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特集「ディーバ(大女優)」

2013年10月24日

特集ディーバ(大女優) グレン・クローズ ダメージ シーズン4 (2011年 サスペンス映画 全10話)

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監督 トッド・A・ケスラー他
出演 グレン・クローズ/ローズ・バーン/ディラン・ベイカー

王の器

 イギリスの女性ジャーナリスト、ジョーン・スミスの「男はみんな女が嫌い」(筑摩書房 鈴木晶訳)にグレン・クローズが主演した「白と黒のナイフ」(1985)と「危険な情事」(1987)に関する卓抜な考察がある。「白と黒の」ではグレンは弁護士に扮する。冷静沈着、ばりばり仕事する業界屈指のやり手だ。グレンははや28年前にパティ・ヒューズの原型を演じていたのか。いやそれが大ちがい。この弁護士は男に惚れて感情に溺れ、判断を誤り、自殺行為とも思える馬鹿げた行動にでて真犯人に翻弄される。「危険な情事」になるともっとひどい。男をつけまわし情事をせまる独身のキャリア・ウーマンは、編集者という知的職業にもかかわらず、彼女の部屋には本が一冊もなく、彼女の会話から文学に関する関心が一言も聞かれないという、現実遊離も甚だしいヒロインが登場するのだ。彼女の愛人を演じるのは「ハムスターみたいな頬の俳優マイケル・ダグラス」で、彼はグレンが家に侵入しウサギを茹でてしまうまで妻がこわくて情事を打ち明けられない。ジョーン・スミスの分析はこうだ。「この映画(白と黒)の目的は、意志の強い独立心旺盛な女性を計画的にこきおろすことだ(略)。グレン・クローズ演じる女性はさんざんばかにされ、男の社会に食い込もうという夢は破れる」。「危険な情事」のグレンは、男の権利を横取りしようという性悪女という設定で「ニューヨークの出版社に入社してまだ2週間だというのに、好き勝手に仕事をさぼってダンにつきまとう(略)。いくつか比喩的な意味がこめられておりそのすべてが伝統的な価値観を強化し、一世紀にわたる女性の闘いの成果である“自立した女性”の抹殺を正当化しようとする」すなわち「出る杭は打たれる」を絵に描いたように、力をふるおうとする女は映画の中でさえ、コテンパに破滅させられているとジョーン・スミスは指摘する▼グレンはパティ・ヒューズを演ずると決めたとき、一部の女性ファンに対して本懐を遂げた思いがあったのではないか。というのもすでに「白と黒」の当時、女性観客の中から「あの弁護士は女を愚弄している」と猛烈なクレームが寄せられていたからだ。パティとは光かと思えば影。正義の弁護士である一方訴訟に勝つためには手段を選ばず。狡猾にして犀利。英明にして陰険。二重三重にはりめぐらされた陰謀の裏の裏をかく天才的ジュリスト。暴力も恫喝も辞さず、いざとなれば単身敵中に出現し取引する。パティ・ヒューズ法律事務所とはニューヨーク法曹界が遠巻きにして羨望する赫々たる実績に輝く。その手口は法定に持ち込めば勝訴まちがいないケースでも、有無をいわさぬ証拠をつきつけ、被告側大企業の提示した金額を一蹴し、天文学的和解金をふんだくる▼本シリーズは「4」を迎えた。「3」から約3年後。エレン(ローズ・バーン)はある事件で訴訟を起こそうとしている。それには高校時代のボーイフレンド、クリスがかかわっていた。クリスはアフガンの悲惨な体験で部下3人を死なせたトラウマにさいなまれている。エレンが狙うのはハイスターという傭兵派遣会社である。自分一人では無理だとふんだエレンは「ハイスターには手をだすな」というパティ(グレン・クローズ)をあの手この手でまきこみ、協力をとりつける。エレンは現在の事務所から独立を視野にいれ、注目される訴訟に勝って名をあげたいのだ。パティの後ろ盾を得たエレンは調査を開始する。ハイスター社とCIAの間にはテロ容疑者を捕獲するDD作戦により、民間人も捉えられ拷問を受けていた。CIAの現地工作員ボアマン(ディラン・ベイカー)はCIAが作戦を中止したあと、ハイスター社のクリスら4人を指揮し違法作戦を実行する。その目的はきわめて個人的な理由で、不審をもったクリスの部下が中止を訴え、それを無視したボアマンは事実隠蔽のため3人を射殺したのだ。離れた場所にいたクリスはその事実を目撃しなかったが、たったひとりそこに証言できる現場証人がいた▼フラッシュバック・サスペンスという手法によりシーンはめまぐるしく過去と現在を往還する。エレンは野心に燃えた女性弁護士だが、自分がパティに殺されかけた過去の怨みを忘れず、パティに対しこれは自分の訴訟だから手をだすなと宣告するかと思えば、協力すると言った以上約束は守れと高飛車にでる。なぜかパティは諾々と補佐してやる。証拠固めに行き詰まったエレンは、敵側に人質になったクリスを助けたければ訴訟をとりさげろと、ハイスター社から脅しをかけられる。彼らの条件はたったひとつ「パティ・ヒューズが手をひく」取引条件にパティがサインすることだ。エレンは「クリスの安全が第一です」ともっともなことをいいだす。パティは「ここが正念場よ、エレン。こんなふうに引き下がったらこの先もずっと大事な訴訟で勝つことはできない」エレンは聞く耳をもたず「サインしてください」しばらく黙っていたパティはサインした▼「どうかしているぞ、だからあの女は降ろせと言っただろ」パティの相棒、資格を剥奪された元弁護士は食ってかかる。パティは「闘いは続けるわ。別の原告をたてる。外国人不法行為法で」パティはアフガンで現場を見た証人がいることをつきとめていた。相棒は目を輝かす。この連中根っからケンカ好きである。ハイスター社は騒然。「パティ・ヒューズが新たな原告をたてて提訴した」それをきいたエレンは「パティに裏切られた」唇を噛む。キミちょっとおかしのじゃないの。パティは屈辱的な条件にサインしてエレンに応じたのだ。人質は無事解放された。そのあとパティがどんな攻撃に出ようと勝手だろ。裏切るとかヘチマとか言えた筋合いかよ▼事件は一件落着しパティが精神科医のコンサルを受けている。自宅マンションのドアマンの鼻の骨をへし折ったことで、裁判所から社会適応にふさわしい精神状態かどうか、コンサルを義務付けられたのだ。精神科医がきく「例のあの子(エレン)はどうなりました」「手をさしのべたけど断ってきたわ」「失望しましたか」「いいえ。そういう子なのよ。王の器じゃないの」「王の器なんてめったにいませんよ」「問題は彼女が王の器をめざしていることよ。わたしをふりはらってね。でも絶対ムリよ。手放さないわ、彼女はまだ使えるもの」その一方でパティはエレンに言うのだ。「わたしは自分のすべてを引き継ぐ女性を探しているの」つまり後継者ですね。エレンはその手には乗らないとばかり「あなたの問題は夫や息子やわたしより勝利を優先したこと。あなたの人生にあるのは訴訟だけよ。ほかにはなにもない。あなたが欲しいのはあなたに人生を捧げてくれる人よ」「成功がわたしを孤独にしたと? 失敗こそ孤独よ。成功者でかつ善人で母や妻にもなりたがる、全部はムリ」「それでもわたしはやってみます」「あなたが60になったら結果を教えて。わたしの申し出はこれが最後よ」「興味ありません」「望むものすべてを与えたのに。あなたは恩知らずよ」この女ふたりトラとオオカミか。様相は化かし合いを呈してきました。そこへ裁判所からの通知が届きます。パティの息子が娘(つまりパティの孫)の監護権を争点にパティを訴え、証人に呼んだのが誰あろう、エレンなのです。やばいな~。パティが自分を殺そうとしたことをエレンが証言したら、子供の養育なんてとんでもないですからね。というわけで舞台はシーズン「5」に。エレンという女性、最初はこの若さで策謀ばかりめぐらしているのが痛々しいくらいだったけど(パティのそばにいたらそうならざるをえないのだろうけど)いやいや、かなりの女になってきましたよ。さて王の器はどう落ち着くのでしょうね。

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