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特集「ディーバ(大女優)」

2013年10月21日

特集ディーバ(大女優) グレン・クローズ 再会の時 (1983年 社会派映画)

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監督 ローレンス・カスダン
出演 グレン・クローズ/ウィリアム・ハート

監督の「毒」 

 「白いドレスの女」と同じ監督の映画だとはどうにも思えんな、こういうとらえどころのない映画って苦手だな、とぶつぶつ言いながらみていました。登場人物たちは日本の世代でいえばちょうど団塊の世代ですね。彼らは大学を出て15年、親友の死をきいて各地から葬儀のために集まってくる。死んだアレックスは大学で物理の天才といわれた学生。卒業後これという脈絡のない職業を転々とし、同棲中の若い恋人をおいて突如命を絶った。集まったアレックスの友だちというのが次の面々だ。サム(テレビドラマの人気俳優)、サラ(グレン・クローズ=医師。アレックスと不倫していた時期がある)、マイケル(雑誌記者)、ニック(ウィリアム・ハート=麻薬の運び屋)、クロエ(アレックスの恋人)、カレン(学生時代サムに思いをよせていた女性。結婚しているが夫との中は冷めている)、メグ(弁護士)、ハロルド(サラの夫)▼原題は「さむけ」とでも訳すのか。「寒気がする」の寒気ですね。こう書くとちょっとカスダン監督の趣旨がわかるような気がします。でも「再会の時」ではまるっきり、同窓会の「あの人はいま」的話題よね。集まっただれもアレックスの自殺の真相がわからない。人との交流を阻んでいた孤独な男という設定で、恋人のクロエが葬式の最中からそわそわとボーイハントしているふう。彼女がアレックスの死に全然関心をもっていないことにみな唖然とする。サラは過去のいきさつから元カレの死を悲しむが、彼女だって医師として日々の仕事があり、夫は運動靴チェーン店を展開するやりての実業家でかわいい子供もいる。サラもまたアレックスの死に至る虚しさのようなものを察しはするが理解できない。グレン・クローズが同窓生らが好きなことをいっているそばで、屈折した心中を垣間見せます▼一同はサラの家に泊めてもらうことになる。昔話やら当今の世情やら、職場の愚痴やらお定まりの話題だ。ベトナム帰りで性的不能になったニックはなにを言ってもひねくれているし、メグは結婚せずに子供を産みたい、相手は誰がいいと思うかとサラに相談し、サムにもちかけるが断られる。サラは夫のハロルドにその役を頼み、ふたりはベッドイン。カレンはサムと思いを遂げる。飲み疲れしゃべり疲れてみな雑魚寝してしまった。どんな青春の思い出もすべての「なれのはて」がここにあると思うと、これが「寒気」だったのでしょうか。世代からいえばちょうど「ミッドライフ・クライシス」(中年の危機)ですね。なにをしても面白くないという顔なのだよ、かれら。だから死んだ親友の自殺の理由をあれこれ言いあっているけど、ほんとはそんなことどうでもいいわけでしょ。長い間お互い顔も見ていなかったし、会話もつきあいもなかったのだから。よく同窓会で打ち明け話をきいて、さかんに心配してくれて「電話するよ」とかいいながらなんにもする気のないやつっているじゃない▼一夜あければ雲散霧消するはかなさが描きたかった? 監督の真意はそうじゃないと思えるのよね。この映画のカスダンってすごく腹黒い。カビの生えた日常を映しているように思わせながら「寒気」に誘導していく。思い出でしか語れない人生や友情ってなんだろう。そんなもの犬にでも食われたほうがマシではないのか。アレックスのことを悲しむまえにお前の今の空虚さを悲しめ。こういう視覚でとらえると監督の仕掛けた「毒」がやっと全身に回り始めます。アレックスとは人生を覗きこむ死の天使ですね。グレン・クローズはしかし、この手の外見より複雑な内容をもつ重層構造の映画から足を洗いました。本作は彼女の女優キャリアからいうと「ガープの世界」に続く初期の作品ですが、彼女は早くもわかりやすく、かつ強烈な「悪の華」のような主役にアクセルを踏み込んでいきます。映画ビジネスで観客を動員できる力量は当然求められるが、大事なことはその力量を観客にわかりやすい形で理解してもらえる映画であるかないかだ。彼女は観念的なテーマを地雷のように避けて作品を選んでいます。同性愛、不倫、殺人、吝嗇なバカ女、涙がでるほどありふれた女、その真逆にいる弁護士、これらの自己造型力はグレン・クローズという女優を着々とアピールしていきました。いまから本作をみるとよくこんなおとなしい役を引き受けたな、と思います。これは監督の企みでみせる映画であって、女優はただの一コマですからね。

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