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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月27日

特集 LGBT-映画にみるゲイ 夜になるまえに(2000年 ゲイ映画)

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監督 ジュリアン・シュナーベル
出演 バビエル・バルデム/オリヴィエ・マルティネス/ジョニー・デップ

死という夜になる前に 

 バビエル・バルデムが演じた主人公レイナルド・アレナスはキューバの作家であり詩人。1943年に生まれ1990年ニューヨークで自殺しました。エイズに感染していました。20歳で初めての小説を発表しましたが、カストロ政権下で同性愛者であること、反政府的な言動があるとされ、以後の作品はすべて発禁となりました。政府や警察から迫害と弾圧を受けながら、1973年無実の罪で逮捕され、一度は脱獄するが逃亡に失敗、悪評高いモロー刑務所に服役します。獄中で狭い(立つこともできない)のゴキブリだらけの不潔な独房に入れられ、全身泥まみれ、酷い扱いを受けながら、母親がやっと釈放の手続きをして迎えに来てくれたにもかかわらず「2年間も彼らといっしょにやってきた生活を棄てるなんて」とバレーボールをする囚人たちのところに戻り刑務所に残ります。出所後一生の友達となるラサロ(オリヴィエ・マルティネス)に出会い、ニューヨークへ亡命。ラサロに支えられながら作家活動を続けエイズ感染がわかり、鎮痛剤を大量に摂取して自殺しました。映画ではラサロが息をとめることになっています▼バルデムは本作でオスカー候補になりました。はっきり言って盛り上がりのない描き方で「アレナスの身の上にこんなことがありました、あんなことがありました」という積み重ねです。伝記映画としてはそれでいいのかもしれませんが「そうですか、そうなったのですか、そうですか」とフンフン頷いているうちに映画は終わるのよね。平坦を救ったのはやっぱりバルデムの存在感でしょうね。映画でみる限りどこがいいのかわからない詩人であり作家ですが。刑務所では彼が作家だということがわかり、読み書きが苦手な囚人たちが彼に手紙の代筆を頼み、大事にされます▼刑務所の撮影は秀抜です。独裁体制からはみ出た犯罪者たちが虫ケラの如く扱われている。アレナスは代筆してタバコをもらい、溜めたタバコを紙や鉛筆に替えて獄中で小説を書いていました。それが「夜になるまえに」です。月に一度ゲイの囚人によって刑務所はクラブに変身。アレナスは「ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ソクラテス、シェイクスピア、美の創造者たちはほとんど同性愛者だった」と自分を励まし、刑務所の「スター」ボンボンを観客に紹介します。刑務所クラブの花形「マリリン・モンロー」に扮するのがだれあろう、ジョニー・デップです。ひげの剃り跡をうっすら残したなんたる美貌、大理石のような形のいいお尻に食い込んだ白いパンティ。ボンボンの特技は「運び屋」でした。様々なものを直腸の奥に隠し、尿検査でもわからないのです。アレナスはタバコ1000本で原稿の運び出しを頼みますがこれがばれ、独房入りしたわけ▼ジョニデは二役です。モンローと囚人を管理する同性愛者の中尉がアレナスを呼んで言います「ホモ更生は無理らしい。その反政府的紙くずを何度没収したか。しまいに命を落とす羽目になると思わんのか。書き続けるならお前の未来はない。書くのをやめれば未来はある。5分で決めろ」アレナスは美男の中尉が自分で自分のみごとな性器に触れているのを見ながら、あっさり「今までわたしが書いた作品はみなクズです」と文書に認め、中尉の抱擁に気絶しそうなくらい快感を感じ出獄する。確かに刑務所にはブチ込まれ独房の懲罰も受けはしたが、結局彼は刑務所体験が作家としての肥やしになるとして母親の迎えを拒否したのだし、刑務所ではけっこう囚人仲間から大事にされたし、理解のある中尉もいて、そんなひどい経験だったのかしらね。国内でこそ発禁になったけど、友人に託してフランスに持ちだした小説は文学賞をとっていたでしょ。ラサロが「なんで小説を書くのか」と質問したら「復讐だよ」とアレナスは答える。ふうん。さっぱりわからん。ラサロは自分も「書きたいから教えてくれ」と頼むのですが「それはわからないことだよ」と教えてやらない(笑)。まあ正直で正しい答えではありますが、少しでもラサロに素質があると思ったなら「本を読め」とか「こんな練習をしろ」とか実務的なアドバイスを言ってあげればよかったのに。ラサロはけっこう詩的な感性のある若者みたいだったけど。繊細な青年に最後まで世話してもらって死ぬのだし、たとえ47年のこの世の持ち時間だったとしても、夜になるまえに、死が来る前に、燃やすものは燃やしたのだ。完成度は高かった。無理に悲劇的に考える必要はないと思う。

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