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シネマ365日

2013年8月21日

特集 コメディエンヌ ママ男 (2007年 コメディ映画)

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監督 ティム・ハミルトン
出演 ダイアン・キートン/ジョン・ヘダー/ジェフ・ダニエルス/アンナ・ファリス/イーライ・ウォラック

笑えないコメディ 

 見ながら(最後までこの映画をみなくちゃいかんのかなあ)と思ってしまう映画があるものだ。ダイアン・キートンが出ているし、「バス男」のジョン・ヘダーやアンナ・フェリスらの若手もまたいいだろうと期待したのだけど。こんなコメディをつくるから「だからコメディはだめだ」と格下におかれるのよ。人は放っていても嘆きもするし悲しみもするが、気持よく笑わせるのはなかなかなのだ▼「バス男」はそれなりに、ド田舎でバス通学する高校生男子三人の友情を描いていた。40万ドルの低予算で4600万ドルの売上は目の覚めるようなヒットだ。「ママ男」もノリとしてはよかったはずなのに、なにがこの映画をダメにしたのだろう。ダイアン・キートンやらジェフ・ダニエルスやら、若手のアンナ・ファリスや、タマはそろっていたのに。たぶん主人公ジェフリー(ジョン・ヘダー)の幼稚さだろう。ある種の幼児性はクリエイトの源泉だが、世間のしきたりも理解できない知性のない幼稚性となると、社会のなかにたちまじって生きていけない。そんな男を主人公にしてこの映画は観客の忍耐力を試すためだけに作られたのか。主人公のキャラがずばりマザコンであるのは、それはそれでいいのだ。ほとんどの男は内心みな自分がマザコンだと知っているし、母親もまんざらではない。古今許せる馴れ合いである。どだい自分の女親にやさしくできない息子が他人の女を大事にできるか▼29歳のジェフリーの母ジャン(ダイアン・キートン)に恋人ができた。自分だけのものだった母親が男に取られ、ジェフリーは話をぶちこわそうと画策する。まあいいだろう。わからぬでもない。恋人のマート(ジェフ・ダニエルス)は自己啓発セミナーの講師で、出会ったその瞬間にジャンに一目惚れ。その息子も愛そうと男盛りの男らしく、ジェフリーの嫉妬を寛容に受け止める。しかしジェフリーの嫌がらせはエスカレートし、マートも負けていない。やられたらやり返す。ここだけは唯一本作でテンポのいい場面転換がつづく。観客はやっと〈まとも〉なコメディらしいペースに安堵する▼ジェフリーは母親からも自立を言い渡され、喫茶店でバイトするシンガー・ソング・ライターのタマゴ、ノラ(アンナ・ファリス)に泣きつく。母親の愛情がたっぷり自分に注がれていると信じられていたときはハナもひっかけなかった女の子なのに、さびしくなったとたんすがりに行く。ノラもジェフリーのダメ男ぶりはわかっているが無碍にしない。あまつさえデモ用CDを吹き込んでいる大事なときに踏み込んできて「モンタナに行くのだ」と頭ごなしに頼む(つまり命令に近い)ジェフリーにノラはつきあってやるのだ。おまけにジェフリーの身の上にいたく同情しモンタナ目指して野宿する満天の星の下で深い仲になるのである。ノラが「あなたはお母さんの代わりをもとめているだけよ」というお決まりではあるが、それなりの台詞がでてくるラスト近くまで、観客は職業もなければ収入もなく、アルバイト先はクビになった29歳の男と、彼が困ったときは必ず現れ庇護する理解も経済力も生活力もある女と、愛に燃えて彼を励ます母親という、予定調和物語をみていなければならない。これが苦痛といわずなんというのだろう▼口直しにこの俳優のことを書こう。イーライ・ウォラックである。このとき91歳。彼をみているとニューヨークの街を彼といっしょに歩いているマリリン・モンローを思ってしまう。「荒馬と女」で共演したふたりは、寝たことは寝たがいい友人になった。イーライ・ウォラックは性格俳優として注目され90歳を越えた今も現役で活躍している。彼が演じるのは本屋の親父シーモアだ。ジェフリーの父親の友人で社会に不適合なジェフリーのため仕事場を与えてやっている。ジェフリーは遅刻・欠勤の絶え間がなく、とうとう彼はジェフリーを解雇する。オレにかわる誰もいないのにとうそぶくジェフリーに、シーモアはふだんジェフリーがばかにしていた、目立たない若い男の子の名前をあげる。この映画のいやなところは、主人公が高齢者や女にやたらいばっている、あるいは彼等に対してしか強くなれないところだ。彼がダメ男でもサイテー男でもあることに気づかせもせず、簡単にヒーロー的役割を与えているところだ。マザコンだろうと内弁慶だろうといい、しかし弱者に対してしか強くなれない主人公をなんの疑いもなく肯定することがやりきれない。

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