女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ディーバ(大女優)」

2013年9月22日

特集ディーバ(大女優) ヘレン・ミレン 第一容疑者8 姿なき犯人 (2003年 犯罪映画)

Pocket
LINEで送る

監督 トム・フーバー
出演 ヘレン・ミレン/ベン・マイルズ/オルグ・メンシコワ

リメイクできない映画 

 「英国王のスピーチ」のトム・フーバーが監督していますね。彼とヘレン・ミレンは本作の直後「エリザベス1世~愛と陰謀の王宮」で再び監督・主演のタッグを組みます。ジェーン・テニスン警視は54歳。勤続30年。勤続30年なら年金ももらえるし警視職7年はラクではなかったはず、と上層部がリタイアをほのめかすのがテニスンは面白くない。かつての部下は男という理由だけで自分を追い越し今は上司。あほらしいにもホドがある。検診で「タバコは?」「やめました」「お酒は?」「4、5杯」と答え検診が終わればうまそうに一服し、また禁煙する。お酒はハッキリいって依存症一歩手前である。彼女の愛飲はスコッチのストレート、よくてロックだからね。テニスンはムカつきながら、自分が指揮をとる3つの捜査本部の24の殺人事件に立ち向かっていく。いまやロンドンの街は難民であふれ犯罪の温床となりバルカン・マフィアという言葉まで生じているのだ。今回めずらしくテニスンの家族構成がわかります。年取った父親は「娘たちのおかげで何不自由なく老後が暮らせる」と行き届いた施設にいます。ときどきテニスンは父親を見舞います。第二次世界大戦に従軍した父親が話す体験が、矢尽き刀折れようとしている娘を起死回生させ映画はクライマックスに向かう。ここからフーバー監督がビシビシたたみかける力強い演出は息もつかせません▼ロンドンで殺された姉妹は、ボスニアで起こった民族浄化虐殺事件の生き残りだった。犯人逮捕の証拠はボスニアにあるとみたテニスンは出張を申し出るが、進展のない捜査に上司はテニスンをはずし自分が目をかけている秀才のやり手警部フィンチ(ベン・マイルズ)にひきつがせる。この事件は頭がいいだけの若いやつの手におえないとふんだテニスンは、彼からとりあげ自分が指揮を取っていたのだ。イケメン警部ファンの女性の部下は「でしゃばりの人使いの荒いオバハン」をひっこめようと、捜査情報を逐一アンチ・テニスン上司に流す。男だけでなくいやな女まで加わりました。女が女にする嫉妬も相当なものです。テニスンは戦場カメラマン(今回のテニスンのボーイフレンドです)のツテを頼りに密かにボスニアに。虐殺の現場をまのあたりにする。そして容疑者の取り調べに呼ばれた通訳のルキッチ(オレグ・メンシコワ)と名乗る男が、じつは別人であることが判明した▼姉妹の妹は殺される前「悪魔を見た」と姉に打ち明けていたことをテニスンは知る。その悪魔は「やさしくハンサムな顔」をしていたことも。ルキッチはしかし外交上の情報提供者としてイギリス政府が保護する人物だった。諜報部の上部に呼び出されたテニスンはスコットランドヤードの高官立ち会いのもとにこの人物の捜査中止を命令される。なぜかと聞き返すテニスンに「知る必要はない」と女性諜報部員は冷たい一言。ルキッチなる男は自分の身の安全のために祖国の情報を売り過激派虐殺を手引きしていたのです。国が保護する容疑者をどうすれば逮捕できるのか。さすがのテニスンも手がでません。イギリスは安全な国だと信じて亡命してきた姉妹を守りきれなかった自分はどうすればいい。思い余ったテニスンは父親に苦しさを打ち明けます。戦争で自分は無力だった、その後悔は今でも消えない、でもお前はちがう、やろうと思えばできるのだと父は娘を励まします。地べたに墜落していたテニスンが頭をもたげる。ルキッチのイギリスで犯した犯罪を立証すれば国だろうと政府だろうと保護できないのだ。テニスンは脳漿をしぼりつくします。彼女が目をつけたのが部下のフィンチでした。いきなりあらわれたテニスンにフィンチはギョッ。悪夢のようなものです。あなたの力がいるの、あなたしかできないの、テニスンは強引に頼み込む。フィンチはどっちかというとインテリのお坊ちゃんですからなりふりかまわぬ野蛮な力に弱い▼ルキッチとは別人だった。では本物のルキッチはどこにいる? それを知っているのはたった一人、収監されている容疑者だった。彼に口を割らせるためはりめぐらしたテニスンの策略がなにを意図したものだったか、あっといわせずにはいません。前後編あわせて4時間近い長尺ですが観客を金縛りにします。他の誰にも二度とリメイクできない作品と役者というものが映画にはある。三つあげろといわれたらこれです。クリント・イーストウッドのダーティー・ハリー。シガニー・ウィバーのエレン・リプリー。そしてヘレン・ミレンのジェーン・テニスン。

Pocket
LINEで送る