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特集「ディーバ(大女優)」

2013年9月28日

特集ディーバ(大女優) ヘレン・ミレン カレンダー・ガールズ (2003年 事実に基づく映画)

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監督 ナイジェル・コール
出演 ヘレン・ミレン/ジュリー・ウォルターズ/キアラン・ハインズ

女たちの快作 

 制作費1000ドル、興行収益9600万ドルだから大ヒットだ。ヌードというか、肉体に対する女性の感覚はもともと男性とは違うものがある。なにしろおのれの体ひとつ、満身の力で子供を産み落とすのである。肉体がもつ地力というか底力というか、信頼というか神秘の念は、ナルシズムで脱ぎたがる男性の肉体感とは基本的な差異があるように思える。ここはイギリス北部、ヨークシャーの片田舎ネイプリーだ。子育てを終えた主婦たちがすることは女性連盟の会合に集まり例年のイベントを催すことである。そこは社交の中心でもある。連盟の目的は啓発啓蒙とフレンドシップ。定例会で論議される議題は「ブロッコリーの栽培」とか「秘伝のジャムの作り方」。連盟のメンバーであるクリス(ヘレン・ミレン)は会合のほとんどを居眠りしているし、大親友のアニー(ジュリー・ウォルター)もうんざり顔▼アニーは最愛の夫ジョンを白血病で亡くす。ジョンが最後を過ごした病院に夫の思い出のためソファを寄贈したい。毎年恒例の連盟でつくるカレンダーの売上でソファを買おうとするが桁違いに足りない。来年のカレンダーのテーマは教会の建物だそうだ。全然パッとしない提案にクリスは一計を案じる。自分たちがヌードになって12カ月分のカレンダーを作ろう。クリスとアニーはこわごわ何人かに計画をもちかける。彼女らも思いつきはしたが自信があったわけではない。教会でオルガンを弾く彼女に「ヌードになってカレンダーを作るのだけど、どう」「イエス」「ヌードになるのよ!」「イエス」微動ともせず彼女の答えは「イエス」だ。アニーがさらに念押しすると「アニー。わたしは55歳よ。今脱がなきゃいつ脱ぐのよ」。別のメンバーにアニーは「もちろん全部脱ぐわけじゃないのよ」「だからいやなのよ」「自信ね」彼女ケロリと「美乳だもの」。70歳近い彼女に「あなたは?」と聞いた。「股間はだめよ。女としてその部分を捧げたのは生涯たった一人の男よ」「夫思いなのね」「夫じゃないわ」▼彼女たちは心のどこかで「ブロッコリーの栽培」や「ケーキ作り」や夫の帰りを待つ以外に自分を表現できるなにかを求めていたのだ。自分が主役であるはずの人生を、だれかのためという名目で後回しにし、そのうちだんだん見失っていっていなかったか。ためらいもなく話に乗った彼女らの瞳は輝き、筋トレ、ダイエット、エステを俄然スタートさせる。好奇の目も連盟の阻止もなんのその。計画は着々進行。どこからかカメラマンまでみつけてきたある日曜日、アニーの家はスタジオに変わった。ガウンの下はスッポンポン。だれから脱ぐか。カードを配って順番を決め大撮影会が始まる。夫たちは別室で途方にくれ黙って酒を呑む。クリスの夫ロッドはキアラン・ハイランズだ。米HBCと英BBCの二大局が総力をあげた「ROME ローマ」でカエサルを演じ「コックと泥棒、その妻と愛人」「第一容疑者」「ペイド・バック」でヘレン・ミレンと共演、「ハリー・ポッター 死の秘宝」でもおなじみだ。ハリポタといえばアニーことジュリー・ウォルターズは、ご存じロン・ママである。地味な映画にみえるがそのじつイギリス映画の名優が揃っている▼しかし本作がヒットした本当の理由は、片田舎の中年女性たちがヌードになってサクセスした、その珍しさもあるが、むしろサクセスがもたらした影の部分をきっちり抑えたからだろう。彼女らは一躍マスコミの話題をさらいインタビューにおわれ家の中を覗かれる。アイデアと資金繰りを切り回したクリスは、いつしかカレンダー制作本来の目的からはみ出し、家族や親友アニーの気遣いにも配慮しなくなる。ハリウッドに招かれたカレンダー・ガールたちは目もくらむ金ピカの世界で夢のような数日を過ごすが、そこでの自分たちは消耗品であり見世物の田舎者だった。アニーの夫ジョンはこう言ってくれていたのに「ヨークシャーの花は女に似ている。生長を重ねるたびにその美しさを増していく。盛りを過ぎてもみごとに咲き誇る。あっというまに枯れていくが」終わりの一句で女達はどっと笑うが、肝心なことは「咲き誇る」ことだ。大冒険を終え心身ともリフレッシュし、これからの人生の意気に燃え帰国した彼女たちを、家族と女性連盟と緑なす田園がやさしく迎える。

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