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映画監督特集

2013年10月31日

特集 フランス映画の女性監督7 ジョゼ・ダヤン 危険な関係(2003年 文芸映画)

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監督 ジョゼ・ダヤン
出演 カトリーヌ・ドヌーブ/ルパート・エヴェレット/ナスターシャ・キンスキー

ドヌーブの後ろ姿 

 「瑞々しい感性」というのがほとんど枕詞のフランスの若手新人女性監督にくらべ、1947年生まれ、テレビ出身のジョゼ・ダヤン監督。この監督をみていると、映画監督たるもの、感性が瑞々しいのはけっこうだが、それだけが取り柄だというほうが、映画監督としては問題だろうといいたくなるくらい、この人の作品群は重厚ぞろいなのだ。「レ・ミゼラブル」「モンテ・クリスト伯」それにこの「危険な関係」と思うとドキュメンタリーで「シモーヌ・ド・ボーヴォワール」など。固いものばかりかと思うと「女警部ジュリー・レスコー」シリーズと硬軟おりまぜ、最近作では「愛人/ラマン 最終章」を撮って健在を示しました▼監督は乱作する必要はさらさらないが、品質を維持したある程度コンスタントな製作は必要だと思うのだ。長い沈黙期はどの映画作家にもあるだろうが、映画人の場合の沈黙の理由は「前作が大コケ、関係者すべてが大やけどし、二度とその監督に声をかけなくなった」という場合が多い。ゼニゲバ・モンスターが跋扈するハリウッドで、予算にしばられずお金を使い放題で映画を撮れる監督が三人いた。ジェームズ・キャメロンとスティーブン・スピルバーグとジョージ・ルーカスだ。彼らは大監督か。名監督か。もちろんそうにちがいないが、なによりかにより、損をさせない監督だろう。なんでこんなことをいうのかというと、ジョゼ・ダヤンが監督する映画は、原作は仏文学の古典であり、世界文学史の白眉であり、ベストセラーであり、各国語に翻訳され、何度も映画化され、筋書きはだれでも知っている伝統の時代劇、日本でいえば「忠臣蔵」みたいな映画なのだ。「危険な関係」も例外ではない。「シネマ365日」の「」でも「」でも取り上げたし、粗筋を書くのはムダだろう。ダヤンはなぜそんな映画ばかり撮るのだ。収益が見込める、マアそれもあるか。でも彼女にとってはどうも、知られ尽くしたテーマだからこそ、チャレンジするのが面白いらしいのだ▼「危険な関係」は、ジャンヌ・モロー、グレン・クローズがヒロインを演じ、今度はカトリーヌ・ドヌーブだ。白状するとダヤンの文芸ものの中で本作を取りあげたのは、主演がドヌーブという大ダヌキだったからだ。この人とにかくウ~ム、食べ物を例にすればこれ以上の健啖家はいないと思うほどの健啖家で、あれがきらい、これが食えぬ、とより好みしたことを聞いたことがない、少なくともそう思ってもおかしくないほど、半世紀に及ぶ映画人生であらゆる主役を演じてきた。一時ハリウッドでの映画製作もあったが唯一西部劇だけは手をださなかった。これはたぶん乗馬をこなさねばならず、ドヌーブの運動神経では難しかったからではないか。地面の上に脚をつけて演じる役なら、ドラキュラだろうと犯罪者だろうと、ゲイだろうと(彼女はとてもフレンドリー・クイアだ)セックス依存症だろうと、アル中だろうと怖いものなし。彼女が浮き沈みの激しい映画界であれこれ関係をつくってもスキャンダルにならず、どころかますます出演のオファがふえ、映画賞受賞が増えたのは美貌と演技力によるのか? 否定しないけれど本当はこっちの理由だと思う。コンスタントにスクリーンに自分を露出させ続けることを可能にした、親からもらった丈夫な体と徹頭徹尾の健康管理と経験、そして度胸のよさだろう。自分が映画界で生き残ってきたのは(娘くらいの年の)新人監督のオファにも応えてきたからだと自分でも言っている。ダヤン監督やドヌーブをみていると、いわゆる「瑞々しさ」とはちょっと違う、図々しいくらいの「瑞々しさ」を感じる▼いただけなかったのは後半の失速だ。出だしはさすがに監督の手練と貫禄さえ感じさせるスタートだったが、物語が進むにつれ、原作者ラクロの悪の視線が薄くなっていった。メルトゥイユ夫人(カトリーヌ・ドヌーブ)は相棒のヴァルモン(ルパート・エヴェレット)に「わたしたちの絆は人を破滅させること。わたしたちは悪のために出会った。愛の道はなく、略奪者の道を選んだ。それは人の喜びを盗むこと。さあ犠牲者をだれに選ぶ?」このふたりがもてあそぶ運命に陥れられ、奈落に沈む貞節なマリー(ナスターシャ・キンスキー)。ドヌーブの後ろ姿は大きなお尻の堂々たるヒップ。これね、後ろ姿を映してはまずいと思うのよね。こういうふくよかなお尻に悪の権化っていうイメージがふさわしいか。思ってもみてほしい「蜘蛛女」のレナ・リオン、「RED/レッド」のヘレン・ミレン、「コロンビアーナ」のゾーイ・サルダナ、「ニキータ」のアンリ・パリロー、「ハンナ」のアーシャ・ローナン、「ロング・キス・グッドバイ」のジーナ・デイビス。非情の女を演じた彼女らのなかに偉大なヒップはひとりでもいたか。さてラストシーンだ。全財産を差し押さえられたドヌーブが、豪華な家具調度に赤紙張って、いそがしく立ち働く税務署の官吏たちに目を配りながら歩くシーン。税務署の女署長が取り立てにきているみたいだろ。 

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