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特集「ディーバ(大女優)」

2013年9月20日

特集ディーバ(大女優) ヘレン・ミレン  第一容疑者6 死者の香水 (1995年 犯罪映画)

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監督 ポール・マーカス
出演 ヘレン・ミレン/リチャード・ホーレイ/ジョン・ベンフィールド/クリストファ・フルフォード

怪物テニスン 

 本シリーズ中いやな男はいっぱい出てくるが、本作のミッチェル主任警部(クリストファ・フルフォード)はサイコーだろう。ミステリーとしての本筋とそれにからむアンチ・テニスンの妨害と差別が「第一容疑者」全シリーズを貫通する背骨なのだ。ジェーン・テニスン警視(ヘレン・ミレン)とは独断専行、めざす捜査のためには上司の命令をしばしば冷笑、部下(男も女も)あごで使いバカよばわりする、であるからだれにでも好かれるタイプでは決してない。しかし「第一容疑者」の人気は、えげつないテニスンの負の部分をきちんと書き込んでいる人間観にある。傲慢で気位が高く策を弄して人を人と思わず、そのくせ泣き言を垂れ、本作のように四囲から孤立し八方塞がり、援軍はないとなると昼から場末のバーでやけ酒をあおり、ふらつく足で雨の中とぼとぼと右腕のハスコンズ刑事(リチャード・ホーレイ)に会いにいく。そこで「あなたは味方よね、信じていいよね」なんて女学生のような台詞を吐いてハスコンズを当惑させる。テニスンが捜査を外され停職となり、残る通告は懲戒免職だけとなるまでに追い込まれるのが本作だ▼以前テニスンが逮捕し、現在服役中の連続殺人犯マーロウと同じ手口で女性は殺されていた。テニスンは捜査のためハスコンズを貸してほしいとカーナン警視正(ジョン・ベンフィールド)に申請したところ、ミッチェル主任警部を捜査に加える交換条件がだされた。ミッチェルははじめから挑戦的である。テニスンのことを「本庁さん」とあなどった呼び方をし「名前があるの。テニスン警視です」と訂正される。報告は遅らす部下はつけあがらせる、捜査の方針に否定的で協力しない。折しも「マーロウは無実だ」という暴露本が出版され、その中でテニスンは「冷酷で殺人に興奮し、女を武器に昇進してきた」女として描かれていた。ミッチェルとその部下は「マーロウが逮捕されたのは冤罪であり、本件はべつにいる真犯人による連続殺人である」見解を取る。しかしテニスンは過去の殺人は娼婦を対象にしたものであり、今回最初の犠牲者は55歳のひとり暮らしの主婦。第二の犠牲者は16歳の高校生。ついに生じた三人目の誘拐はふつうの主婦だ、共通項はない。マーロウの手口を真似た「コピーキャット」(模倣殺人)だと主張する。ミッチェルは「みなあなたの方針に不満を持っています」テニスンは「従わせたら?」「方針に納得できなければ士気が落ちます」やっぱりというか、このあたりで出てくるのがカーナン警視正で「君を捜査から外す」とテニスンに通告する。本来「わたしをかばう立場のあなたがよくそんなことがいえたわね。覚えてらっしゃい」テニスンは捨て台詞を吐き椅子を蹴立てて出て行く。ミッチェル班は快哉。しかし日に日に捜査は泥沼。からぶりばかりで誘拐された主婦の行方は手がかりがない。テニスン去ったあと敵陣にひとり残ったハスコンズは、テニスンの助言を得てミッチェルに方針変更を示唆するが吐き捨てるように却下。そのうち万策つきた捜査本部には死のような沈黙がただようばかりとなった。そこに電話がなる。「ミッチェル警部。テニスン警視からです」▼本作のテニスンの情人は「消えた幼児」の精神科医です。テニスンの敵か味方かわからぬ不審な行動をとる彼。脚本は上手に観客をうろたえさせます。それとテニスン追い落としの首謀の一人ソーンダイクは、精神科医をたずねテニスンの行動をスパイしようとします。煮ても焼いても食えぬ男社会のウラ取引、どっちに転んでも自分に損はまわってこない保身の立ち回りが、あわれをよぶほど鮮明に描かれます。最後の最後まで可能性にしがみつくテニスンはジタバタしてけっしてカッコよくありません。しかしマーロウの母親を割り出し、彼の幼少期の傷を知り、捜査から外されながら無断でマーロウに面会すると情け容赦なく彼の傷をえぐりだし真犯人の手がかりを追及します。その執念はカッコよさなどドブにでもすてたくなるような命の燃焼です。人質は無事救出。テニスンは停職を解かれ「お叱り」だけの処分となりましたが、通達を受ける席で(お前らアホヅラ並べやがって)という嘲笑を隠しません、それだけでなく「わたしも彼等みたいに決定をくだす側にまわらなくちゃ。負けないわ。そのためにはいやでも彼等とつきあっていかなくちゃ」息を吹き返した怪物テニスンはファイトを燃えあがらせるのです。事件は解決しめでたく関係者たちのパーティーの席。テニスンはイブニングドレスで、ハスコンズはブラックタイで出席。テニスンはソーンダイクにダンスを申し込みこういいます「あなた相当なバカね。わたしを蹴落とすために私生活までふみこむなんて。今回はいくらなんでも度を超えているわ。あいにくね。わたしは負けないわ。あなたにわたしを追い出すのは無理よ」そういって放してやり、彼のテーブルの面々が「固い話は抜きにしようぜ。あそこも固くならんぞ」ゲラゲラ笑うのに振り向きざま赤ワインをぶっかけます▼さて本作の事件解決の手がかりである香水(ガーデニア)。じつになつかしい登場ですね。ハードボイルドの古典「マルタの鷹」で、ボギー扮する探偵サム・スペードの事務所に来客があるシーン、思い出しません? 入ってきたのはピーター・ローレ。あのノペッとした顔に薄気味悪い笑いを浮かべボギーに調査を依頼する。彼が帰ったあとでボギーが「ガーデニアか」とつぶやく。この場合のガーデニアはゲイを暗示する小道具に使われていると、後代の「セルロイド・クリーゼット」は分析しています。

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