女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「過剰な女たち」

2013年8月9日

特集「過剰な女たち」 プリティ・リーグ (1992年 事実に基づいた映画)

Pocket
LINEで送る

監督 ペニー・マーシャル
出演 ジーナ・デイビス/トム・ハンクス/マドンナ/ロリー・ペティ

心の中に生きる「現在」

 ペニー・マーシャル監督といっても日本では知られていませんが、監督作品をきけば「あ、あの監督」とすぐ思い当たる女性です。監督デビュー作の「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」(1986)から「ビッグ」(1988)「レナードの朝」(1990)そしてこの「プリティ・リーグ」。彼女の兄ゲイリー・マーシャルも映画監督で「プリティ・ウーマン」「バレンタインデー」「ニュー・イヤーズ・イヴ」など話題作を撮っている映画兄妹です。ペニー監督とトム・ハンクスは相性がよく「ビッグ」で起用に応えたハンクスは、ゴールデングローブ主演男優賞をとり注目されました。本作でもどうしようもないサイテー男から、野球に燃える熱血漢への変身を「いかにも」という自然体で演じます。しかしなんといっても本作の魅力は、ジーナ・デイビスやマドンナ、デイビスの妹役のロリ・ペティら高温の体熱を発する女優陣にあります。ペニー監督は女が女である以上かかえこまざるをえなかった時代の偏見が、スポーツの世界にもあったことを認めた上で、にもかかわらず反発や抵抗を示しながら全力でぶつかっていった女たちのさわやかな、短い青春を描きました。彼女らは若い体力のある独身者ばかりだったわけではありません。戦場から夫の帰還を待つ主婦であり妻であり、年老いた父の面倒をみる娘でした。実在した全米女子プロ野球は第二次世界大戦の真っ最中1943年に創設、1954年に幕を閉じたわずか11年間のことです。発足の理由というのが、男子選手が出征し、危機に瀕した大リーグの急場をしのぐ間に合わせでしかありませんでした。見世物感覚だった球団オーナーや観客は、彼女らが発散するエネルギーと体当たりのプレーに巻き込まれていきます。家庭で目立つことなく、家族と家事に従事していた彼女らは、ライフ誌の表紙を飾り称賛を浴び、認められることの充実感に、それまで感じたことのない生きる興奮を見出すのでした▼オレゴンの片田舎に住むドティ(ジーナ・デイビス)とキット(ロリー・ペティ)姉妹のもとにプロ野球のスカウトがきて近く発足する女子プロ野球リーグに参加しないかという。夫が出征中で気の進まないドティだったが「こんな田舎にいたくない」という妹に説得され、なかば強引にシカゴ行き列車に乗る。全米から集まった1000人の中から64人の選手が選ばれ4つのチームが編成された。ドティらが配属のチームは「ピーチズ」。クラブのダンサーあがりのメイ(マドンナ)や子連れのエブリンらがまじる。監督は元大リーガーのジミー・ドーガン(トム・ハンクス)だ。強打者だったが怪我で引退、以後5年間酒浸りだ。彼は毎日二日酔いでベンチ入り「女の野球なんてクソおもしろくもない」と不貞寝しているばかり。球場は閑古鳥が泣き、球団は採算がとれないのなら打ち切りだという。そこで「めだてばいいのね。やってやるわ」ライフ誌の記者とカメラマンがきていると知ったドティは、180度開脚キャッチであっといわせ表紙を飾る。さらに「ファウルをとればキス」で、観客たちはわれさきに身を乗り出してファウルを追う。ドティたちのガッツあふれるプレーが野球ファンをかきたていつしか球場は満員、ジミーは酒をやめ女子野球と心中する気で選手育成に打ち込む。しかし戦争の終結は迫っていた。彼女らはしょせん代用品でしかないのか…メイが言う。「わたしにクラブ・ダンサーに戻れっていうの。10セントでよっぱらいの相手をするのよ。絶対にいやよ。野球はやめないわ。球団の金持ちのチョコ男にわたしの人生を壊させないで」▼1988年ニューヨーク州クーパーズタウンの野球殿堂で女子プロ野球の殿堂入りセレモニーが行われようとしていた。ピーチズのなつかしい元選手たちが集まってきた。女子プロ野球閉幕から34年だ。ドティがいてメイがいて、キットもきた。彼女らはみな孫ができドティは夫と死別した。監督のジミーも選手たちの数人も鬼籍に入った。エンディングに流れる歌がいい「思い出なんていわせない、わたしたちの心にいまもあのときが生きている」ドティは映画の冒頭、セレモニーに出席するのをくよくよと迷っている。娘に「なにをしているの、お母さん、行くのよッ」尻を叩かれ遠路到着したのだ。彼女にとって女子プロ野球は過ぎてしまった人生の過去だった。セレモニーへの出席など、思い出にすがって生きていく老残の姿をさらすだけではないか。慚愧たるドティにマドンナは歌う。「思い出なんていわせない、あのときは今も心のなかに生きているわたしたちの現在」あらん限りの力で生きたあのとき。自分だけが知る充実感がドティの胸によみがえる。笑顔があふれる。暑苦しいくらいのマドンナの情熱が、なかなかいい。

Pocket
LINEで送る