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映画監督特集

2013年10月28日

特集 フランス映画の女性監督4 アンヌ・フォンテーヌ 恍惚(2003年 恋愛映画)

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監督 アンヌ・フォンテーヌ
出演 ファニー・アルダン/エマニュエル・ベアール/ジェラール・ドパルデュー

やっぱり「おフランス」 

 ハリウッドでリメイクされた「クロエ」のオリジナルです。アマンダ・セルフリッドのクロエが異常な犯罪者に変貌していく「クロエ」とちがって、オリジナルはどこまでも女ふたりの心理のかけひきに重点がおかれています。原題の「ナタリー」はヒロインたちの間で使われる符牒のようなもの。架空の存在であるはずの「ナタリー」がだんだん質量ともに重い存在感を放ってくるところにアンヌ・フォンテーヌの監督術が冴えています。実際これといった事件ではなく、ありふれた夫の浮気という発端から、ぐるぐると迷宮をひきまわされるような錯覚を観客は覚えます。薄暗いバーや娼婦との会話、たむろする男や女、淡々と「仕事」をこなす女たち。ファニー・アルダン扮する女医カトリーヌにとっては異次元の世界だ。そこへすっと音もなく現れるのが酒場の踊り子であり娼婦でもあるマルレーヌ(エマニュエル・ベアール)だ。途方にくれたようにひとりで座っているカトリーヌにちかづき「お酒一杯もらってもいい?」と話しかける。カトリーヌはマルレーヌをしげしげと見る。長いストレートのブロンドの髪。くっきり見開いた切れ長の瞳に黒いアイメイク。めくれた唇が官能的な美人である。そこで「あなたにお願いしたいことがあるの」マルレーヌはまばたきもせずカトリーヌをみつめ「女性のお相手もします」落ち着いて答える。いえ、そうじゃなくて、とカトリーヌは誤解をとき、用件をいう。なんだか大学教授と女子学生の礼儀正しい問答のような台詞まわしで「恍惚」は本題に入るのだ▼カトリーヌは夫ベルナール(ジェラール・ドパルデュー)の浮気を知った。夫はあっさり事実を認め「君が悪いのだ。セックスレスだし会話もない」と原因を妻におしつけ「時がたてば情熱も消える」とまるで他人事。カトリーヌのたのみとは「夫が毎朝いくカフェで偶然を装い接近して誘惑しその後の内容を逐一報告してほしいの」倦怠期の夫婦の打開策として刺激的なテーマだ。マルレーヌは早速行動を開始。報告のためカトリーヌに会ったとき「名前を尋ねられて困った」というので「ナタリー」という仮名を使うことに決めた。原題の「ナタリー」が「恍惚」になったのは、意味不明なばかりか本作の内容に全然関係ございません。マルレーヌの報告は日を追うごとに具体的に、赤裸々になっていく「まるで飢えた獣のようにわたしに迫ったわ」とか「すぐに抱こうとしたけどわたしは焦らしたの。彼は後ろから…」とセックスシーンを細々と説明し「感じたの?」カトリーヌが身をのりだすと「仕事だから覚めているわ」▼カトリーヌとマルレーヌのあいだに介在する「ナタリー」を通じてふたりは親しくなっていく。いつかお店をやめるときのためにメークアップ・アーティストの勉強をしている、休みの日はスケートに行くときもあると、マルレーヌは若い女の子の顔をのぞかせる。カトリーヌは実家にマルレーヌを連れて行き、母親の髪のセットを頼んで和気あいあい、三世代同居みたいな雰囲気である。ブルジョワの世界に身をおくカトリーヌの身の回りのものすべてがマルレーヌには珍しい。香水はジャッキー、レストランに連れていってもらって注文するワインはヴーヴレ。ロレーヌの白といえばヴーヴレだ。逆にマルレーヌは夜の遊び場にカトリーヌを案内し親密度は増していく。カトリーヌはマルレーヌのために部屋を借りてやり、いつのまにか夫への関心は薄れていく▼ハリウッド版「クロエ」ではぬきさしならぬ女二人の泥沼が生じますが、オリジナルはそんなことありません。仲はよくなるのだが一線を超えることはない。すべてがバレタあと、なんでそんな白々しいことをしたのかとカトリーヌがたずねると「寝なくてもお金になったから」とじつにサバサバした答え。そらラクでよかったわね、とまさかカトリーヌはいいませんでしたが、彼女はマルレーヌが自分を裏切り、さんざん金をまきあげたアバズレのはずなのに憎めないのです。マルレーヌはくどくど謝ったりせず「…」澄んだ友情で自分のいうことを信じた、お嬢さんのカトリーヌを黙って抱きしめます。このあたり「クロエ」の天地がデングリ返るような大活劇とは真逆のラスト。やっぱり「おフランス」ですかね~。

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