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特集「ディーバ(大女優)」

2013年10月23日

特集ディーバ(大女優) グレン・クローズ 愛と精霊の家 (1993年 文芸映画)

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監督 ビレ・アウグスト
出演 メリル・ストリープ/グレン・クローズ/ジェレミー・アイアンズ/ウィノナ・ライダー

主役食いのグレン 

 ヒロインはメリル・ストリープ扮するクララだけど、例によってというべきか案の定というべきか、グレン・クローズがしっかり「主役食い」の本領を発揮していますよ。メリル・ストリープとグレン・クローズは私生活でも仲のいい友達同士です。共演はあとにもさきにもこれ一作だけどね。舞台は1928年。南米チリの華麗なる一族の変遷と新生だ。原作はチリの女性作家イザベル・アジャンデの大河小説「精霊の家」。よくみていないとアメリカの西部劇と間違えそうだから注意。政変とか革命とかみなチリの話だからね▼チリの名家トルゥエバ家のクララは子供のころから予知能力がある。姉ローザに恋するエステバン(ジェレミー・アイアンズ)をひと目みたときから恋する(でもこれ彼女がまったくガキといってもいい子供のときよ。この夫婦が結婚したときの年齢差は絶対20歳はあるわ。それなのにクララのほうが早く死ぬ。よっぽどのストレスだったのよ)。ローザが父親の身代わりになって毒殺され、クララはエステバンと結婚することに。エステバンには姉フェルラ(グレン・クローズ)がいる。母親の介護を弟におしつけられ毎日シモの世話をして婚期をのがし、母親がなくなった今は用済みとでもいいたい弟の冷たい目。フェルラは生き延びる方法としてクララと、産まれた赤ん坊ブランカ(長じてウィニノ・ライダー)の身の回りの面倒をみて屋敷に残る。大農場の経営に農夫たちを鬼のようにこきつかうエステバンにくらべクララは天使のごとくやさしい。娘が年頃になり小作人の息子ペドロと恋仲であることを知ると強制的に寄宿学校にいれる。エステバンはいまや有力な国会議員となり、富と権力をわがものとする父権主義のかたまりである▼時代は保守から革新へと大きくうねりだしていた。総選挙で人民戦線が大勝利、保守党は惨敗しエステバンも「老いぼれ」とののしられる立場に。孤立感を強めるエステバンは、怒りにまかせ姉を屋敷から追い出す。理由は 姉が妻と仲がいいというそれだけですよ。クララは娘を可愛がってくれる義姉を頼りにしていた。弟だけが蔑んだ目で姉をみるのだ。今でこそセレブだけどもとは貧しい小作農の出自を、いやでも思い出させるのが姉の存在だからでしょうね。ある夜開いたドアの隙間からフェルラがクララのベッドにはいっているのがみえた。怒鳴り込んだエステバンはその場で姉を裸一貫で叩きだす。さびしいからいっしょに寝てくれとクララに頼まれたのだとフェルラが言っても耳を貸さない。いっしょにベッドに入っていた、と言ったところで体をギュウギュウ締め付けるコスチュームをきたままですよ。原作はどうか知らないけどフェルラのクララに対する恋情があったとしても、この家じゃ何ができるわけもない、映画はそう設定している。全然わかっとらんなこのオッサン、という没落富豪の八つ当たりをジェレミー・アイアンズが半狂乱で演じます。父権社会で便利使いされ、身をたてる力も気概もなく年を取り、ボロ布のように使い捨てされる女を、グレン・クローズがやると鬼気迫りますね▼革命が起こりエステバン一家はズタズタ。クララは亡くなっていて幸いだった。父は権力をもぎとられ娘は革命軍のリーダーとなった恋人ペドロの居場所を言えと過酷な拷問にあい息絶えかける。そこへ母クララの霊が話しかける「死を望んではだめよ。死は重要ではないの。どうせいつか死ぬのだから、生きるために闘うのよ。生命は奇跡ですもの」…ならもっと早く助けてやれよと思うほどのひどい拷問だ。父の奔走もありやっと釈放されブランカは家に帰りつく。荒れ果てた屋敷で父は息をひきとる。残されたブランカは一人娘を抱き、なにがあっても「今日を生き残ること」を誓ってエンド。監督のビレ・アウグストってひとつひとつコマを丁寧に積み重ねていくという叙述でハッタリがないの。この人の「マンデラの名もなき看守」もそうだったわね。どうかすると類型的な大河ドラマふう風味を引き締めている、呪縛霊みたいなグレンの演技がやっぱり光っています。彼女が死んじゃうとこの映画面白くなくなるもん。

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