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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月22日

特集 LGBT-映画にみるゲイ キンキーブーツ(2005年 ゲイ映画)

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監督 ジュリアン・ジャロルド
出演 キウェテル・イジョフォー/ジョエル・エドガートン

「偏見を棄てて」 

 差別、コンプレックス、偏見、見直し、気付き、公平、とにかくゲイ映画の肝になる要素が全部入っています。主演のローラに扮するキウェテル・イジョフォーは、覚えておいででしょうか、スティーブン・スピルバーグの「アミスタッド」(1997)で映画デビューしました。今年35歳。アンジーの手錠を外して、ヘリから逃がす捜査官(「ソルト」)も彼でしたね。この映画でもいいところはほとんど彼が持っていっちゃいます。というのももう一人の主人公のチャーリー(ジョエル・エドガートン)がイマイチ冴えなくて…そりゃいきなり父親から100年以上続く老舗の靴工場「チャーリー・プライス社」の社長に就任したのだから。でも映画はきっちりチャーリーが子供のころから父親のもとで社長業のイロハを習っていたこと、心構えを教えられていたこと、なんかを観客に教えているのだから、まるでハナから「こいつダメ男」といわんばかりの筋運びなの。すっかりチャーリーがいじけちゃって、かわいそ▼ファーストシーンがいいですね。荒涼とした海辺の町、桟橋を黒人の女の子が普段の靴をきれいなよそいきの靴にはきかえ、嬉しそうに歩く。家の中から父親が「息子」と厳しい声で呼ぶから、彼女が彼だとわかる。これがローラの幼年時代だ。田舎町ノーザンサンプトンからロンドンに来ていたチャーリーに父親の訃報が届く。会社を相続したものの財務は火の車。社の存続のために奔走するが、15人を解雇しなければならなくなった。社内ではチャーリーの経営手腕に冷たい目が。クビをいいわたした女子社員のローレンはチャーリーがはがゆくて仕方ない、「リプトン社は乗馬ブーツ、ブラウン社は登山靴を始めた、どこもニッチを狙っている、オフィスに座ってどうしたらいいなんて泣いている社長なんかいない」言い捨てて出て行く。その一言でチャーリーはロンドン滞在中ゴロツキに囲まれていたところを助けようとしたドラグ・クイーンの女王・ローラを思い出した。彼女が経営する店のステージでは、クイーンたちはみな足にあわない靴に悩んでいた。男の体重を受けて支える男性用ヒールはどこも売ってなかったからだ。チャーリーはそこにローレンのいう「ニッチ市場」を見出す▼ローラの意見を取り入れ試作品をチャーリーはつくったが「わたしたちに作業靴は要らない、美しくて華やかで、それでいて履きやすく心ときめくセクシーな靴がほしいのよ。こんなドタ靴!」とローラを怒らせる。危険でセクシーな女物の紳士靴という前代未聞の靴作りに挑戦することになったチャーリー・プライス社ではローラへの偏見が強かった。なにしろ田舎である。ゲイは変態扱いだった。工場内の男たちは露骨にローラを蔑み「ブラウン社の吐き物(履物)」という嫌がらせの張り紙までする。ローラはいちばんのホモファビア(同性愛嫌悪)であるドンをつかまえて言う。「男のなにが好きなのか女に聞いて。思いやり、やさしさ、感受性よ。伝統的には女の美徳ね。女は女性的な男を欲するの。あなたが男らしくなる方法を教えてくれたら、わたしはあなたに男ぶりを上げる方法を教えるわ」そこで腕相撲で勝負をつけようとなった。優勢だったローラは勝ちをドンに譲る。なぜだと聞くドンに「あなたが軽蔑されるところをみたくない。これがあなたの男ぶりをあげる方法」とメモを渡した。「偏見を棄てて」と書いてあった。工場の女子社員たちがなんの差別も覚えずローラに味方するのを見てドンは考えこむ▼チャーリーはミラノの展示会に「ドラグ・クイーン御用達女性仕様紳士靴」を出展することを決め工場はドンはじめ一丸となって昼夜兼行で製品を造った。ところがどこまでも優柔不断なチャーリーは土壇場になって自信を失くし、あろうことかローラに「お前なんかアイデンティティを見失った半端なセックス」と言ってはならない言葉でローラを傷つけ、ローラは出演するはずだった展示会のファッションショーを目前に失踪する。当日やぶれかぶれで自社のブーツを履いてショーに出たチャーリーは、ステージで七転八倒。床に這いつくばった目の前を力強いサウンドに乗って赤いブーツが歩いてきた。自分の店のドラグ・クイーンを動員したローラがきらびやかなブーツで登場したのだ。堂々と入ってきたクイーンたちの迫力と存在感。ここは監督の一本背負いが決まりました。ベタなことはわかっていますがジンときます。いい映画ってそんなものでしょ。

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