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特集「銀幕のアーティスト」

2013年9月2日

特集「銀幕のアーティスト2」 ミケランジェロの暗号 (2011年 ミステリー映画)

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監督 ヴォルフガング・ムルンベルガー
出演 モーリッツ・ブライプトロイ/ゲオルク・フリードリッヒ/ウーズラ・シュトラウス/マルト・ケラー/ウド・ザメル

父の肖像画 

 いや~、ナチス、ユダヤ人迫害、強制収容所という悲惨なキーワードで物語が進みながら、結末が爽快だったというところがいいですね。第二次世界大戦の悲劇は絵描きになり損ねたヒトラーに原因がある、という視点を掘り下げたのが「アドルフの画集」でした。ジョン・フランケンハイマーの傑作「大列車作戦」もヒトラーというか、ナチズムの絵画に対する偏執愛でした。彼らがあちこちに隠した名品はいまだに全貌がわからないとさえ言われています。本作に登場するアーティストはルネサンスの巨人ミケランジェロです。彼の「モーゼの素描」争奪攻防戦がテーマですが、本当の主人公は素描に込められた暗号だった、というのがこの映画です▼ユダヤ人の画商ヤコブ・カウフマン(ウド・ザメル)の画廊に400年前バチカンから盗まれたミケランジェロの「モーゼの素描」があると噂されていた。カウフマンの息子ヴィクトルは兄弟同様に育ったルディ(ゲオルク・フリードリッヒ)に噂が本当だと教えてしまう。やがて第二次世界対戦開戦となりユダヤ人迫害が激化、カウフマン一家は収容所送りとなる。アーリア人種だったルディとヴィクトルは敵味方に別れる。ベルリンではイタリアと同盟決裂の危機を回避するため、ヒトラーがムソリーニに伝説の「ミケランジェロの素描」を返すことでゴマをすり、同盟を維持しようとしていた。なにがなんでもミケランジェロをみつけよという至上命令がルディに下る。彼はカウフマンを収容所にたずねるがすでに死亡していた。息子のヴィクトルは「母が生きていることを確認したら教える」と言う。母ハンナ(マルト・ケラー)は収容所で存命していた▼慎重な父は数点の贋作を用意していた。やっと発見したミケランジェロがどれもこれもみな贋作。探索に当たるナチ一党は振り回される。しかもヴィクトルを護送する飛行機が墜落、ヴィクトルはルディと衣服をとりかえちゃっかり大尉になり、ルディは割礼を根拠にユダヤ人だと確定されさんざんひどい目にあう。しかし「大尉」の行動がどうもおかしいと感づいたナチの隊長は、ルディの婚約者レナを連行し、男ふたりールディとヴィクトルのいる部屋に連れてくる。レナはカウフマン家の家督を守るためルディと婚約していたがもともとヴィクトルの恋人だった。その場の空気でヴィクトルのピンチだとみてとったレナは、迷わずヴィクトルに抱きつき、彼が「大尉」であると隊長に信じさせる。母親に会えたヴィクトルはいよいよミケランジェロの在り処を教えねばならない。彼もホントは知らないのだ。とうとうケツをまくり「そんなもの知っていたのは父だけで彼は死んでしまった」と居直る。ルディは「それなら絶対家族が帰る場所に彼は隠したはずだ」と感づきカウフマン家を再び捜索。ヤコブ・カウフマンが最後に運び出そうとしていたトランクに目をつける。そこには…あったのだ。他のデッサンにまぎれこませた「モーゼの素描」が。欣喜したルディにベルリンからの通達が。「同盟は決裂した。ミケランジェロは不要である」▼戦争は終わった。カウフマン家の財産と画廊を譲渡すれば一家に手は出さないという条件のもと、ヴィクトルから画廊をのっとったルディは画商として成功していた。取引客でにぎわう画廊へヴィクトルとレナと母親が訪問する。「母が父の肖像だけは手元に置きたいというので、買い取らせてもらえないか」とヴィクトル。恩を仇で返したルディはその肖像をみるのもいやで、画廊の片隅に放置同様にしていた。ただで差し上げるというルディに厚く礼を述べて三人は外に出た。ショーウィンドウ越しにルディをみつめるカウフマン一家の表情には、いわく言いがたい快感の笑が広がる。ルディはドキッとする。あれはなんだ。やつらなにを笑っているのだ。ヴィクトルは父の肖像を掲げてみせた。ルディにすべてがわかった。あの肖像画こそが「ミケランジェロの暗号」だったのだ。収容所で父の同胞がヴィクトルに「父上の遺言を預かっている〈視界からわたしを消すな〉だ」と教えたときにヴィクトルは父のメッセージがわかったのだ。生きてさえいればいつかきっと家族がそこへもどり、だれの手に渡っていたとしてもこの肖像だけは取り返すであろう、その信頼のもとに父はミケランジェロを隠したのである。同時にどんなピンチにでも次からつぎ、強気の条件をくりだしてあきらめない、ヴィクトルの交渉力ってすごいですね。「ゲーテの恋」のモーリッツ・ブライトロイ、「ミヒャエル」のウーズラ・シュトラウス、「ヒア・アフター」のマルト・ケラー、ドイツとオーストリアの渋い役者がそろっていました。

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