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特集「銀幕のアーティスト」

2013年9月12日

特集「銀幕のアーティスト2」 五線譜のラブレター (2004年 伝記映画)

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監督 アーウィン・ウィンクラー
出演 ケヴィン・クライン/アシュレイ・ジャッド

エゴイストな人種 

 奥さんがいなかったら自分の才能も発揮できなかった、甘エタの音楽家の話を延々125分も見せられるのは苦痛以外のなにものでもなかったわ。だいいちこれ、ミュージカルなの? スタンダード・ナンバーとなったコール・ポーター作曲の歌がどしどし挿入されて、魅力的な歌手が歌ってくれる、それはいいのだけど、すぐに場面転換でドラマはブツ切り、いきなり回想シーンで青春映画になったと思ったら、一転老けた現在の主人公がしわだらけで出てくる。始めから終わりまで、コール・ポーターの歌に筋書きを重ねた平凡な運び方だ。コール・ポーター(ケヴィン・クライン)はゲイだった、リンダ(アシュレイ・ジャッド)はそれを知っていて結婚した。「わたしが愛するようにあなたが愛してくれることは望まないわ」なんて、こりゃもはや菩薩の言葉ですな。彼らの人生観や危機のときの焦りや葛藤など、もっと掘り下げることができたと思うが、そこをするっとミュージカル仕様に変換してしまうからどっちつかずの弱々しい映画になってしまった▼コール・ポーターって楽観的なとてもいい人ね。だから敵もつくらないし、ピンチのときはいつも支援者が現れる。でもよく考えればいつもリンダが、旦那の性格を見越してつぎはこういうドジを踏むだろうと、ここで怠けるだろう、だから先に先にリスク・マネジメントに手を打っているのね。コール・ポーターときたら、スランプのときはバレエ・ダンサー(もちろん男)と情事はするし、ゲイの相手とのスキャンダラスな写真をネタに脅しにきた手合いにも、とどのつまりリンダがテキパキ処理するし。主人公が自分でやったことといえば落馬して脚の骨を折ったことくらいだわ▼リンダは結核に感染する。コール・ポーターという人は親友の息子が結核に罹患していると知ると、当時治療の術もない結核であったから、わがことのように悲しむ。思いやりも深い。でも(ひょっとしたらとんだ見当違いのことを言っているかもしれないが…と自分で危惧しながらこの疑問を呈するのだけど)リンダが結核だとわかったあと、友人の息子、つまり赤の他人に示したほどのやさしさや配慮を旦那は表していただろうか。深い哀しみといたわりは言葉で現せないものだろうとは思う。でもそれにしても旦那の態度っていやに明るいのよね。さりげなさじゃないわ。本物の「なにも考えていない状態」なのよ。この神経どうかしていない?▼「五線譜のラブレター」で図らずもいちばんよく現れているのは、コール・ポーターというアーティストのエゴイズムだ。自分の創作にベストな、ベターな環境を確保するために人をたのむ、快適な時間を確保する、雑事は人にやらせる。主人公がリンダに「君なくして生きていけない」というわりには、彼の持ち出しは少ないのだ。リンダは彼がゲイであることを納得して結婚したのだし、コール・ポーターはリンダをたぶらかしたわけではない。しかし彼がいちばん愛したのは女ではなく自分の音楽であったことはまちがいない。自分のこと以外すべてに愛情の薄い人間っているのですよ。とくにアーティストという人種には▼監督のアーウィン・ウィンクラー。彼の本業はプロデューサーです。「いちご白書」「さらば青春の日」それとシルベスタ・スタローンをハリウッドのメガスターにした「ロッキー」から「ロッキー・ザ・ファイナル」までこの人がプロデュースしました。監督作品としてはロバート・デ・ニーロの「真実の瞬間」やサンドラ・ブロックの「ザ・インターネット」、ケヴィン・クラインの「海辺の家」などがあります。今年82歳。ハリウッド80歳以上の映画人の双璧。もうひとりはだれ? ヤだなー忘れてくれちゃ。クリント・イーストウッド83歳だよ。

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