女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年11月30日

特集 LGBT-映画にみるゲイ ローマ、愛の部屋(2010年 恋愛映画)

Pocket
LINEで送る

監督 フリオ・メデム
出演 エレナ・アナヤ/ナターシャ・ヤロヴェンコ/ナイワ・ニムリ

思わぬ佳品

 フリオ・メデム監督とエレナ・アナヤは「ルシアとSEX」に続く二度目の映画。「ルシア」はエレナ・アナヤが体当たりで女優開眼したともいうべき記念碑的作品でした。彼女は「トーク・トゥ・ハー」「この愛のために撃て」「私が、生きる肌」などで順調にキャリアを築いています。本作の原題は「ローマの部屋」。邦題の「愛の」は余計です。ローマのホテルの一部屋で深夜から夜明けまで主演女優二人がほぼ全裸で通すという破天荒な映画です。もうひとつ「ローマの部屋」が含んでいる意味は、ヒロインの一人ナターシャ(ナターシャ・ヤロヴェンコ)が(ここであったことはここだけの話にしてね、二人だけのことにしてくれるわね)という約束事をアルバ(エレナ・アナヤ)に承知させる秘密空間としての「部屋」ですね。もうひとつ「部屋」は「子宮」につながります。ヒロインたちの人生の再出発を「ローマの部屋」は孕んでいたわけです▼スペイン人のアルバとロシア人のナターシャは旅先のバーで意気投合し、別れ際にアルバはホテルで飲み直そうと提案する。夜更けに「女性の部屋にいくのはどうも」気が進まなさそうなナターシャだったが結局来る。アルバはゲイであることを打ち明けるがナターシャはていよくあしらい、自分のホテルに帰りたがる。白けたアルバは寝てしまうが忘れたケータイをとりにきたナターシャに起こされる。ふたりは身の上やら仕事の話を始める。お互いに警戒しているから中々正体をばらさない。名前も本当かどうか疑わしいとどっちも思っている。アルバはアラビアの大富豪の家に母親の担保代わりに置いていかれ18歳で妊娠、ハーレムから逃走中捕まって子供は中絶したとか、ナターシャはロシアの中産階級の家の娘で双子の妹がいる、妹は世界ランキング入りのテニス選手だ、自分は大学で美術史を専攻していると、だんだんうちとけてくる▼アルバは衛星地図を検索しナターシャの家がどのあたりか聞き「テニスの練習をしていたというけど、家にテニスコートはなかったわね」とか(世界一精密な衛星地図で、バルコニーの椅子まではっきり見える)、ナターシャはナターシャで「アラビアのどこにその豪邸はあったの」とか、どっちもが根掘り葉掘り聞きだし、つまるところ二人とも偽情報で煙幕を張っていたことがわかる。それはそれとして親密度が増したのか、今度はナターシャも嫌がらずアルバを受け入れる。これが「とってもよかった」のでふたりはグンと仲良くなり、煙幕なしでホントのことを話すようになる。アルバは機械工学士でローマには国際見本市出品のために来た、自分が作ったのは環境保護のためのエコ自転車である。ナターシャは自分は双子の妹で母親は早く死に、父は姉ばかり可愛がって自分はのけもので寂しく育ったと、だんだん生い立ちの影の部分を話し始め、ふたりとも大いに共鳴し気合をいれて抱き合う。理解度と親密感が増すたびにセックスが濃くなっていく、それを監督はじつに洗練された俯瞰の映像で撮る。どっちの体もきれいだ。アルバは「なんて長い脚なの」とナターシャの脚をなで「きっと速く走れるでしょうね」と馬の品評会のように言い「この美しい肌。ロシアの大草原に吸い込まれるようだわ」(見たこともないのに)▼でもどっこい、二人の秘密はまだまだ出尽くしていなかったのだ。どっちにも悲しい過去があり、それを吐き出してさらに強く結びつく。当然一睡もしていませんよ。いよいよ夜明けである。ナターシャは「ローマには結婚式のためにきたの。日曜日に結婚するの」ゲッ。それは今日ではないのか。でも「この部屋のことは一生忘れない。あなたもでしょ、アルバ」とナターシャ。そんなおためごかしより、アルバは結婚なんかやめていっしょにここで暮らそうとまた思いきったことを言い、ナターシャは一瞬その気になる。できるはずない、と現実に戻ったアルバはチェックアウトの前に「もういちどお風呂に入ろう」「そんなことしたらつらくなるだけよ」いいながら入っちゃう。時間稼ぎの朝食もすんだ。もう部屋をでるだけか。シュンとしているアルバにナターシャが「あなたに話があるの」。「なんでも言って!」ここは吹き出してしまった。夜を徹してガセネタまじりの情報交換で、なかなか正体を明かさなかったナターシャだ、いまさらなにを言われてもびっくりするかい。いいってことよ「さあ、なんでも言って!」どんなクセ球でも受けてやるぜ、バンバンとミットを叩いているみたいだったのだ▼ふたりはホテルの前で逆方向に別れる。カメラはそれを頭上から映す。しばらく石畳だけが映り、そこへ「アルバ」とナターシャが叫んで追いかけていく。ラストシーンは二人の国の国旗と真ん中に白い旗をあげた三本の旗のたった部屋が衛星地図で見えます。ホテルのベランダの両脇にイタリアの国旗とローマ市の旗が立ててあり真ん中に空間があった。二本の旗の間があいているので、アルバが出発前に白いシーツで作った旗を「これはわたしたちの旗」だとして間にたてたのだ。つまり、この白い旗の家にアルバとナターシャは暮らしているのでしょう。二人の会話だけでなりたたせる緊密な脚本。スタイリッシュなベッドシーン。機械工学士と美術史専攻の知識からでる専門的なレベルの会話。佳品でしたね。結婚式? どうなったかはさあ、それは存じませんが。

Pocket
LINEで送る