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特集「ディーバ(大女優)」

2013年9月25日

特集ディーバ(大女優) ヘレン・ミレン コックと泥棒、その妻と愛人 (1989年 シリアスな映画)

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監督 ピーター・グリーナウェイ
出演 ヘレン・ミレン/マイケル・ガンボン/アラン・ハワード

奇妙な、でも愚かではない映画 

 なんとなくヤなやつにつかまったなあ、という気のするのが監督のピーター・グルーナウェイですね。本作と双子の姉妹みたいな作品に「レンブラントの夜警」があります。どっちも絵画的でスクリーンにおける光と闇のコントラストが際立っています。色調も舞台演出のようにシーンに応じて緑や青に統一されたトーンに変化する。同時に内容そのものがマニエリスム的で、グロテスクとデカダンスがあふれる恐るべき生命力がどす黒いエネルギーをスクリーンに発散しています▼オープニングから気色悪い予感が張り詰めている。レストランの厨房と外の仕切りを一歩出るとジメジメした暗い駐車場。中年の男がリンチにあい、素っ裸にされて道に転がされる。広い調理場には湯気がたちこめ炎が燃え上がり半裸のコックがいれば、ボーイソプラノで歌う少年の声が響きわたっている。なんたる奇妙な図。ここはフレンチ・レストラン「ル・オランディーズ」の厨房だ。店のオーナーであり一番のお客は毎晩同じテーブルに席を占める大泥棒のアルバート(マイケル・ガンボン)と妻のジョージナ(ヘレン・ミレン)とその手下たち。アルバートは金にものをいわせた店でコック長にえらそうに講釈するが、料理についてはなにも知らないしセンスも劣悪。食事のさいちゅうに平気でゲップ、卑しい言葉で妻を傷つける、高級料理の味はさっぱりわかっていない。コック長はアルバートを軽蔑しているが凶暴性が怖いから黙って厨房に引っ込んでいる。逆に繊細な感覚の持ち主で料理のわかるジョージナをコック長は好きだが、アルバートは極めつけのDV亭主だ。ジョージナは何度も逃げ出したがその都度つかまり、夫は暴力をふるい性具でもてあそび彼女は恥辱にまみれてきた▼そんなある日、ジョージナはいつもきまったテーブルに一人ですわり本を読んでいる客に目がいく。彼はマイケル(アラン・ハワード)という常連客だ。アルバートはマイケルの本を取り上げ「レストランで読んでいいのはメニューだけだ」と本を床に叩きつける。粗野な振る舞いにジョージナはますます嫌気がさし、マイケルの知的な態度にひかれ、アルバートを嫌うコック長は二人を手引きし厨房の裏の小部屋で抱き合う。最初はトイレだったのですが妻がなかなかトイレからもどらないのでアルバートが探しにきておジャンだったのです▼彼らの環境は「愛しあう二人・恋人同士・しのびあう恋・ひそやかな情事」とか、本来ロマンティックなキーワードが適用されるべきなのに、セックスの場所は皮を剥いたブタのアタマがぶらさがり、腐った魚の匂いがしそうなトラックの中とか、大きな籠や網や調理器具を押し込んだ厨房の狭い一隅であるとか。時間がないので二人はさっさと脱ぐべきものを脱ぎ取るべきものを取り、場所をとらない立位ですませるとか、それもポンポンと下着を放り投げる感じでアッケラカンと脱ぐわけでして、とても「秘め事」のムードではない。そこでマイケルの提案で彼の自宅の書庫に場を移し、心ゆくまで二人は横たわって行為に浸るのですが、とうとうアルバートが感づきます。コック長の伝令を務めたボーイソプラノの少年は、アルバートにつかまり残虐な「ボタン飲み」拷問を施され病院にかつぎこまれる。少年の身を案じたジョージナが大胆に書庫から出て病院へ行ったあいだに、踏み込んだアルバートはマイケルを惨殺しました▼ジョージアは亡骸にすがり復讐を誓う。コック長に打ち明けた秘策とは。とにかくはじめから終わりまでグロテスクな調和とでもいうべきか、毒々しさに堕ちる一歩手前の、奇妙な美しさと迫力に満ちている。ヘレン・ミレンもアラン・ハワードも一糸まとわぬヌードで局部も丸出し。ヘレンは43歳でしたがどんな筋トレをしたのか、隆々たる筋肉のスッポンポンで徘徊します。彼女はなにかのインタビューで「60歳過ぎてヌードになるのに抵抗がなくなった」とか言っていましたけどウソばっかり。40代のときからなんの抵抗もないぞ。ラストシーンもシュールですが、能舞台のような様式美をもたせた場面であり、不思議なことに嫌味だとか後味が悪いということはありません。ピーター・グリーナウェイというきわめて知的な「遊戯的人間」が作った映画は、奇妙ではあっても愚かではないからでしょう。

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