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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年12月8日

特集 LGBT-映画にみるゲイ アナザー・カントリー(1984年 ゲイ映画)

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監督 マレク・カニエフスカ
出演 ルパート・エヴェレット/コリン・ファース

むくろのような文化 

 一言でいうと、名門校のエリート学生が同性愛を暴かれたため将来を閉ざされ、自分をそんな目にあわせた祖国への復讐(教育課程とか社会制度とかも含めて)のためスパイとなる、と言ってしまうと呆気なさ過ぎるでしょうか。本作は実在のガイ・ハージェス事件(ケンブリッジ大学出身者が中心となったダブル・スパイ事件)を元にエリート社会の欺瞞を映しています。舞台は1930年代のイギリスの名門イートン校。特権階級の子弟が通う全寮制の男子校ではしばしば同性愛の温床になったが、これは無理ないよね。思春期の男子がいっしょに寝起きしているのだもの、気の合った相手のひとりやふたり現れるでしょうよ。冒頭に登場したモスクワの老スパイというのが、イギリスはイートン校に学んだ本編の主人公ガイ(ルパート・エヴェレット)だ。「どうしてスパイになったか」というインタビュアに答えるための回想シーンから説き起こされていくのだが、つまるところ同性愛者は放校、出世コースからは締め出され、社会的アウトローの道しかなく、イートン校からケンブリッジ大学、ケンブリッジから国家要人とか、政界進出とか約束されたグリーンパスを手にしようとしたら、同性愛を隠して生きていくしかなかった、げんにガイの恋人は無事卒業し銀行の頭取になっているからね▼ガイは来期は寮の代表(ゴッド)に選ばれ将来はフランス駐在大使を狙う野心家だ。代表とは自治会の最高組織。いわば全校の特権階級でガウンの下に鮮やかな色のベストを着ることが許される。ゆえにベスト組と呼ばれる。頭脳明晰なガイは目立つ存在だ。ガイの親友がジャド(コリン・ファース)。いつも小さなレーニン像を持ち歩くほど共産主義に心酔しガイのブルジョワ思考を軽蔑するが、なぜか二人は気が合う。別寮の美少年ハーコートに一目惚れしたガイに、慎重にふるまうようアドバイスするがガイは大胆で気にするふうもない。しかしガイの同僚の学生が同性愛を舎監にみられ自殺する事件が起こった。自治会のゴッドをめぐる階級闘争が暗部にあり、バリバリの軍国主義学生であるファウラーは、ジャドやガイの異端者が気に入らない。あいつらは学校の、というより将来の国の恥だと思いこみ、ガイとハーコートの現場を抑えようと汲々とし、ついに動かぬ証拠をつかむ。ガイは自治会代表の協議会でムチ打ちの罰を受けることになる。抗弁したら事情を説明するためハーコートの名前も明るみに出てしまうからだ。尻を出せ、という代表の命令にガイは屈辱と怒りを耐えてムチで打たれながら、いつかこの国に復讐してやると誓う▼校内の權力闘争など我関せず。本の虫みたいに学力涵養に打ち込むジャドが青年らしくてすがすがしい。それにイギリスというお国柄なのか、日本で言えば高校生くらいの年齢の男子学生が、全寮制だからとはいえパジャマの上に羽織るチェックのガウンの着こなしが、大人びていてシックなのだ。風格のある校舎。広い閑静な校庭。全員集合で席につく晩餐。黒い由緒ある制服。国家官僚や大学教授や政治家や、社会のリーダーになることを約束された青年たち。自由と規律を謳歌できるはずの環境で、どうしようもなく取り残され、だれも手をつけられなかった、躯(むくろ)のような文化の残骸が同性愛に対する偏見だった。有為な青年が復讐だ、腹いせだ、スパイだという行為に走らざるをえなかったばかばかしいものが、この映画の本当の主人公だろう。

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