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特集「ディーバ(大女優)」

2013年10月14日

特集ディーバ(大女優) グレン・クローズ 運命の逆転 (1990年 事実に基づく映画)

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監督 バーベット・シュローダー

さっぱり意図のわからない映画 

 なんとまあ中途半端な映画でしょう。オープニングでね、お城みたいな邸宅ばかりのセレブの屋敷の点在している風景が鳥観されるのよ。それぞれの敷地はべらぼうに広く大学でも収まるみたい。みな建築の粋をこらしたデザインで、緑の田園と森に囲まれたお伽話の舞台みたいな始まり。こりゃどんな映画になるのだろうと期待したのにそこだけよ、よかったのは。ついでだから書くと当時主人公クライス・フォン・ビューローの屋敷はロング・アイランド州ニューポート郊外にあった。そこではロケできなかったので、監督はロング・アイランドの北岸にある屋敷を使った。私邸だから公開されていないが、超上流階級の雰囲気が映画でとてもよくでている▼1980年代。ハーバード大学の法学部教授でリベラルな弁護士アラン(ロン・シルヴァー)はクラウス・フォン・ビューロー(ジェレミー・アイアンズ)から刑事裁判の弁護を依頼される。彼の妻・大富豪のサニー(グレン・クローズ)は、バスルームで倒れ意識不明に陥り植物人間状態が続いている。彼女の昏倒は二度目で最初はインシュリン注射だった。彼は先夫とのあいだにできた義理の息子と娘とメイドにサリー殺害を企てたとして告発され、懲役30年の有罪判決を受けたのだった。いわゆるクラウス事件として上流階級のスキャンダルとなったこの事件は世間の注目を浴びていた。アランはチームを組んで調査をするうちサニーの個人的問題、性向、夫婦生活、メイドの証言の誤りなどが浮き彫りになり、再審で検察側の証拠を崩し無罪を勝ち取る。クラウスは愛人と優雅な生活を送りサリーは今も植物状態。彼らの結婚はいまだ存続中。そこで映画は終わる。弁護士自身クラウスが限りなくクロに近いシロとふんでおり、クラウスの人間性も嫌いだった。でも他の裁判の費用調達の必要もあって引き受けた。「ぼくはあなたを不起訴にはしたが良心はあなた自身の問題です」なんて、まるでクロをシロにいいくるめてやったみたいな発言をする。どうなっているンだよ、この連中▼グレン・クローズがベッドに横たわる植物人間の自分を見ながら、そうなった経緯を語り始める、というちょっとおもしろい趣向だったけど、なにしろ本題そのものが未解決だから落としどころがないのよね。クラウスという男がまたこれヌラリクラリ、大富豪の妻が死んだら莫大な遺産を相続する身分。でも自分自身の財産はわずか100万ドルしかないそう。いいながら彼は愛人とヨットでクルージング。セレブの感覚は庶民にはインポッシブル。どうにも好きになれそうもないエゴイスティックな男をジェレミー・アイアンズが演じる。背筋ののびた細いきれいな長身。それは相変わらずなのですが、役作りとはいえズルズルにはげあがった額、おまけに後頭部が薄くなっているのは一本ずつ丁寧に抜いたのでしょうね。バリカンで剃ったらあんなうまいこと「すだれ状態」にはならないでしょう。彼は本作で第63回アカデミー主演男優賞を取っています。候補には「レナードの朝」のロバート・デ・ニーロや「シラノ・ド・ベルジュラック」のジェラール・ドパルデュー、それに辟易するほど退屈だった「ダンス・ウィズ・ウルブス」のケヴィン・コスナーがいたわ。彼等を制圧しジェレミー・アイアンズが受賞したのは、貴族の優雅な挙措と、後ろからみたはげアタマの落差に驚倒した結果ではないでしょうか▼グレン・クローズの顔っていちばんの特徴は鼻ですね。なだらかなカーブを描く鈎鼻。高すぎて邪魔になりそうなとんがった鼻の持ち主は多いのだけど、かぎ鼻ってわりと少ないのでは。それと役柄だけとは思えない、とても鎮まった澄んだ表情をすることがある。これは年齢とともに顕著で「ダメージ」のパティ・ヒューズがじっと相手をみつめるときの表情がこれ。自分の心の奥をみせず相手の心を読み取ってしまうシーンです。メリル・ストリープは力が入り過ぎる。ジョディ・フォスターは頭のよさがみなぎりすぎる。ケイト・ウィンスレットは正直すぎる。アンジーは睨み殺されそう。ヘレナ=ボナム・カーターは人間でないなにかを連想する。本作が不満な理由のひとつにグレン・クローズのいい表情がない(ほとんど寝ている)ことだ。まあアイアンズの驚異の後頭部がそれを補ってあまりあるけど。

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