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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月19日

特集 LGBT-映画にみるゲイ 女たちのテーブル(1988年 ゲイ映画)

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監督 マリオ・モニチェリ
出演 リヴ・ウルマン/カトリーヌ・ドヌーブ/ジュリアーノ・ジェンマ/ステファニア・サンドレッリ

女たちの安らぎ 

 直接的なゲイの表象はないけど、ラストシーンが盛り上がるのよ。女ばかり、それもみな男とうまく行かなかった女ばかりが集まり夕飯の支度をする。「わたしはパスタをつくるわ。うちのマンションの台所は狭くて」と言いながらクラウディア(カトリーヌ・ドヌーブ)が手早くエプロンをつけ、慣れた手つきで冷蔵庫を開け材料を取り出しボールの粉をまぜる。実家の台所で女がのびのび動いている様子がすぐわかる。長年家政婦兼乳母として住み込み、いっしょに暮らしているフォスカとその娘。フォスカは包丁をふるって手際よく鶏をさばく。こんな家は一日も早く出て行ってやるとばかり結婚したエレナ(リヴ・ウルマン)の長女フランチェスカは舌の根も乾かぬうちに妊娠して帰ってきた…▼エレナの末娘マルビーナは叔母のクラウディア(女優をやっている)を頼ってローマに行き、マンションに居候、編集職の面接を受けようとしている。クラウディアの娘マルチナはまだ小学校だがずっと母の姉、つまりエレナの家で従姉妹たちと大きくなった。少女期はともかく姪たちも成長してくると生意気な口のひとつもきくようになり、叔母にむかってだれがマルチナの面倒をみてきたのだ、などと言ってクラウディアはムカッ。その日のうちに娘を連れてローマに帰る。ローマの家には小説家の愛人チェーザレがいて最近うまくいっていない。娘と姪は夜中の大喧嘩に飛び起きる。仲裁にはいったマルビーナに「君はクラウディアの姪か。クラウディアは46歳だ。でも君は若くて新鮮だな」と男は言って胸を触って去っていく。寝室で娘を抱いていたクラウディアは姪に「弱い人よ。書けなくなったことも老いも、人のせいにするの」と男のことをつぶやく。つまりこの映画の「女たち」とはトスカナの農園の女主人エレナ、エレナのふたりの娘、エレナの妹クラウディアとその娘。乳母のフォスカとその娘インマ。この七人に加え別れた元夫レオナルドの愛人ロリ(ステファニア・サンドレッリ)が、レオナルドに貸した金を返してほしいと言ってきた。これで八人である▼エレナは夫のつくった借金の返済をかぶり農園を切り盛りしていくのも疲れた、娘たちも結婚して家を出て行く、なにもかもきれいさっぱり売り飛ばし、身ひとつでローマにマンションでも買ってそこに落ち着こうと決めた。長年のパートナー、ナルド(ジュリアーノ・ジェンマ)に資産処理を頼んだ。しかし生まれた家に家族が集まり、子供たちが走り回り庭にはにわとりが、馬屋には馬が、台所では口々にしゃべりながら生き生きと動いている女たちを見ていて気持ちが変わる。フォスカは「男って支えになるものよ」とフランチェスカを慰める。クラウディアは「あなたの支えは行きっぱなし」と夫がいつのまにかほかの女と結婚していたフォスカを茶化し「わたしの支えは出ていったわ。彼の妻と髪ふりみだして取り合ったというのに」と皿を並べながら言い、大いに受けている。明日は会社の支払日だ、業者が金の回収に来ると頭を抱えているロリに、エレナの娘たちは「ここにいたらいいわ。こんな遠方まで取りにきやしないわよ」「会社が気になるわ」「なんとかするわよ、子供じゃあるまいし」クラウディアまで「二つ寝室があいているから好きなほうを使えばいいわ」用意がそろった。手作りの豪勢な晩餐だ。女たちがテーブルにつく。母、姉、妹、娘、乳母とその娘、愛人、そんな女ばかりの風景に、エレナはほっと心安んじて思う「今のままでいい、売る者はさらに失うのだ、どうなるかわからないがやっていってみよう」。女ばっかり、あるいは男ばっかりってどこか風通しのいいところがあるのでしょうね。理屈じゃなく(男にはわからん)(女にはわからん)という実感はあるものだ。うちの父なんか息子ばっかりとしゃべっているときの男同士と、そこにたとえ妻でも娘でも女が混じったときでは、微妙に空気がちがったわ▼映画先進国のイタリアの中でも、マリオ・モニチェリという監督は生き字引のような人でしてね。「シネマ365日」の「ボッカチオ‘70」でちょっとふれましたけど、生涯に100本の脚本、60本以上の映画を監督。95歳で病院の窓から飛び降りて自殺しました。本作は彼が71歳のとき。映画は悠揚迫らぬ進展で一体この日常のやりとり「家を売る」とか「売らない」とか「結婚する」とか「出て行った」とかの陳腐な行進は、いつまで続くのだろうと泣きそうになる直前、エレンの元夫が車の事故で死んで借金がかぶさってきた、そこからガラッと監督の指揮が変わります。淡々と平和な田舎の情景を映し、ああでもない、こうでもないと女たちに勝手なことを言わせてきた監督は、ストレスとトラブルを女たちに突きつけ(さあ、どうする、どうする)どうするってバカね、こうするのだわよ…あわてず騒がずデンと据えた偉大なヒップ。そんな度胸と頭のいいイタリア女が、監督は好きだったのでしょう。

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