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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年12月3日

特集 LGBT-映画にみるゲイ プリシラ(1994年 ゲイ映画)

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監督 ステファン・エリオット
出演 テレンス・スタンプ/ヒューゴ・ウィーヴィング/ガイ・ピアース

罵られて強くなる 

 どうしようもない同性愛嫌悪(ホモファビア)ってあるのですね。ポンコツバス「プリシラ号」でオーストラリアのデッド・ハート(砂漠地帯)を横断する三人のドラグ・クイーン(女装のゲイ)たち。原色のケバケバの女装で音楽にあわせ口パクで踊るミッチ(ヒューゴ・ウィーヴィング)に電話が入る。ミッチには昔別れた妻がおり、彼女はオーストラリア中部にあるアリス・スウリングスのホテルでのステージを元夫に依頼してきたのだった。ミッチは恋人をなくしたばかりで落ち込んでいたバーナデット(テレンス・スタンプ)と、若くて騒々しく底抜けに明るいフェリシア(ガイ・ピアース)を誘った。三人はフェリシアが母親に泣きついて調達したボロバス「プリシア」号で、はるばる3000キロの旅に出た。三人のなかで一番年長でリーダー格は性転換者のバーナデット、ミッチはバイで、フェリシアは若さのあまり先輩ふたりのいうことをひとつもきかない。トカゲにサボテン、果てない砂漠の道を軽快にとばす彼らにつぎつぎトラブルが襲いかかる。モーテルに一泊、さて翌朝出発しようとした彼らは、バスの脇腹一面に「エイズ野郎でていけ」と書かれているのを見る。彼らがゲイを排除するのは、自分らの属する異性愛の地盤が多数派であるという安心感によってでしかない。数の多少で人の心の在り方を裁けるのか。おぞましい。病んでいるのは同性愛でなく、同性愛嫌悪のほうだろう▼ミッチはこれから行く興業先のホテルで別れた妻が待っていることを打ち明ける。彼らはアポリジニ(オーストラリアの先住民)との交歓や、元ヒッピーのボブとの出会い、バスの故障などに見舞われながら旅を続ける。やめておけというミッチやバーナデットの忠告もきかず一人で町にでかけたフェリシアは、ゲイを軽蔑する男たちに罵詈雑言を浴びせられショックを受けて戻ってくる。バーナデットは「ののしられて強くなるのだから。男が女になるのはらくじゃないのよ」とやさしくなぐさめる▼彼らの会話には毒と侮蔑が満ちている。「あいつはおしりの脂肪を吸い出してペニスに注入したのよ」とか「あいつの脳みそはペニスにあるのよ」「何をいってもいいが人の悪口とバストの話、ドラッグはやめよう」「ほかに何の話題がある?」「オカマは都会というオアシスが守ってくれる」彼らが息を吹き返すのは夜、ゴージャスな衣装をまといギンギンにメイクして踊り狂う夜だ。ドラグとは「引きずる」つまりひきずるドレスを着用したクイーンが彼女らだ。朝の光でみるとうっすらひげが伸び、眉も黒々と筋肉は隆々の男たち。二重の性を生きる彼らに二者択一はない。そんなケチなところで生きていないのだ。「どっちも」が彼らの生きる世界である。主人公たちは偏見にさらされているが、だからといって自分を見失ってはいない。このへんの軸足がしっかりしているので、かえって彼らの孤独感が浮き上がる。太陽が燃える原色の砂漠にギンギラギンの舞台衣装という組み合わせは、奇妙な無音世界の孤独感を垣間見せる▼テレンス・スタンプがこの役をやったときは55歳。ウィリアム・ワイラー監督の「コレクター」。パゾリーニ監督の「テオレマ」がすぐ思い浮かぶ。前者は蝶を収集するように女性を収集するコレクター。後者はどこからともなく姿を表す性の使者という難しい役を、適任で演じた。彼の容貌をじっとみていると、目次の多い書物といっしょで、どこから読んでいいのか迷うような奥行きがある。ヒューゴ・ウィーヴィングはいわずとしれた「マトリックス」のエージェント・スミスである。でこぼこのヒタイに落ち窪んだギョロ目。後退しつつある生え際。どこといっていいところはないのに不思議とよく覚えられる顔だ。今回も名前は思い出せなかったが「スミス君じゃないの」と思わず叫んだ。ガイ・ピアースはこれが映画デビュー作です。順調にキャリアを伸ばしトム・フーパー監督の「英国王のスピーチ」、キャスリン・ビグローの「ハート・ロッカー」とたて続けにオスカー作品に出演。「アイアンマン3」にもオファがかかるなどエンタテイメントと文芸ものと、どちらもこなせる役者として着実に力をつけている。

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