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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月8日

特集 LGBT-映画にみるゲイ Lの世界(中)(2004~2009年 ゲイ映画)

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製作総指揮 アイリーン・チェンケン
出演 本文に含む

女たちの加速と失速 

 群像劇のメーンにあるのはベット(ジェニファー・ビールス)とティナ(ローレル・ホロマン)の別離と復縁騒動である。ベットは美術館のアート・ディレクター。子供がほしくてティナは仕事もやめて人工授精に集中している。同棲して7年。ゲイが集まるカフェ「プラネット」でも最高のカップルと羨ましがられる。ベットはイェール大学卒。アートの世界で頭角を現し、彼女がディレクトする美術展「挑発」で世間を騒然とさせた。ティナは「女性はベットしか知らなくていいの、と自分に聞くことがあるけど、彼女以外の女性は考えられない」と身も心も預けている。ベットはUCLAの学部長に引きぬかれ華やかな学部長に女子大生の目は点。ベットは誠実で理知的な長身の美人だけど、頭と下半身がこれほど逆走行する人も珍しい。案の定浮気がばれティナはショック死するほどうちのめされる。ティナっていい子でしてね、やさしくはあるが時に傲慢きわまりないベットを献身的に支える。浮気を隠して良心の呵責に耐えかね、バスルームでシャワーを浴びながらしゃがみこんでしまったベットを抱き起こし「頑張るのよ、ベイビー。今夜のレセプションが終わったら倒れても壊れてもいいわ。わたしが面倒みてあげる」天使のようだ。ところがその夜のうちに浮気の現場を目撃しちゃうのだからンもう。ベットは公私ともズタズタになる。代償は大きかった▼アリス(レイシャ・ヘイリー)とシェーン(キャサリン・メーニッヒ)。「Lの世界」でいちばん気持ちのいい女性ってたぶんこの二人でしょうね。アリスはジャーナリスト。ラジオ番組も持つ。シェーンはヘア・スタイリスト。ハリウッドのプロデューサーや世界一セレブな主婦からお呼びがかかるが、欲がなくしばられるのが嫌いでどこにもだれにも属しない。恋人はつくらず一夜の関係で割り切る。アリスとシェーンの友達思いなこと。レスビアン同士の連帯というか、彼女らはマイノリティゆえに限られた同好の士のなかでウマのあう相手をみつけるのはしばしば難しい。だから気の合う友達というのは大事にして、結果的に家族のようなコミュニティを形成する。ベットの浮気で家をでたティナがいちばん先に頼ったのはアリスだった。深夜訪れたティナのただならぬ様子にすべてを察したアリスは、泣きじゃくりながらわけを話そうとするティナに「もういい、もういい。わかった。もういい。わたしがついている」ユーモラスで頭が切れるため毒のある批判もするアリスですが、彼女の判断が的確で公正であることを友人たちは知っています。シェーンは浮気者ですが、母親を知らずに育ったことが、自分は晴れがましく生きる人間ではないというふうな、どこか影のある性格にしました。アリスはシェーンのことを「世界一口が固い」と評しています。話題がどんなに弾んでいても、うわさ話と悪口に乗ってこないあっぱれな女性です。彼女がたったひとりの幼い弟のために、自分がこれまで回避してきたあらゆる束縛をこうむることになっても、家族という形を受け入れようと決心するところは泣かせます▼ジェニー(ミア・カーシュナー)。「L」登場人物の人気投票で「嫌いな女」一位が彼女。シカゴ大学を卒業し、作家を目指してボーイフレンドのいるロスにくる。同棲した家がベットとティナの住む家の隣。ベットの家にはプールがあって、ときどきシェーンがガールフレンドを連れてきてプールでセックスしている。生け垣から偶然それを見たジェニーは嫌悪感を覚えずきれいな体にみとれます。シェーンはレスビアンというよりユニセックスに近い体です。中西部からさんさんと日のふりそそぐロスに出たジェニーは、幼児期の性的虐待のトラウマで屈折しています。真摯に小説にうちこみながらも、自分の性的アイデンティティに迷い、どうしていいかわからず、初めての女性との関係がこじれ、ボーイフレンドと結婚したものの離婚に至る。上昇志向の権化であるベットのようなイケイケドンドンだと、問題は生じても自浄的な発散作用があるのですが、ジェニーはすべてをかかえこみます。それが肥料となって彼女を成功させ、ついには映画の監督までやらせるのですが、サクセスと反比例に彼女の言動は鼻もちならないものになっていきます。コミュニティのみんなをモデルにした小説は実物よりあまりにお粗末で大ブーイング。ベットなんか「殺してやる…文法もまちがっている」ベットはいつも真剣で大真面目ですがときどきそれがものすごくおかしいときがあります。彼女は成熟した大人の女性ですが、どうかした拍子に見せる幼い表情は、演じるジェニファーの地でしょう。本来ならただの成り上がりで終わったジェニーに、多面的で複雑な厚みを与えたのはミア・カーシュナーの構成力だと共演者たちは絶賛しました。ミアはプライベートでもシェーンのキャサリンやアリスのレイシャと仲がよく、演技に集中して親しい友人たちと過ごすほうが楽しいという、ハリウッドではめずらしい控えめな女優です▼ベットの異母姉キット(パム・グリア)とプロテニスプレーヤーのデイナ(エレン・ダニエルズ)。キットはレギュラーの中ではただ一人のストレート。姉妹でありながら妹は名門大学からアート界の大物ディレクターに、歌手の道を選んだ姉は未婚の母となり、薬物とアルコール依存症で頓挫。姉妹の関係はぎくしゃくしていたがカフェ「プラネット」のオーナーとして出直したキットは、人生の先輩として女たちのご意見番兼後見人のような立場に。自らも歌手として復帰します。えらそうにしていても妹は妹で、ベットは精神的危機を何度もキットに救われます。花形プロテニス選手のデイナはコミュニティのなかでただひとりクローズしていました。「あなたたちとちがい自分には社会的な立場がある」とデイナはカムアウトをためらっていたのですが、その彼女が愛する恋人を得て「自分はレスビアンの二流のテニス選手でいい」とさりげなく告白するところは、目立ちませんがちょっとしたいいシーンです。デイナは乳がんで亡くなります。「Lの世界」はデイナが死んだシーズン3を境に、それ以降だれとだれがくっついた、離れただけのガラクタのエピソードの寄せ集めみたいになって失速していきます。恋人同士の愛の交歓も感激をともなったものではなく、というのも人物たちの内面の劇が失われているから、セックスシーンが単なるポルノティックな意味合いに終わってしまう、仕方なくジェニーをヒール(悪役)にして関心度をあげようとしたのではないかと思いたくなりました。そんなダレ気味のシリーズ後半を締めたのは、一筋縄でいかない海千山千の脇役陣だったといっても過言ではないです。

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