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特集「ディーバ(大女優)」

2013年9月16日

特集ディーバ(大女優) ヘレン・ミレン 第一容疑者2 (1992年 犯罪映画)

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監督 アラン・キューピット
出演 ヘレン・ミレン/コリン・サーモン

ダーティー・ハリー女版 

 スルメみたいに味が長持ちするのだな、この映画。第一作が思いがけない好評で次作が作られた。ヘレン・ミレン扮する捜査主任ジェーン・テニスンは、男性部下や上司の冷たい視線も何のその、主任警部として充実した日々を送り、本日は「尋問」セミナーの講師を署内で勤める。相方となったロバート・オズワルド巡査部長(コリン・サーモン)とすっかり意気投合しホテルへ。彼は黒人だ。イギリスは移民の国で黒人もアジア人も多い。本作は一軒の住宅から発見された白骨死体から始まるが、黒人問題が微妙にからんでくる。事件の展開にからみ人種問題や、権力と保身にとらわれた警察内部の人間関係や、解決を部下に(この場合テニスンに)おしつけてプレッシャーをかけてくる上司と、それを受け十数人の第一線刑事の尻を叩く中間管理職のテニスンとのやりあいが、同時進行で進む▼おもしろいのはいつもギブアップ寸前まで追い詰められるテニスンにひとつも被害者意識がなく、それどころか保身に走る上司が「おれはこの事件を解決して昇進を狙っているのだ」というと「では空席になる〈警視職〉をわたしにください」と要求し、上司は自分のことはケロリ棚上げ(こんなときに昇進させろというのか、お前は)という顔で見る。テニスンみたいな女がふつう職場にいたら男性上司は辟易するにちがいありません。しかし映画王国ハリウッドでどんどん女性アクションスターが出現し、世の女性たちはそれに快哉しエールを送り、男も女も今までの価値観とちがった人間像を創りたがっていました。犯罪の現場とは世間一般の、尋常ではない現象が結晶した場所です。辟易されようと嫌われようと、従来と同じ女ではない、尋常ではない女がいちばんしっくりくるロケーションが犯罪でした。本シリーズのヒロインは「女ダーティー・ハリー」だと思えばわかりやすい。上司にはさからう、自分のやり方を変えない、男は情事の相手にすぎない、身内だろうと外部者だろうと腐ったやつを許せない、大いにいい加減なところがあるがバリバリの硬派であり正義漢である。加えてハリー・キャラハンは男だったから「男社会との対決」はなくてよかったが、主人公が女のテニスンの場合、原案のリンダ・ラ・ブレンテにすれば「これをネタにせずにおれるか」というとびきりの素材であったろう。もともと彼女はハードボイルド出身である。いわゆる警察ものというか、すぐ銃撃する撃ち合いも本作にはないし、劇的どんでん返しもない。といって「刑事コロンボ」のようにはじめからホシが割れているわけでもない。クロとシロの液状化地帯をがまん強く証拠をひろいながら歩いていくテニスンに焦点を絞っている▼黒人居住区で発見された白骨死体をめぐる捜査は難渋する。過去に同地区で行き過ぎ捜査があり住民たちは非協力的なのだ。またそこには数年前に行方不明になった黒人の少女がいて、母親は警察に捜査の続行を訴えているが、自分たちが黒人だからまともにとりあげないのだと非難する。白骨死体は娘にちがいないと母親は訴えるがテニスンは慎重だ。黒人票を選挙にとりこもうとする警察上層部は、黒人の反感をやわらげるために、他の署から優秀な黒人刑事を応援にまわしてきたが、彼こそテニスンの情事の相手ボブだった。素知らぬ関係を装いつつテニスンは捜査を進めるがボブの関係がすっぱ抜かれる。テニスンは少なくとも(あーあ、こんなときにばれてしまうなんて)なのだがそれは表に見せない。男と寝たことで判断力が鈍ったということはないのかね、と暗に更迭を示唆されても「そういうことを考えるほうがおかしい」とつっぱねる。これが男の刑事なら、女と寝たからといって判断力が鈍ったかといちいち聞くのかよ、お前ら、というテニスンの皮肉だろう▼「容疑者2」は前後編で約200分という長尺にもかかわらず、派手なアクションもトリックもなく、データの積み重ねのような地味な筋運びなのに退屈を感じさせません。事件を解決したにもかかわらずおいしいところは全部男性上司が持っていき、彼はめでたく昇任。昇進を望んだテニスンの希望は無視され、テニスンと反目するバリバリの官僚タイプが上司となります。テニスンはその場で「お前といっしょにやる気はない」と配置転換を申し出てあっさり受理されたところで本作は終わります。

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