォシャウスキーとだけ書いてあり、よく「V.Iとはなんだ」と聞かれる。本名のヴィクトリアの「V」だ。親しい友人たちはヴィッキーとかヴィクと呼ぶ。でも仕事は「親しみが入るとややこしくなる。だからウォシャウスキーで通す」というのがあえてファーストネームを書かない理由だ。そんなヒロインの性格がタイトルによく出ていた。

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