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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年12月5日

特集 LGBT-映画にみるゲイ バードケージ(1996年 ゲイ映画)

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監督 マイク・ニコルズ
出演 ロビン・ウィリアムズ/ネイサン・レイン/ダイアン・スウィート/ジーン・ハックマン

いいぞ! ネイサン・レイン 

 「バードケージ」とはフロリダのショークラブ。オーナーのアーマンド(ロビン・ウィリアムズ)とアルバート(ネイサン・レイン)は長年夫婦として暮らしてきた。そこへアーマンドの息子ヴァルが訪ねてきて、同じ大学のバーバラと結婚したいと言う。彼は20年前たった一度の過ちでできた子だ。母親代わりとなって彼を育てたのだアルバートである。バーバラの父キーリー(ジーン・ハックマン)は上院議員、しかも道徳強化協議会の副会長という堅物だった。娘の恋人が、おかまバーを経営し女装の男と夫婦している男の息子とわかれば、結婚なんか許すはずがない。いったいなんと言えばいいと悩む若い二人は、苦しまぎれにヴァルの父親はギリシャの外交官だとウソをつく。遜色のない家柄だと母のルイーズ(ダイアン・スウィート)は大乗り気。しかしヴァルを我が子のように育ててきたアルバートはショックで落ち込む▼アーマンドはこう啖呵を切る。「確かにおれはファウンデーションをつけ、男と同棲している中年のホモ男だ。だが20年かけて築いてきた生き方だ。上院議員にそれを崩させる? 上院議員なんかクソくらえだ!」そうだ、カッコいいぞ、パパ。でも、でも…息子には勝てない、なんとか結婚を成功させるため外交官になりすまし、アルバートは叔父ということに。ゲイ趣味にあふれたインテリアや絵画、室内の装飾をとりはずし、壁は塗り変え、ふだん半裸裸足で(なにしろフロリダです)いる給仕は、にわか仕立ての執事になって窮屈な制服と靴で転びそうになりながら歩くのだった。アルバートは男っぽい仕草、喋り方の特訓をアーマンドから受ける。そこへ道徳強化協議会会長が未成年の黒人娼婦のベッドで腹上死した、というスキャンダラスな事件が発生。とびついたマスコミは攻撃の矛先を副会長キーリーに向け追い掛け回した。政治生命の危機を感じたキーリーは、娘の結婚パーティで明るい話題に切り替えようと、一刻も早く先方の両親にあい話をまとめようと妻と娘ともどもフロリダにやってくることになったのだ。どう考えても「男同士の父親」はまずい。思いあぐねたアーマンドは別れた妻キャサリンにきてくれと頼む。傷ついたのはアルバートだ。自分がクイアであるためのけものにされたと嘆く彼は「ご遠慮なく、みなさん。わたしはもう若くもなく、みんなの物笑いだってことは自分で承知しているわ。だれにも笑われず、人間がみな平等のところへいくわ」哀しく立ち去ったはずだったが、どっこい、彼は嫉妬のあまりキャサリンが渋滞で遅れていることを幸い、ばっちり化粧し完璧な仕上げで「母親」としてキーリー一家の前に出現する。アーマンドもヴァルも絶句▼コメディのはずなのですが、そこはマイク・ニコルズなのです。「卒業」でアメリカン・ニューシネマを席巻し、新しい青春映画を切り開き(こう書いているうちにもサイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」が聞こえてきそうです)「愛の狩人」「シルクウッド」とシリアスな社会派映画を撮る一方で、ニューヨークの都会色あふれるロマンティック・コメディ「ワーキング・ガール」をヒットさせた今年81歳、最高の映画人の一人です。観客はアーマンドやヴァルの世間を気兼ねした判断に(まあ、無理もないか)と思いながらも、女装のおかまのアルバートになぜか味方したくなります。彼の裏表のない誠実な献身、悪びれず生きる度胸。それに比べると右往左往する男たちが滑稽で小さく見えてくる。自分で自分のことを「あわれで哀しい」存在と卑下しながら、土壇場で開き直ったアルバートのふてぶてしさが堂々と見えてくる。ニコルズはただおめでたく笑わせる映画にしていません。自尊心と自虐が微妙に交錯するゲイの内奥を、ネイサン・レインの軽妙なセリフと演技で体現させます。ロビン・ウィリアムズもジーン・ハックマンも完全にネイサン・レインに食われています。映画をもりあげる絢爛たるショーの振り付けはヴィンセント・パタースン。蛇足でしょうがマドンナやマイケル・ジャクソンのステージをてがけた最高の振付師です。

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