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特集「過剰な女たち」

2013年8月6日

特集「過剰な女たち」 ウェルカム!ヘブン (2001年 コメディ映画)

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監督 アグスティン・ディアス・ヤネス
出演 ペネロペ・クルス/ビクトリア・アブリル/ファニー・アルダン

心底笑っちゃう 

 奇想天外の発想がおもしろい。この世に善人が減って悪人ばかり。よって地獄はあふれかえり大繁盛、天国は過疎のため破産状態。天国の管理人マリーナ(ファニー・アルダン)は地上にいる一人のボクサー、マニの魂を救済して天国の財政を立て直そうとする。彼を天国に導く使者に選ばれたのは天国のクラブの歌手ロラ(ビクトリア・アブリル)だ。地獄では倒産一歩手前の天国を吸収し地獄の領地拡大計画が着々進行中。マリーナの邪魔をする地獄からの使者としてカルメン(ペネロペ・クルス)が地上に送り込まれる。本作は筋書きがどうのこうのというより先に、主演女優たちのカッコよさをあげたい。ペネロペがアバズレ女の男前を演じます。ビクトリアはいうまでもなくスペインを代表する大女優。歌と踊りがじつにセクシーです。もうひとりファニー・アルダンは「8人の女たち」でカトリーヌ・ドヌーブ相手に大乱闘した人。今回はガラリ趣向を変え天国の将来を憂い、地獄の代表者と手を組むことも敢えてやる大物ボスです▼ペネロペとビクトリアは当然ながら敵味方の関係です。ビクトリアはどうしようもない親不孝なボクサーを改心させるやさしい妻として、アタマをこれ以上殴られたら命の保証はないという医師の言葉に従いボクサーをやめさせようとする。親不孝なまま死んじゃったら天国にスカウトできませんからね。ペネロペは逆。うまいことボクサーの闘争本能をかきたて「汗をかいているときのあなたってステキ」とか「男は戦うものね」とかおだてまくってアタマに一発早くガツンと食らってもらわなくちゃ…ボクサーの夫は貞淑でわかりやすい妻より、妖しい雰囲気を発散させるペネロペに気もそぞろだ。しかしこのペネロペちゃん、どうも様子がおかしい。ビクトリアはペネロペに「なんだかあなたといると落ち着かないわ」ペネロペは妖気を発する熱い視線で(ジーッ)ビクトリアを見つめる。夫はふたりのあいだにただならぬ視線が「ビビビ」と交わされているのに気づく▼そこへ緊急計画変更がペネロペのボスから伝えられた。地獄ではクーデターが起こりボスを追放しようとしている。ペネロペはそれを知り「裏切るやつは嫌いだ」と男気(!)を見せボスに味方。マリーナもまきこみビクトリアと手を組んでボクサーの魂を天国に連れていく、そしてクーデターを失敗させ、天国は地獄を征服するという構想に組みした。だからペネロペとビクトリアは力を合わせる関係になったのだが、人間の男にそんな事情などわからない。女ふたりが理無き(わりなき)仲になった、自分がはじき出されたと嫉妬に狂っちゃう。ペネロペとビクトリアは接近し、ペネロペはビクトリア以外の女が目に入らなくなる。ビクトリアは理由もなくペネロペが気になって仕方ない。ここで最高のどんでん返しがあります。ビクトリアにホントのことを教えたペネロペはもうはばかることなくベタベタ「やめなさいよ、あなたの母親の年よ、わたしは」という言葉に耳もかさず抱きつくわ、もたれかかるわ。無邪気に笑わせてくれます▼さてラストシーン。ペネロペとビクトリアはムショ暮らし。床掃除している。情状酌量があったとみえ刑期はわずか3年。ここをでたら会おう…女ふたりはどうやらいっしょに暮らす口ぶりだ。そこでいきなりシーン転換。ガバっとバビエル・バルデム(「ノー・カントリー」「007スカイホール」)がアップになります。映ります。ノンクレジットだからびっくりする。これ以上はネタバレになるからやめるけど、バビエルは私生活でのペネロペの夫です。このチーム、ほとんどアルモドバル組の常連ですね。ペネロペはロスに住まいを持ってハリウッド進出もいいけど、やっぱりスペイン映画で本領を発揮している。スペインという国にある気だるさ、日ざかりの中にある陰のような、目に見えない暗さ、ファドやスパニッシュ・ギターが代表する哀切な叙情。彼女が生まれながらの土地で身につけた微妙で繊細な気配を、ハリウッドでズタズタにしてほしくないね。

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