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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月23日

特集 LGBT-映画にみるゲイ 四角い恋愛関係(2005年 ゲイ映画)

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監督 オル・パーカー
出演 レナ・ヘディ/パイパー・ペラ―ボ

獲得した「さりげない日常」 

 オル・パーカーは快作「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」の監督ですね。「17歳のエンディング・ノート」もありました。主人公レイチェルに扮するパイパー・ペラ―ボは「コヨーテ・アグリー」に、ルースのレナ・ヘディはテレビのターミネーター「サラ・コナークロニクルズ」に主演。わりとおもしろい映画なのに日本では未公開でした。劇中ルースがあっさり「わたしはゲイなの」とか「女性を愛しているの」と何度かいうシーンがあります。「セルロイド・クローゼット」は映画史から選んだ100本以上の、ゲイが登場する映画を紹介していますが、そのほとんどで主人公のゲイは殺されるか、死刑になるか、殺人者か、犯罪者か、精神異常者か、吸血鬼か、とにかくさんざんな扱いを受けています。シャーリーズ・セロンなんか連続殺人犯を演じましたよね(「モンスター」)。シャーリー・マックレーンは首を吊って自殺してしまったし(「噂の二人」)。ゲイが幸福に差別を受けずに生きることを社会は許さなかった。「わたしゲイなの」「愛しているのは女性なの」がスクリーンの上で軽々と言え、そればかりか青空のような「Lの世界」が登場することになって、時代とは確実に動いているという実感を与えています。そういう社会的なメッセージが込められた映画はなにも本作だけではなかったのですが、オル・パーカーというロンドン出身の監督が、36歳のときに撮ったイギリス色の濃いゲイ映画もいいな、と思ったのでとりあげました▼舞台はロンドン。監督が知り尽くした街ですね。セリフもとてもしゃれたいくつかがありますが、季節を映す川辺の土手に立つ樹影とヒロインのシルエット、生活感のある市街や閑静な公園の風情が生き生きしています。ラストシーンでは、ルースが秋も深まろうとする公園のベンチに厚手のセーターを着て座っている。同じような格好をしたレイチェルが熱いカップコーヒーをふたつ買ってきて、ルースにひとつわたす。隣にすわる。ルースが「寒いね」「気持ちいいわ…やっぱり、さむ~」こういうしょうもない会話で、ふたりがやっとたどりついた幸福感を伝えている。並の監督術ではないと思いました▼さていっぺんにラストに飛びましたが、本作でゲイはこの監督、というよりイギリス映画が得意とする「さりげない日常」に溶け込んでいます。特異視もされず特殊化もされず、まして犯罪者でも異常者でもなく。ここまでくるのに映画は100年かかったのです。金融会社に務めるサラリーマン、ヘックとその妻レイチェル、ヘックの友人で女たらしのクーパーとかれが口説こうとするルース。ヘックは脱サラしてトラベル・ジャーナリストになるのが夢。クーパーは毒舌家の遊び人だがラストではいつのまにかパパになっている。彼の悪友ぶりはこんなセリフに現れる。ヘックに言うのだ。「お前をみて思う。地に足がついている。その揺るぎない安定感。僕がお前でなくて本当によかった」▼レイチェルは結婚式場ですれちがった花係のルースに「前世で知っていたような」感覚を覚える。新婚数週間後、わざわざルースの花屋をたずね晩餐に招く。ルースは喜んで招待を受け、クーパーを紹介しようというヘックにそれはむだだ、自分はゲイだからと言う。クーパーは心変わりを期待してルースに花を贈り、デートに誘い…とうとう「僕に関心がない」と諦める。レイチェルは職場で「女性を好きになったらどうする」と同僚たちに聞く。彼女らは「死ぬまでに一度女と寝たいと思っているの。でもスペイン旅行より難しいかもね」などと陽気に答え、レイチェルの気持ちはほぐれるが何しろ自分は結婚している▼レイチェルとルースは涙ながらに別れる。そのあとだ。レイチェルの本心を知ったヘックが「僕が身を引く、君を幸福にできるのは僕だけだ」なんて啖呵を切ってレイチェルを離縁し、彼女は晴れて独身となる。両親に好きな人がいると打ち明けるが「あんないい夫がいて、いったい誰に心を奪われたというの」「彼じゃない、彼女なの」「ンま。どうやって孫をつくるのよ」ここでいつも妻の尻に敷かれていた冴えない父親が「スポイド式で簡単な授精ができるのさ」そして娘に「これだけは頼む、心に正直に生きろ。パパたちは応援するよ」と泣かせる▼レイチェルの離婚を知らないルースは長い旅に出ようとしていた。タクシーで空港に向かうが渋滞で動かない。それを追うレイチェルと両親、ルースの母親。とどのつまりファミリー映画かと笑うなかれ。オル・パーカー監督は「マリーゴールド・ホテル」と同じく、渋滞で動かない車というシチュエーションから逆転劇のセリフを言わせます。監督はヴィークル(乗り物)が好きなのかもしれません。エンディングには往年のヒット曲「ハッピー・トゥギャザー」がしみじみと流れます。おっともうひとつ。いやな会社をやめ、旅行記を書くため各国を旅するヘックは機内で素敵な女性に「旅行記ができたらぜひ読ませて」と声をかけられます。彼女はタンディ・ニュートン、つまりパーカー監督の奥さんのカメオ出演です。彼女が「ミッション:インポッシブル2」のヒロインに抜擢されたのは、共演して彼女の力を認めたニコール・キッドマンの推薦によります。

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