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シネマ365日

2013年11月4日

女猫 (1958年 事実に基づく映画)

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監督 アンリ・ドコアン
出演 フランソワーズ・アルヌール

本能を内に秘めて 

 公開当初からそうだったかもしれないが、今みればなお、この映画はフランソワーズ・アルヌールのために撮られた映画だという感を強くする。なにしろ本作がヒットしたため、ラストで撃ち殺されたヒロイン、コーラ(フランソワーズ・アルヌール)が生き返る次作「女猫は爪を立てる」が撮られることになったのだ。路上にあえなく横たわったコーラはじつは負傷していただけ、ということになったのですって。機関銃の掃射を浴びて負傷ですむのかよ。そんな野暮なことは言いっこなし、というのが当時のアルヌールの人気だったのだろう。要はレジスタンス映画だ。1943年占領下のパリ。独軍は秘密通信を傍受して無線室を急襲した。無線技士は逃げそこなって死んだ。妻のコーラは通信機をもって隊長のもとに逃げ込んだ。彼女は組織の一員としてレジスタンスに加わり、独軍のロケット設計図を盗むことに成功する。成功したコーラに隊長はつぎつぎ命令をだす。彼女以外に人はおらんのか。見ていて(?)となってくるがコーラは忠実に役割を果たす▼アルヌールはコーラにぴったりの真面目人間である。ブリジッド・バルドーを主演にしていたら、たちまち上司とケンカして別の展開にせざるをえないキャラだ。アルヌールは当時のことを自伝「映画が神話だった時代」で詳しく書いている。役を引き受けたとき「わたしはさまざまなことを考えた。ホロコーストはなぜ、どのように行われたのか。英雄的な行動とはなにか。甚だしい、またはちょっとした卑劣な行為がなにをもたらしたか。対独協力者への復讐や粛清はどんなものだったか。体験記もたくさん読んだ」それというのも「わたしたちフランス人にとってドイツ軍占領下の時代を、いつまでも拭い去ることのできない罪悪感のように引きずっている」からだという。フランスの女優がみな彼女みたいな勉強熱心だったわけではないと思うけど▼「映画が神話だった~」はひとりアルヌールの自伝というより、1950年から60年にかけてフランス映画界の総覧というか手引書というか、当然発行を目的として書いたので、かなり手加減もし、まんべんなく過不足なく、登場させるスターについて書く文章の量まで公平に近いという配慮をみせている。シモーヌ・シニョレとは公私ともに仲がよくなんでも相談した。ハリウッドからアクション映画のオファがあった。共演の男優は聞いたことがなかった。体を動かすことが何によらず大嫌いだったシモーヌは「そんな役断っちゃいなさいよ」と言った。アルヌールは断った。これが007第一作「ドクター・ノオ」だ。男優とはもちろんショーン・コネリーだったとおかしそうに書いている。フランス映画黄金期を作ったビッグ・ネームがおびただしく現れる。アラン・ドロンは「学生たちの道」で共演した。どこから見ても美しく、ルネ・クレマン、ルキノ・ヴィスコンティ、ジョセフ・ロージーら一流の監督と理想的な仕事をしてきたが、彼には敵が多く挑発的な言動と率直な物言いが反感を買ったとある▼カトリーヌ・ドヌーブと「ポルトガルの休暇」で共演したときは「ジョディ・ヴァディムの息子をみごもっており、ヴァディムと別れてつらい時期だった。カトリーヌは模範的な女性だ。女優としての着実な歩みには感嘆させられる。スターとしての在り方もすばらしい」が「彼女は避妊と中絶の自由を求める声明に私と同様、彼女も署名した。カトリーヌは正義のための行動と重要な闘いにさりげなく参加する」ところがベタホメの理由なのだ。男優より女優についての観察が直感的で鋭い。マリリン・モンローは「あれほど美しい顔をみたことがない。青い瞳が抜けるような白い肌をいっそうひきたてていた。人生に新鮮な驚きを感じているかのような微笑を浮かべた。少女のような顔。想像を絶する挑発的な肢体には不釣り合いな顔だった。今にも壊れそうで自信がなさそうで絶えずなにかを探し求めているようにみえた」▼時はすぎゆく。黄金時代のスターたちも年齢を重ねた。「40歳で女優を引退するという選択肢もある。永遠に神格化されたグレタ・ガルボのように(略)。もうひとつの選択はシニョレやジャンヌ・モロー、アニー・ジラルドのような女性たちを手本にすることだ。わたしは彼女たちのようになりたいと思った。その頃映画は男の世界になっていた。ドロンとベルモンド、ギャバンとドロン、リノ・ヴァンチュラとジロドー、ドパルデューとドヴェール。女性の役柄は一時期添え物のようになってしまった」アルヌールの回想はめぐる。彼女はいう「ゆっくりと円熟すること、水底を蹴って水面に浮かび上がる本能を内に秘めて」今年82歳。なかなかいい言葉じゃないですか、ね。

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