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シネマ365日

2013年10月4日

スキャナーズ (1981年 ホラー映画)

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監督 デヴィッド・クローネンバーグ
出演 マイケル・アイアンサイド/スティーブン・ラック/ジェニファー・オニール

武器となった脳波 

 デヴィッド・クローネンバーグの映画から新旧二本を選びました。一本目がこれ「スキャナーズ」で、明日が「危険なメソッド」です。本作はクローネンバーグの出世作とされています。作家は処女作へ向かって成熟する、といわれますが、処女作ではないものの彼の特質がわかりやすい映画ですね。クローネンバーグはカナダ出身。名門トロント大学に入学し生化学と生物学を専攻しました。翌年には文学への願望もだしがたく英文学科へ転部、成績優秀でしたが、彼がそもそも理系出身であったことは覚えておいていいと思います。それとピアニストだった母親の影響でクラシック・ギターを弾き(腕前のほどは知りませんが)犯罪記事専門のライターだった父親からは書くことを受け継いでいます。どっちに転んでも早晩今のクローネンバーグはできあがったわけです▼「スキャナーズ」は人間の脳の超越的な能力というか、大脳生理学の異形の領域にかぶりついたクローネンバーグが、後年脳と心をつなぐ精神分析とその創始者たちのドラマに行き着いたのは、いかにも自然な経緯に思えます。彼の映画は短い尺のわりに中身のぎゅうぎゅう詰めが多い。本作もけっこうたて混んでいました。お話を単純にいうとコンセック社という警備会社があり(国際的な大企業であるこの社屋が、まるで野中の一軒家みたいに荒涼とした環境に建っています。大変なことがこの世に起こるぞ、いかにもそんな雰囲気作りです)、そこでスキャナー(超能力者)生産計画が進行していました。スキャナーは強力なテレパシーを使って人の脳内に入り込んで思考を読み取り、意識を支配し幻想を生じさせ、脳が破裂するほどの膨大なエネルギーを送り込むことができます。コンセック社はルース博士の指示のもと、強力スキャナーをどしどし生産することによって最強の警備会社を目指しているのです▼その作り方は…というノウハウはラストで明らかになります。しかし狂的かつ驚異的な威力をもつスキャナー、ダリル(マイケル・アイアンサイド)はスキャナー登録リストを盗み出し、超能力者ばかりを集めたスキャナー帝国をつくり彼が独裁者に就任します。自分の指示に従わないスキャナーは皆殺し。ルース博士は唯一リストに載っていなかったスキャナー、キャメロン(スティーブン・ラック)を探し出し、彼を最高のスキャナーに教育して、ダリルとその一味一掃に向かわせる。キャメロンは避難スキャナーのグループにいた若い女性キム(ジェニファー・オニール)と出会い、二人は協力してダリルの野望阻止に向かうが、指を加えてみているダリルではない▼映画が始まって間なしの「脳破裂」シーンが、クローネンバーグを一躍有名にしました。ダリルの濃厚なテレパシーを受けた相手の脳が爆発してしまう。CGがなかった時代、こういう映像を可能にした監督のこだわりと撮影技術は驚愕ものでした。物語の展開とともにダリルとキャメロンという、天才スキャナーの対決となります。放射能みたいな強烈な磁力を浴び、お互いの血管は膨れ上がるわ、皮膚は破れるわ、肉は露出するわ、眼球は飛び出るわ、髪は逆立ち衣服は体内から噴出する磁波によって燃え上がる。勝負あった、となったあと最後のヒネリがあります。「ぼくたちが勝ったのだ」そうつぶやいてキムを振り返ったキャメロンの顔はダリルだった。つまり相手の脳をどっちが支配するかの決闘で、キャメロンがダリルの脳に入り込み、体を奪ったってことね。超能力というジャンルにはSFあり、ファンタジーあり、じつに多くの作品がありますが、人間の思考がそのまま殺人マシーンに移行するという切り口の絞り込みと鋭い映像化では、本作は抜きん出ています。

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