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特集「ディーバ(大女優)」

2013年9月23日

特集ディーバ(大女優) ヘレン・ミレン ペインテッド・レディ ~肖像画の淑女~ (1997年 ミステリー映画)

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監督 ジュリアン・ジャロルド
出演 ヘレン・ミレン/イアン・グレン/フランコ・ネロ

やっぱりジュリアン 

 「第一容疑者」シリーズ放映期間中にはさまったテレビ・ドラマ。ヘレン・ミレンのイメージ固定を払拭するために試みたというが、どうにもこうにもパッとしませんね。テンポがたるいし前後編あわせて200分、これじゃつきあうのがしんどいナーと思うすべりだしです。ただ監督がジュリアン・ジャロルドでしょ。彼の「キンキーブーツ」はサンダンス映画祭で絶賛、本国イギリスで社会現象を起こした話題作です(ドラッグ・クイーン用ブーツをつくる靴工場の経営者らの話)。そのうちなにかやってくれるンじゃないかと思ってみていたらやっぱりあった、あった。ヘレン・ミレンのベッド・シーンよりズーッとエロティックな男同士の濡れ場が。それともうひとつ本作の隠れた主人公がこの絵「ホロフェルネスの首を斬るユーディット」ですね。画家はカラバッジョの女弟子であるアルテミジア・ジェンティレスキ。そもそも女性画家など存在しないといわれた17世紀に、師匠のカラバッジョをも凌駕する存在だった。彼女の製作が長い間世間に知られなかったのは、どこまでも女にまともな絵は描けないとしたアカデミズムの偏見による。美術評論もまた男社会でしたからね(今もたいして変わらんか)▼このアルテミジアの絵が狂言回しとなって主人公マギー・シェリダン(ヘレン・ミレン)をミステリーの世界に引き込んでいきます。マギーは人気のブルース歌手だったがドラッグと酒で身を持ち崩し、すべてを失い今はアイルランドの田舎で穏やかに暮らしている。チャールズの家の居候になったのは息子のセバスチャン(イアン・グレン)が高校の同級生で、ニューヨークでドラッグ漬けになっていたマギーを故郷に連れ帰り、父チャールズとともに家族のように受け入れたからだ。だからマギーはセバスチャンを「セーバ、セーバ」と呼んで、ふたりは兄妹のような情愛で結ばれている。セーバはゲイである。地元のマフィアに借金をしてこわい取り立てに陥っている。マギーは今も男出入りがたえない奔放な女だが、性格は律儀で約束事は必ず守る硬派の女だ。自分を救ってくれたセーバになにかあれば必ず助けてやろうとする。チャールズの家の居候になって10年、ある夜侵入した賊にチャールズが殺され絵画が一点盗まれた。マギーは隠遁生活を棄て殺人と絵の謎を追ってロンドンへ▼ロンドンではマギーの妹のスージーが古典絵画の研究を、旦那のオリバーが画商をしている。マギーがいることを知らないで帰宅したオリバーが浴室をのぞく。このときのマギーのポーズが有名なダヴィッドの「マラーの死」である。バスタブから片手をダラリと垂らしたアレね。ジュリアン監督のセンスってこんなパロディによくでていますね。マギーは美術品のオークションに出席するため、オリバーが用立てた軍資金を使いまくりロンドンの目抜き通りでショッピングの嵐。さっそうとセレブ画商が集まる会場へ。フランコ・ネロがニューヨークを牛耳るやり手画商として登場します。いかにも渋い、いい男ですねー。男はこんなふうに年を取りたいと思わせます。やっぱりマギーは参っちゃって深い関係に。このへん視聴者へのサービス過剰のような気がするのだけど、まあいいか。セーバという男性が、よくいるでしょ、もの静かないい男だがなにをやってもついていないという。そういう影の薄いタイプを金髪のイアン・グレンがうまく演じています。彼は父の死にまつわる秘密を解こうと、遺品にあった記録フィルムのなかからヒントを得ますが、マギーに伝える間もなくマフィアに殺されます。マギーは明るい陽光をあびて池畔に横たわる男を抱き「セーバ、だれももう、あなたになにもできないわ」とささやきます。心やさしく、でも薄幸だった幼馴染にいうこの台詞、よかったですね▼このあたりになると「タルイなー」と思っていたすべりだしが、ポリポリかじりだしたらやめられない炒り豆みたいになってきているのに気づきます。フランコ・ネロの自殺は気に入らないけど、やっぱりジュリアン監督にやられたなって気がします。

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