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特集「ディーバ(大女優)」

2013年10月22日

特集ディーバ(大女優) グレン・クローズ 危険な関係 (1989年 文芸映画)

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監督 スティーブン・フリアーズ
出演 グレン・クローズ/ジョン・マルコヴィッチ

退廃と紊乱の暴露 

 18世紀のフランス貴族というのはこんなことばっかりしていたのでしょか。人の足をひっぱる策略とセックスに明け暮れる毎日。あいつが気にくわないからこいつと争わせて騙してやろう、貞淑だと評判のあの女と不倫してみせよう…この小説は(したがってこの映画は)全編これ騙しのテクニックを競うお話である。資産と時間がくさるほどあるってことは、生産的な思考を麻痺させるのですね。原作者のラクロはフランス陸軍の砲兵士官。当時アンシャン・レジュームと呼ばれた貴族社会のモラルの退廃と紊乱を、なんでラクロがよく知っていたのかしりませんが、この一種暴露ネタ書簡体小説はおもてむきは「なんたる不道徳」と顰蹙を買いながら影ではよく読まれました。当時でいえばワイドショーに匹敵するような「家政婦は見た」的小説です。ときはフランス革命前夜の社交界。貴族文化と制度はまさに熟した柿が枝から落ちようとする寸前の爛熟のきわみでした。主人公メルトイユ侯爵夫人にグレン・クローズ。相方の社交界きっての女たらしバルモン子爵にジョン・マルコヴィッチ。貞淑の鑑トゥールベル夫人にミッシェル・ファイファー。デビューして間なしのユマ・サーマンとキアヌ・リーブスも出ています▼人間関係の裏表と建前と本音、純愛と裏切り、この本の「ドラマの素」だけで100本分くらいの映画のダシが取れるのではと思えます。現に何度映画化されたかわかりません。いちばん古いのはロジェ・バディム監督、ジャンヌ・モローとジェラール・フィリップの「危険な関係」同じくロジェ・バディムがシルヴィア・クリスタルで「華麗な関係」藤田敏八監督の「危険な関係」それにあの「アマデウス」のミロシュ・フォアマン監督までが「恋の柱」というタイトルで映画化。主演はアネット・ベニング(「アメリカン・ビューティ」)に「英国王のスピーチ」のコリン・ファースです。俳優たるもの、あるいは監督たるもの一度は手をつけたがるのが本作なのですかね▼内容はまあそれなりにけっこうでした。マルコヴィッチは全然似合わないかつらをつけ、貴族というよりサイコな連続殺人犯という面貌で登場しました。グレン・クローズの意地悪女も悪くはないが、この人、こういう時代劇より、もっとコミカルなワルに強いのだよ。クルエラ・デ・ビルみたいなね。ユマ・サーマンは純情な貴族令嬢がなんでコロリと男と寝て汗をにじませているのか、なにごとも深く考えない女を演じてなかなかよかったです。ほんとに何も考えていなかったのかもしれません。キアヌは白塗りの平安貴族の西洋版みたいな顔で出て来ました。満足な台詞もありませんでしたが、これまたなくてよかったです▼グレン・クローズはアメリカのコネティカット州出身です。チョート・ローズマリー・ホール(寄宿制私立男女共学高校)からハーバードのつぎにアメリカで古いウィリアム・アンド・メアリー大学に。高校はアメリカのテン・スクールとよばれる名門でジョン・F・ケネディや国連大使のアドレー・スティーブンソン、俳優ではマイケル・ダグラス、ジェイミー・リー・カーティスらが卒業生にいます。マルコヴィッチはもともとスコットランドとドイツ系両親のもとで生まれたヨーロッパ系です。本作は英語の台詞ですが彼自身フランス語に堪能です。2年前デザインから生地の選定まで、自分で担当したメイド・イン・イタリー「テクノボヘミアン」を立ち上げました。古きよきヨーロッパのセンスをボヘミアン調のカジュアルで統一した自分のブランドです。グレン・クローズも子供のころ医師だった父親の任地スイスやアフリカで過ごしています。彼等にとってヨーロッパは案外遠くて近い感覚のうちにあったのかもしれません。

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