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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月7日

特集 LGBT-映画にみるゲイ Lの世界(上)(2004~2009年 ゲイ映画)

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製作総指揮 アイリーン・チェンケン
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 ミシェル・フーコーがカリフォルニア大学バークレー校に出講した、そのときのサンフランシスコ体験が彼の思想を一歩進める転機になった、とポール・ラッセルは「ゲイ文化の主役たち」で書いています。とりわけフーコーが浴場で体験した、ゲイのセクシュアリティの自由さだったというのね。なるほど。「Lの世界」の舞台はロスアンゼルスそれも最もスタイリッシュな町とされるウェスト・ハリウッドだ。ロスにいったとき街全体に独特の空気があり、あちこちの窓にレインボー・フラッグが掲げられていた▼確かに「L」よりも前に「GO FISH」も「ウォーター・メロン・ウーマン」も、差別のために社会の一画で息を潜めて生き延びなければならなかったゲイ映画ではなく、カムアウトしてごく普通に生きるレスビアンたちの、肩肘張らない姿をスクリーンに引き出し、それはゲイ映画元年ともいいたくなる新鮮な驚きだった。しかし「Lの世界」はもっとパワフルな一撃だった。登場する彼女らはみな若くない。少なくともアラフォーだろう。彼女らは自立できる仕事をもち、経済的に安定し、社会的な地位も得てパートナーを選び、あるいは恋人はいてもシングルでいることを選択し、自分のセクシュアリティに自由であることに生きる価値を見出している▼そういった環境設定は、出演者たちをカッコよく見せるためだけの演出ではないと思う。女は女性であるというマイノリティのうえに、同性愛者であることは二重のマイノリティを背負い、さらに白人でない場合は三重のマイノリティをこうむって生きていかねばならなかった。同性愛は病気であり精神疾患であり、異常であり、魔女狩りにあい、リンチにあい、排斥され軽蔑された。好きな女同士がいっしょに暮らす妨げになった最大の理由は収入だった。女性の職業は限定されていたし、教育機関も限られていた。下層の労働と低収入の賃金で女が独立するのは難しかったし、情報入手手段がなく女を愛する女に出会う場所もチャンスも極めて少なかった。潮流がかわりはじめたのは1970年代、ウーマンリブの産声とフェミニズムの台頭による…リリアン・フェダマンの「レスビアンの歴史」を読むとむかつくことがいっぱい書いてある▼「Lの世界」の主役級女性たちがみなしっかりした収入源をもっていることは、長いレスビアンの苦闘の歴史からいっても、彼女らが妥協しなくて生きていくための基本のキなのだ。弁護士。大学教授いや違った学部長(主役の一人ベットは、教授ですかと聞かれ、いや学部長ですと訂正している。格違いなのである)。映画会社オーナー。作家にして脚本家、さらに映画監督。プロデューサー。アート関係ではDJ。メイク・アーティスト。自分のラジオ番組をもつジャーナリスト。レストランの副シェフ。プロテニスプレーヤー。アメリカ陸軍大尉。百花繚乱である▼このテレビ番組は2004年1月からオンエアされ、2009年3月まで、シーズン1から6、1シーズン12話ないし13話、1話平均60分として70時間以上になる。DVDで全編を見たときはまさに耐久レースだった。ここまで視聴者受けしたのはやはり無類に面白かったからだ。スタイリッシュであることは「Lの世界」がゲイ社会への理解と寛容にあふれているという意味ではない。むしろそんなもの、薬にしたくてもないだろう。相変わらず世間は閉鎖的で差別的で、蔑視と異端視がゲイの指定席だ、そんな現実もちゃんととらえながら、彼女らがささえあう友情の強さと連帯は、あまりに自然なのでそれが初めから普通にあったものだと勘違いしてしまいそうだ。でもちがう。彼女らが自分たちのコミュニティを家族として扱うのは、自分がクイア(変態)とみなされ、爪弾きされてきた孤立と孤独があるからだ。肉親でもなく血の通った家族でもないけれど、痛みがあるぶん人よりたくさんやさしさがわかる、彼女たちはみなあたたかい。敵役も憎まれ役もしっかり配役されているが、つまるところ助け合う女同士に収束する。行きすぎると虫唾の走るシーンになるが、その一歩手前でとどめている。脚本も監督も女優陣もほとんどがゲイだ。ゲイだから中身の充実したゲイ映画がつくれるのか。ご冗談を。それこそアタマの硬さでしょう。彼女らがみな一線級のクリエイターだったからできたことでしょう。とびきりの感性があったからでしょう。総指揮にあたったアイリーン・チェンケンは「Lの世界」のインスピレーションを、ロスのゲイの間でベビーブームがおきているという、ちょっとした記事を読んだときに得たという(男同士、女同士が人工授精によってつくるベビーです、念のため)。つくづくアメリカという国の「なんでもあり」の強靭さを感じた。前置きはこのくらいにして、次回はドラマを支えた中心人物、魅力あるゲイたちのキャラに移ろう。まず長丁場6シーズンの全シーズンに出演した主役級からです。

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