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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月5日

特集 LGBT-映画にみるゲイ 中国の植物学者の娘たち(上)(2006年 事実に基づく映画)

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監督 ダイ・シージエ
出演 リー・シャオラン/ミレーヌ・ジャンパノイ/リン・トンフー

同性愛は死刑 

 映画に出てくる昆林と明麗という地名は、たぶん昆明と麗江だろう。昆明は雲南省の省都。雨の多い雲南省は植物の宝庫なのだ。両親を地震で亡くし養護施設で育ったリー(ミレーヌ・ジャンパノイ)は、高名な植物学者・チェン教授(リン・トンフー)の実習生として植物園に到着する。小さな島全体が植物園であり世間と隔絶している。厳格な教授は植物園の独裁者だ。娘のアン(リー・シャオラン)を使用人のようにこきつかい、新聞をよみながら黒い爪を切らせ、口やかましく「夜の9時以後は、教授(自分のことをそう呼ぶ)は電話に出ない」「わたしの朝食は7時半だ。いま8時だ。下げろ。今朝は食べない」という偏固ぶりにリーは面食らってしまう。実習の講義中こきおろされたリーは思い余って帰ろうとする。アンは駅にいるリーを探しに来て「父は怒鳴ってばかりいるけど根は善良なの」というが、美しくやさしく聡明なアンが、下女のごとく野蛮人に仕えているのにリーはアタマにくる。植物で薬をつくるのは重労働で、崖に生えている植物を採集する、松ヤニを足で踏んでこねる、固い根っこを干して砕き粉にする。葉を刻む。みな力仕事だ。リーはアンが細い体に汗を光らせ、一心不乱に松ヤニを踏む作業にみとれ「きれいよ」とつぶやく▼密林のような濃い緑に覆われた孤島。閉ざされた植物園。クレージーな親父。なんたる閉塞感。アンはリーに言う。「あなたがくるまでわたしは恐ろしいくらい孤独だった」リーの気持ちは同情を超えアンに傾いていく。リーはある夜アンを探しに来て、温室で蒸した薬草の上にまどろむ全裸のアンを見て魂を奪われる。アンには兄タンがいて、教授はリーを息子の嫁にしたいとアンに打ち明ける(してみればリーは教授のお気に入りなのだが、そういう善良でやさしい部分を現しにくいのだ)。アンは薬草を栽培するワン先生の寺に行き一晩泣き明かす。翌朝リーがきた。ワン先生はふたりの気持ちがわかっているらしい。アンが来たわけをなにも聞かず、リーが迎えにきたことだけを笑顔で知らせる。まぶたを腫れぼったくさせたアンは「二日間絶食したのよ。すごいでしょ。餓え死にしそうだった。でももういいの。あなたが来たから」食堂でアンは健康な食欲をみせるがリーはごまかされない。アンの不安を解くように「あなた以外だれも愛さないわ」と言い、108羽の鳩を空に放ちに湖に行く。二人が一生愛しあうには64羽の鳩を、一生離れないためには108羽の鳩を。ワン先生が教えた仏典の言い伝え通り108羽を放った▼リーがタンと結婚すればいつもいっしょにおられる。タンは軍人だからしょっちゅう家にいない。ふたりはそう考え偽装結婚することに。でもやっぱりアンは心中おだやかでない。結婚式の晴れやかな宴席でアンは義姉になるリーにダンスを申し込む。来賓たちが目をそばだてるなか、アンは愛おしくリーを抱く。兄貴が(こら、いい加減にしろ)とばかりリーをひったくって抱き上げたところ、リーは鼻血を出して倒れちゃうのだ。ここ笑える。さて初夜である。世間知らずの二人(アンは20歳、リーは18歳くらいか)の計画は、どこかドジだったとみえ「お前は処女じゃない。相手はだれだ」とタンは形相も恐ろしくリーを追い詰め、口を割らないリーの両手をしばりあげ、天井からぶらさげたまま部隊へ帰っちゃう(リーがアンと、なんでそれが処女云々って…もひとつよくわからんがとにかくタンはそう言い張る)▼植物園にもどったリーは傷だらけ。アンは泣くが傷も癒えたころ二人はルンルンである。タンは軍務でチベットに行ってしまったのだもん。悪夢の新婚旅行から帰って二ヶ月。この二ヶ月でアンとリーは生涯の幸福を生ききったのだ。がっちり結びついた娘たちの前に親父は影が薄い。大好きなアヒルの脚の唐揚げも「このごろアヒルが食卓に出ないな」アン「リーが嫌いだから作らない」主導権は完全に嫁と娘にうつり、教授は町の食堂で一人さびしくアヒルの脚を食べる。ある夜更け心臓の薬を探しに温室に行った教授は、愛し合っている娘たちを目撃し、大声をあげてリーを引き剥がし床にたたきつける。アンはリーを助けようと教授を一撃すると、発作かなにかで倒れちゃう。病院に運び込まれた教授は息をひきとる寸前、自分の死は心臓病のせいではなく、女たちの同性愛が原因だと言い置く。お前なあ、どうせなら黙って死んでやればいいだろが▼ふたりは共同正犯で死刑である。判決は「同性愛という病気で父親を殺した」言葉もなく、法定で互いを見交わしたのが最後だ。リーが施設の院長にこんな手紙を書く。「孤児のわたしがお願いするのは院長先生しかいません。ひとつは、わたしの死刑執行に使う銃弾の値段7元8角の支払い。ふたつはアンとわたしの遺灰をまぜ湖に撒いてください。そうすれば安らかに眠れます」院長は約束を守る。リーの遺灰を院長が持ち、アンのそれをワン先生が持って湖に来た。二人が108羽の鳩を放ち「これで一生離れずにいられる」「永遠にね」と言って祈り、朗らかに笑い声を響かせた場所だ。中国でこの映画は、上映はおろか撮影もできなかった。監督の術中にすっぽりはまってしまったことを認めるが、やっぱり言わずにはおれない。彼女らがなんでこんな目にあわないといけない。神様のくそったれ。

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