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特集「銀幕のアーティスト」

2013年9月11日

特集「銀幕のアーティスト2」 恋におちたシェイクスピア (1998年 事実に基づく映画)

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監督 ジョン・マッデン
出演 グウィネス・パルトロウ/ジョセフ・ファインズ/ジュディ・デンチ/ジェフリー・ラッシュ/コリン・ファース/ベン・アフレック

花の脇役陣 

 ハリウッドにはどうしようもない本家(イギリス)コンプレックスがあるのね。あのメリル・ストリープでさえ「演劇の国、シェイクスピアの国」なんて言ってもちあげている。ガラかよ。第一この映画がどっさりアカデミー賞を取るほどの映画だったのだろうか。シェイクスピア(ジョセフ・ファインズ)はスランプになって八つ当たりばかりしている傲慢男、女房から追い出されてロンドンに流れてきた芝居の台本書き。一目惚れしたセレブの令嬢ヴァイオラ(グウィネス・パルトロウ)を、目を血走らせて追い回し、あれだけベッドをともにしないと筆は進まなかったのか。天才とは下半身で原稿を書くのか。この映画、主演ふたりに都合よすぎるンじゃないかと思うところ随分あるのだけど、それを目立たせないのは脇役陣とセットや衣装、メイクが緻密で充実しているからでしょうね▼脇役陣の筆頭は10分か15分出演しただけで、アカデミー助演女優賞をもっていったエリザベス1世(ジュディ・デンチ)だろな。エリザベスを演じる女優のお定まりメイクとして、ツルツルに額をそりあげ(女王は天然痘をわずらって髪がほとんど抜けていた)タコみたいな顔で出てくる。しかしまあその衣装たるや、どれだけ手間暇かけたのだろうと後じさりする豪華絢爛。当時の劇場っていうと、映画のごとくホームレスが雨宿りするみたいなチンケな小屋だったのでしょうが、そこへ辺りを圧するキンキラキンで登場するのよ。イギリスの、というより世界史のスーパースターでしょう、彼女は。5分だろうと10分だろうと登場したかぎりは「これが見えぬか」の、葵の御紋スタイルの出番は用意してあるのが常だけど、本作で(なるほどなあ、こういうふうに扱うか)と思わせるセリフで主演を食うのがここ。当時は女が芝居に出演するのは風紀を紊乱するとして禁じられていた。演劇への情熱もだしがたく男に化けて出演し、ばれてしまったヒロインをかばい「女でも男の仕事をすることはある、わたしも他人事ではない」なんて一言でその場を治める。退席する女王が水たまりで足をとめ、臣下らがマントを脱ぎ泥水を覆うが「too late‚too late」(遅すぎるわ!)といいながらジャブジャブ水を渡る。デンチはこのセリフ、オスカー授賞祝賀の席で言っていましたね▼どういう因縁か「英国王のスピーチ」で国王と先生を演じた主演二人が本作で顔をあわせています。ジョージ6世のコリン・ファースはヴァイオラの財産欲しさに結婚する貧乏貴族ウェセックス卿。国王の吃音を治し、彼に自信を回復させるライオネル・ローグを演じたジェフリー・ラッシュは借金で首の回らない芝居小屋の小屋主ヘンズロウに。ウェセックスは女の魅力なんか金次第だとわりきったあっぱれなほどの俗物。よくこれだけ品の悪い顔ができるなと感心するほどのコリン・ファースの役作りです。ヘンズロウは疫病のため閉鎖された芝居小屋を再開しようと、シェイクスピアの新作に賭けるのですが、シェイクスピアが完全スランプ。でも彼の小屋に集まる役者たちはみな三度のメシより芝居が好きな連中ばかりだ。吃音のひどい男優がいて、オープニングの重要なセリフなんかとても任せられないというシェイクスピアに、ヘンズロウは請け合う。「いいや、うまくいく。謎だけどね」これは本作の決めセリフの一つです▼この人にも触れないわけにいかない。実在した有名な俳優ネッド・アレンに扮するのはベン・アフレック。8歳のとき近所に住むマット・ディモン(当時10歳)と出会った。「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」はこういう少年時代に芽生えていたのですね。本作でも知的な硬質の容貌で、やたら目をヒン剥いてばかりのジョセフ・ファインズよりよっぽど存在感を放っています。そうそう、血をみるのが好きだという陰気な少年ジョブ・ウェブスターはこれも実在の人物で、後年劇作家となります。劇中ヴァイオラが女だと当局に密告するいやな性格です。こうみてくると多士済々の出演者がきっちり映画の土台を堅固にしている。これでオスカーがとれなかったら不思議? それもそうだよな。

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