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シネマ365日

2013年10月10日

ガラパゴス 炎からの誕生 (2008年 ドキュメンタリー映画)

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製作 BBC
出演 ティルダ・スウィントン(ナレーター)

悠久の生々流転 

 日本のケータイや映画が「ガラパゴス化」しているとか「あいつはまるでガラパゴスだ」とか、よく聞きますね。ここで言うガラパゴスとは、独自の進化をとげたため世界から取り残された状態を言うそうです。ひどい使い方だな。本来のガラパゴス島とは生命に対する考え方を一変させる、原始的かつ神秘な世界です。南アメリカの約1000キロ西方の赤道直下にある、13の主要な島と100以上の小島と岩礁の一帯をさします。火山という特殊な環境から生み出された島々の中には今も盛大に噴火している島があり、海底のプレートの移動につれ、毎年3~6センチ東に移っています。海は暖流と寒流が合流するプランクトンの宝庫であり、約500種の魚がいる豊かな漁場に、ハンターのような鳥たちが飛来する。もともとこの島に陸生の動物はいなかった。彼らは流木などに乗ってここへ流されてきました。いちばん近い南米大陸から1000キロ、飲まず食わずでたどりついた島は火山灰とマグマの岩礁による不毛の地でした。過酷な環境で動物たちはサバイバルし、何万年の間には緑の植物が生息する島もできました▼生き抜いてきた動物たちの面魂はみな底力があります。そのひとつアオイグアナ。海岸に住み夜の間に冷えた体を朝日で暖めるアオイグアナの群れ。岩のようなゴツゴツした顔にギロリとした眼。体を暖めたらつぎつぎ海へジャンプします。岩場には餌がなく海中の藻を食べるのです。でも海流は冷たく海にいる限界は10分。それを超えると変温動物であるトカゲは筋肉が動かなくなってしまうのです。陸にあがるとき猛々しい波にさからって岩によじのぼるのがたいへんです。おまけにアシカがしっぽを咥えたり面白半分に追いかけたりする。必死で岩礁に這い上がり、無事に生きた一日の終わりに、夕陽を浴びているイグアナの群れは静かな叙情に満ちています▼アオアシカツオドリは長い嘴をもつ海鳥。上空から魚の群れを見つけると翼をすぼめロケットのように海に突入する。でも打ち付ける波が危険だ。潜れる深さは1メートル。波をよけきれず岩にあたり翼を折った鳥は死をまつだけです。折れた翼をひきずって波打ち際を歩くアオアシカツオドリのまわりに、肉をせせるガラパゴスベニイワガニが死の使者のように群がり始めます▼フェルナンディナ島はガラパゴスの中でいちばん新しい島でざっと3万年前にできました。イサベラ島は約100万年前に誕生した島。ここにガラパゴスゾウウミガメがいます。水なしで数ヶ月生きられるカメですが寄生虫に弱い。それを助けてくれるのが鳥のフィンチ。フィンチが近づくとウミガメは足を踏ん張って体をもちあげ、クビを伸ばし、鳥が甲羅の隙間に入りやすくしてやります。鳥は小さなクチバシを忙しく動かし、ウミガメの皮膚にもぐりこんでいる寄生虫を食べます。ガラパゴスで唯一の肉食動物はガラパゴスノスリです。全長約55センチのタカ。翼開長120センチ。栄養のあるものを子に食べさせたい子育て時期にしばしば犠牲になるのがウミイグアナです。イグアナが巣にいるときは手が出せませんがこのタカは狡猾で我慢強い。イグアナがひなたぼっこに出てくるのを高い崖か梢か、みはらしのいいところで待っています。出てきた。旋回するタカの気配を察したイグアナは我先に巣に戻ろうとします。タカの攻撃はすさまじい。全開した翼が音もなく急降下する。イグアナが巣に入るのが早いかタカの直滑降が早いか。タカはイグアナの頭上で翼を広げ速度を落とすと強靭な爪で胴体をつかむ。イグアナがもがこうと暴れようとバサッ、バサッ。タカは翼をゆるがすと、自分の体にひけをとらないイグアナもろとも舞い上がるのだ。絶壁にある巣に戻ったタカは鋭いクチバシでイグアナをさばき、湯気があがるような生肉をヒナに食わせます▼素晴らしいガラパゴスの動物たちの中からあとひとつだけ。エスパニョラ島で繁殖するガラパゴスアホウドリです。翼を広げたら2メートル。じつに風格のある別名「海の女王」。寿命は50年。夫婦は一生連れ添う。クチバシを打ち付けるのが求愛の活動で、交尾のときになるとカンカンという乾いた音が絶壁に響く。産み落とすタマゴはたったひとつ。それを夫婦で交代交代で暖めます。餌をとるために往復3200キロを飛ぶことも。産まれたヒナは一日2リットル近く平らげる大食です。半年たつと親鳥とともに大空へ。5~6年で繁殖のためガラパゴスにもどります。エスパニョラ島はできてから350万年のあいだに数キロ、地下のマグマの上にあるホットスポットから移動したため島全体が冷え海抜が下がりました。いずれ島は海底に沈む。すべての島は同じ運命にあります。生まれて消える。ガラパゴス島もまたそこに棲む動物たちと同じ、悠久の生々流転を体現しています。

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