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シネマ365日

2013年10月6日

アダプテーション (2002年 事実に基づく映画)

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監督 スパイク・ジョーンズ
出演 ニコラス・ケイジ/メリル・ストリープ/クリス・クーパー/ティルダ・ウィンストン

ハッピー・トゥゲザー 

 双子ね。そう来たか。脚本はチャーリー・カウフマン。彼自身がこの映画の主人公だ。「マルコヴィッチの穴」では脳内につながる穴、本作以後に公開された「エターナル・サンシャイン」では記憶。いずれも現実と虚構が入れ替わり立ち替り「入れ子」構造になってドラマをつくる。本作でその役を果たすのが「双子」なのです。チャーリー・カウフマン(ニコラス・ケイジ)には双子の弟ドナルド(ニコラス・ケイジ二役)がいて、チャーリーの家に居候してする。生真面目で実直だがデブ・ハゲ自虐ネタまみれの兄貴と真逆、明るく楽観的で女好き、人生なにも苦にするふうがない弟。もちろん彼はチャーリーのアルター・エゴつまり裏返しの別人格です。この映画は早々とネタバレさせないと、説明がこんぐらがるばかりなので先に書きますが、ドラマの中でまことしやかに活躍するドナルドはまったく架空の設定です。彼ときたらスランプに陥っている兄貴に、ためになるから脚本講座に行けとすすめ、講座で勉強しておれはこんな脚本を書いた、というベタベタのアクションものが、プロデューサーから今年最高の傑作と賞賛に預かり、ドナルドに代わり進んで潜入取材を引き受けた先で事故にあって死ぬ、なんてどこまでがホントでどこからがまやかしか、ややこしくて仕方ない。ドナルドとはチャーリーの脳内人物だからそのつもりでいよう。こういう虚実の入れ子構造が好きでたまらないのですね、カウフマンという人は▼実在の人物としては原作者のスーザン・オーリアンが登場します。扮するのはメリル・ストリープ。彼女の著書「欄に魅せられた男」の映画化にあたってチャールズが脚本を担当したものの仕事はいっこうに進展せず、プロデュ―サーのヴァレリー(ティルダ・ウィンストン)からは再々督促が来る。チャーリーはますますストレスが高じ、弟がほめちぎる脚本講座を受けに行く。講師のロバート・マッキーはチャーリーの「淡々とした日常はドラマになりますか」という質問を受けこう答える「現実は淡々としているか。世界では虐殺、戦争、崩壊が起き、毎日どこかでだれかが命がけで人を救っている。毎日どこかでだれかが意識的に人の命を奪っている。愛を見つける者、失う者、教会の入り口で子供の目の前で殺される母親、飢えた者、女のために親友を裏切る男、それらが見えぬようなら君はなにひとつ人生がわかっとらん」▼チャールズは執筆に行き詰まったチャーリーは、原作をぱらぱらとめくる。あちこちにアンダーラインが引いてある。ある箇所には「世の中には考え方や物や人があふれ、方向性も様々だ。わたしはこう思い始めた。何かに熱中することは手に負えるサイズにまで世界を削ることだ」チャーリーはいたくこの文章に感動する。しかしどうやってと悩むチャーリーにスージーの声が天啓のように聞こえる「焦点を絞るのよ。あなたが夢中になれるものをひとつだけ見つけて、そのことを書くの」がぜんチャーリーは元気づくのだが、本来筋らしい筋のないこの映画は、スージーと欄盗人のジョン・ラロシュ(クリス・パーカー)との不倫が描かれたり、ラロシュが人喰いワニに食われたり、虚実というより虚々折り重なって最後はチャールズを殺せとスージーが叫ぶ、それを受けてラロシュが襲う、ドナルドが死ぬ、ラスト近くなってハリウッド・アクション・ムービーの伝統の復活。と思っていたら、スーザンが途中でスクリーンからいなくなってしまうところなんか、ミケランジェロ・アントニオーニ・ハリウッド版になっています▼七転八倒のあげくチャールズの脚本には燭光がさし、元恋人とはよりがもどるような雰囲気でエンド。よかったね、といえばいいのか。いいのだろうね。エンディングに流れるのが「ハッピー・トゥゲザー」だから、たぶんハッピーな行く末だろうと思うのだ。それにしても「ハッピー・トゥゲザー」の歌詞「想像してた/君と僕/毎日僕が考えるのは/愛する君を抱きしめること/ハッピー・トゥゲザー/今日の天気は?/心弾む二人/いっしょにいればそれだけで幸せ/ハッピー・トゥゲザー」こんな歌きかせてから「あれはチャールズの妄想だった」はまさかないでしょ。「ハッピー・トゥゲザー」がエンディングに使われるのは知る限り三度目です。「ブエノスアイレス」「四角い恋愛関係」そして本作。さすがのチャーリー・カウフマンの変わった脳内劇場も本作に関するかぎり「ハッピー・トゥゲザー」めでたし、でございました。

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