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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月12日

特集 LGBT-映画にみるゲイ ジア 裸のスーパーモデル(上)(1997年 ゲイ映画)

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監督 マイケル・クリストファー
出演 アンジェリーナ・ジョリー/エリザベス・ミッチェル/フェイ・ダナウェイ

リンダ 

 原題は「GIA」です。これがいちばん「ジア」らしい。裸のスーパーモデルでもなく、悲劇のスーパーモデルでもなく。ジアはデビュー以来ファーストネームもラストネームも使わず「ジア」だけで通したように。劇中ジア(アンジェリーナ・ジョリー)は何度か「愛したのはあなただけ」とか「あなたは最愛の人よ」とか、リンダ(エリザベス・ミッチェル)に繰り返し言っています。これにはわけがあり、ジアの手の早さは業界でも有名で、いい子がいたらジアには隠しておけ、でないと帰るのは翌朝になる、と言われるくらいでした。ジアも自分が複数の女性とつきあっていることをリンダが知っているとわかっていたから「本当に愛したのはあなただけ」と念をおしているわけですね▼モデル初仕事の日。ジアは17歳。珍しくビビっている。豪勢な毛皮をまとったモデルたちがスタジオに入っていくのに気圧されています。彼女らはビルの入り口の地べたに腰をおろし、思案しているジアをホームレスだと思い、コーヒーの紙コップに小銭を落としていく。ようやくジアは腰をあげ撮影現場に入ります。コンクリート打ちっぱなしの倉庫のようなフロアで、バックパックを背中にフードつきのジャケットを着込んだジアがちょっと気後れしながら入っていく。スタイリストに話しかけられ、気の強いジアが、めぐんでくれたのはだれかしらないけどこれを返すとコップを差し出す。モデルたちの視線には嘲笑があります。そこへ「ジアね」明るい声で呼びかけたのがリンダでした。「遅刻ね。顔を洗って」「もう洗った」「手ごわそうね」「そんなことない、田舎者だよ」言いながらジアは、リンダが缶コーラのプルトップをうまく開けられないのを見てナイフでこじあけます。リンダはワイルドなジアのヘアスタイルに「最高ね」あきれますがジアの稚さが可愛く思える▼これがジアの一生の愛情生活の始まりでした。リンダはボーイフレンドがいましたがほとんどジアに一目惚れでした。この映画は生前のジアを知る関係者と、ジア本人の日記をもとに構成されましたが、リンダの独白はジアを愛していなければわからなかった理解と情愛に満ちています。「まるで子犬みたいに、愛して、愛して、愛して。全身で訴えていた。ええ愛したわ。会った瞬間から」「だれにでもすぐモーションをかけていたわ。でもあんまり無邪気だから嫌がられなかった」「彼女は多面的だった。こういう人だと言うのはとても難しい。理解したと思ったら見失った」▼初仕事は変哲もないファッションの撮影でしたが、終了後カメラマンが特別に注文をだします。フェンスはそのまま、服は脱いでくれ。つまりヌードモデルですね。モデルたちはアホらしいとばかりさっさと帰りますが、ジアは「リンダとなら」と条件をだす。帰り支度をしていたリンダはちらっとジアを見ます。アンジーはここでちょっと左の眉をあげてサインを送る。駆け出しのモデルにしては挑発的な視線が堂に入っています。オールヌードでフェンスの前に立ったアンジーは若い獣のように動きまわります。「リンダ、入ってくれ」とカメラマンが指示する。「脱いでくれ」にリンダはためらいますが、フェンスに跳びついて自分を誘っているジアに思わず笑ってしまう。リンダは抵抗なく全部脱いじゃうのです▼ジアの激しくも短い生涯で、いちばん幸せだったと思えるのがリンダとの安らかな交歓でした。その夜初めてベッドを共にするシーンは本作でも出色です。撮影監督はロドリゴ・ガルシアです。もうご存知ですね。このあと監督デビューし「彼女をみればわかること」「美しい人」「アルバート氏の人生」と佳品・話題作を連発、哀しみと喜びの交錯する人生の営みを、映画の詩人ともいうべき繊細かつ洗練された感性で紡ぎ出します。ここではテレンス・ブランチャードのトランペットのサウンドと低いムーディなスキャットが流れます。エリザベス・ミッチェルとのセックス・シーンについてアンジーは「彼女はそれまで女性とからむのは初めてだった。わたしは彼女にキスしたり体に触れたり、快感を覚える姿をみるのが楽しみで仕方なかった。楽しみたいと思っていたわ。彼女もそうだと思う。女性とするって、さらにムードが増すの。だから女の人が好きなのだけど」(「アンジェリーナ・ジョリー 暴かれた秘密」アンドリュー・モートン)。この言葉通りだったのでしょうね、体に触れ肌を重ね、快感を与え与えられる。伏せた目の長いまつげ、髪の冷たさ、てのひらでなぞる体のくびれ、抱き寄せる引き締まった、血管の走る腕。ひそかな吐息、湿り気。ジアとリンダは一言も交わさず、満ち足りた静かな充足をわかちあいます。なるほど、なるほど。さぞ楽しかったことでしょう。

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