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シネマ365日

2013年10月8日

ブーベの恋人 (1964年 社会派映画)

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監督 ルイジ・コメンティーノ
出演 クラウディア・カルディナーレ/ジョージ・チャキリス/マルク・ミシェル

ヒロインの大人の愛

 軽やかなステップ、むちゃくちゃ似合った紫色のシャツ。そうです「ウェストサイド物語」でブレイクしたジョージ・チャキリスに、ルキノ・ヴィスコンティが手塩にかけて育てた銀幕の華クラウディア・カルディナーレ、彼女のデビューは映画の達人ピエトロ・ジェルミ監督の「刑事」。逮捕された恋人の車を追って走る胸ふさがるラストシーンに哀切の「シノメ・モーロ」(死ぬほど愛して)が流れました。当時チャキリスが29歳、カルディナーレが25歳。人気絶頂だった主演二人の見せ場たっぷりに作ったラブロマンスかというと、全然そうでなかったのが本作です。この映画意外と硬派なのです。チャキリスもカルディナーレも地味な扱いで、ルイジ・コメンティーノ監督は人気俳優ふたりを全然甘く扱っておりません。そこが映画の筋肉をビシっと締めあげ硬質にしています▼時代は1944年。ファシズムの爪あとの残る北イタリアの田舎町にブーベ(ジョージ・チャキリス)という青年がマーラ(クラウディア・カルディナーレ)の家を訪ねてやってくる。マーラの異母兄の戦死を伝えるためだ。ブーベはファシストに対抗しパルチザンとして当活動に従事している。ブーベはパラシュートの絹布をおみやげにマーラに持ってきていた。数ヶ月文通が続いたあとブーベがやってきて、マーラの父に結婚の許しを得てさっさと帰ってしまった。全然ロマンティックではないブーベにマーラは腹を立てる。さらに何ヶ月後ブーベがやってきたが憲兵とその息子を射殺して警察に追われていた。ブーベはマーラを連れて故郷の家に帰ることにする。この時期のマーラは「まだあげそめし前髪の」という藤村の詩を思い出すような幼さだ。旅の途中「ハラ減ったか」とブーベが聞く。「レストランに入ったことがないの」というマーラに、じゃ店があくまで酒でも飲もう、と居酒屋に連れて入る。靴がほしかったマーラは買ってもらって大喜びする。やっと到着したブーベの家は貧しかった。警察の追手を逃れてブーベはその家にさえ留まっておれない。町外れにある工場の廃屋に隠れているように党の同士が案内する▼ブーベとは罪人で貧乏でサクセスなど見込めない男だとマーラは見当がつくが、乗り合いバスでリンチにあいかけた体制派の司祭を、ルール通り官憲に引き渡し急場を助けてやったり、いちいち律儀で融通のきかないブーベを放っておけない。「ファシストを根絶やしにしてやる」と空に向かって叫ぶブーベを「彼の強気は不安の裏返しだ。わたしは守ってあげなければいけない」と思う。廃屋でふたりだけ。「日暮れよ。いつまでここにいるの」マーラはきくがもちろん宛などない。そこへ同士がきて「ここもやばい。遠方に逃げるえんぷ手はずを整えあす迎えにくる」と告げる。マーラにすれば人を愚弄した話である。「遠方ってどこよ」「たぶん外国だ」これじゃ泣くしかない。マーラは最後の夜ブーベといっしょになり、翌朝ブーベはジープで去る▼ブーベは逮捕され裁判を受けるためイタリアの刑務所に。その間マーラはステファノ(マルク・ミシェル)と知り合い、彼の知的な会話、野性的なブーベにはない洗練された振る舞い、そして愛の告白に揺さぶられる。しかしブーベを塀の中に残し自分だけ幸福になるのに負い目がある。やっと面会にこぎつけた日「あいたかった、別の場所で」と泣きだしたブーベをみて「やめて。見ていられないわ。男でしょ、しっかりして」「泣いたのは絶望したからじゃない。君と会えたからだ。今でもおれが好きか。離れている間に気が変わったか。一人でいると不安になる。おれがそうだった。でも今はちがう。君にあえたから」初めて弱みをみせたブーベにマーラは言ってしまう「わたしがついているわ」そして「信用できるのは君だけだ。党のやつらに従ったあげくがこれだ。逃げ隠れせず自首していれば今頃は自由だった」みっともなく愚痴るブーベに「みんなを恨むのはよくないわ。なにがあってもわたしはあなたを見捨てないわ」大地の母ともいうべき度量と海のような寛容でブーベを包むのだ▼殺人罪でブーベは14年の懲役。マーラはステファノと別れ2週間に一度ブーベに面会に行く。それが7年続いている。ある日乗換駅で偶然ステファノに会った。以前つきあっていた彼女と別の女と彼は結婚していた。ブーベはどうだ。汽車の窓外をみながらマーラはひとりごちる「ブーベは7年も気力を失っていない。あと7年待つのだ。最初は大変に思えたが出所するときわたしは34歳。ブーベは37歳。このごろになってやっと将来のことが話せるようになった。子供だって産める」しっとりした落ち着きと気品がマーラに生じている。ブーベとともに生きていくことが約束された人生として目の前にある。たとえ今は2週間に一度の面会であっても、その先の光が見えてきたのだ…このシーンのカルディナーレがみせる「大人の愛」が映画を締めくくります。野暮は承知だけど、でもこれだけ支えてくれる女ってどこまで男に都合いいのだろって言いたくならない?

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