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シネマ365日

2013年8月20日

特集 コメディエンヌ 永遠に美しく (1992年 コメディ映画)

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監督 ロバート・ゼメキス
出演 メリル・ストリープ/ゴールディ・ホーン/ブルース・ウィリス/イザベラ・ロッセリーニ

爆走! 女優ふたり

 90年代とはバブル崩壊後ズタズタになった経済の「失われた20年」の始まりだった。日本では一年毎に総理が交代し政治の収拾がつかず、94年には松本サリン事件が発生、20世紀の総集編ともいうべき閉塞感がおしよせた世紀末だった。本作は92年の公開。極上のブラックというべきか「女が煮詰まるとこうなる」という悪趣味の権化というべきか。古くは「フォレスト・ガンプ」や「コンタクト」最新作の「フライト」でまっとうな映画を撮っているゼメキスの、思いがけない意地悪度満開。これをみて無邪気に笑っている女性ってマゾだわ。映画は誇張しまくっているけど、それでも「女の本性」というところがいちいち当たっているところがシャクだわね。メリル・ストリープもゴールディ・ホーンも毒食らわば皿まで「思い切りワルノリしてやった」と嬉々として、最後まで腕まくりして突っ走っている。このファイト。そんじょそこらの女優にはできません▼時代は1978年。落ち目の女優マデリーン(メリル・ストリープ)の楽屋に、学生時代からのライバル、ヘレン・シャープ(ゴールディ・ホーン)が高名な整形外科医アーネスト(ブルース・ウィリス)を伴って訪れる。アーネストが「あなたのファンなの」というのは口実で、有名な外科医と婚約したことをみせびらかしにきたのだ。色魔のマデリーンの目がキラリ。スクリーンには早や戦闘開始ののろしがあがる。マデリーンは先手必勝その場でアタックをかけ、天才外科医の目はトロリ。ブルース・ウィリスがメガネのずれたダメおやじで登場。この映画の先行きをハッキリ予測させる。シーンは一転華麗な結婚式。アーネストの腕をとる花嫁はヘレンでなくマデリーンだった。7年後。巨大なお尻、盛り上がった背中、小山のような肩。背後から近づいたカメラが正面にまわりド・アップで映しだした顔と肢体は、ストレス食いによる肥満のため、ソファから動けなくなったヘレン。職もなく家賃も払えず朝から晩までマデリーンが殺される映画をビデオで見ながら食べ続けに食べる毎日。部屋を強制退去となり病院に収容されて半年、彼女が発する言葉はただ一言「マデリーン」。異常な精神状態に看護師がふとつぶやいた一言にヘレンの目は正気をとりもどす「そうだ、殺してやればいいのだわ」かくしてリベンジの幕は切って落とされた▼さらに7年後。マデリーンはビバリーヒルズの豪邸に住んでいるが、アーネストは葬儀屋としてほそぼそと、遺体の死化粧を施す整形外科医のなれの果てとなっていた。そこへ元婚約者ヘレンから自作出版パーティーの案内状が届く。デブ姿をみて笑ってやろうと、普段に倍するエステで磨き上げ、会場に着いたマデリーンが見たのは、美しくスリムな輝くばかりのヘレン。アーネストはくらくら。魂を売ってでも君と元にもどりたいと口走る。「なにをほざく」マデリーンの闘志は燃え上がり、近づいたエステの社長がリスル(イザベラ・ロッセリーニ)という謎の女性を紹介する。彼女が肉体の老化を止める秘薬をもっている。ウソかまことか。豪邸を訪れたマデリーンはゴシックふう怪奇ミステリアスな女主人にビビルが、論より証拠、目の前で若々しくみずみずしく細胞がよみがえった自分の手にもうためらいはない、ゴックン一息に秘薬を飲み干した▼ここからなだれこむクライマックスに比べると、それまではこの映画のほんの前座だ。そらま、多少の面白さはあったかもしれませんが、つぎにゼメキスが展開する悪魔的おふざけにくらべると子供だましだ。ブルース・ウィリスはあえぎながら優柔不断のダメ男を、メリル・ストリープはすべての魔女を合体させてもまだ足りぬサド魔女を、ゴールディ・ホーンはトレードマークのタラコ唇をねじまげながら、悪に対抗するには悪しかない信念のもと、地獄の底からよみがえるのじゃ~。メリル・ストリープの360度回転する首、ゴールディ・ホーンのお腹の真ん中にぽっかり開いた空洞。階段から転げ落ちたストリープが倒れている姿は180度開脚で、ゴールディ・ホーンの大きな瞳はいつのまにか白地に黒い点ひとつのゾンビ印。二人は自分たちが冴えない一人の男を追いかけていた愚かさに気づき仲直りしたが、あいつがいなきゃメーキャップに困る、秘薬を飲ませ自分たちの不老不死の仲間にしようと手をにぎった…▼時は流れ27年後。二人の女とわかれ幸福な再婚をしたアーネストの葬儀がとり行われている。教会の隅っこに参列するマデリーンとヘレン。不老不死の秘薬のおかげで彼女らは死なないのだ。でも死なないことと衰えないことは別だったらしい。どっちの顔もつぎはぎだらけ、コテ塗りのメイクは盛り上がったり剥げ落ちたり二目と見られぬ惨状を呈している。葬儀をおえ教会をでた二人は階段をおりる途中、足を踏み外しゴロゴロと転げ落ちる。手足はバラバラ、胴も砕けて散乱。でも地面に転がった二人の首は相変わらず日常の会話を続けているのだ。最高ね。謎の美女リスルに扮したイザベラ・ロッセリーニはいうまでもなくイングリッド・バーグマンの娘。濃い眉と真面目な性格は母親似で「ブルー・ベルベッド」(1986)の興行の不入りを、主役を演じたのが自分だったからだと落ち込み、同作がカルト的評価を得て数々の映画賞をとったあとやっと気を取り直したという真面目人間。デヴィッド・リンチは彼女の好演をほめていました。そのイザベラがブラコメをニコリともせずこなすようになったのは、やはり母親の血でしょうか。

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