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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年12月12日

特集 LGBT-映画にみるゲイ 女と女と井戸の中(1997年 ゲイ映画)

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監督 サマンサ・ラング
出演 パメラ・レイブ/ミランダ・オットー

脱出 

 オーストラリアの女性監督サマンサ・ラングのデビュー作です。ヒロインはヘスター(パメラ・レイブ)とキャサリン(ミランダ・オットー)の二人。ヘスターは父親を介護しながら農場を運営して暮らす。父親の友人が遊びにくる以外ほとんど交流関係がない。中年になった現在もヘスターは父親から下女のごとく扱われている。スクリーン全体がブルーの色調で統一されている。まるで井戸の底に沈んでいるのはヘスターの暮らしみたいに(どよよ~ん)としているのだ。ヘスターがある日町から若いキャサリン(ミランダ・オットー)を連れてきて「新しい家政婦よ、わたしのものだけど」と父親に紹介する。わたしのものってなに。と思うだろう。父親が首から吊るしている鍵のいくつかでわかるように、家の中にはヘスターの自由になるものがなく、全部父親の管理下にあるのだ。父親は住み込みだと高くつくとか、痩せていて性的に役にたたないとかあからさまに侮蔑する。どういうオッサンなの、こいつ▼キャサリンはとんでもない怠け者だがヘスターは叱りもせず、それどころか父親に抑圧されていた生活のなかで、やっとできた話し相手というか生活共同者というか、相棒というか、気が合うというか、キャサリンを可愛がるのだ。年齢でいえばヘスターが40代後半、キャサリンはどうみてもハイティーンだろう。女同士は親密にはなるものの、ふたりの性格は水と油である。ヘスターがキャサリンの関心を得ようとピアノを弾いたり歌を教えたりするが効果なし。そこへ父親が死んだ。ヘスターにとっては解放である。農場を売り払い、遺産を受け継ぎ、これまでのうっぷんを晴らすようにキャサリンとまるでお買い物中毒。家ではトルコ行進曲などを弾き機嫌よくふたりで踊ったりしている。あるときキャサリンの親友が訪ねてくるという。刑務所を予定より早く出られることになったらしい。それだけでヘスターはキャサリンを取られるように思い落胆して泣く。どうにもこうにも、キャサリンみたいなアバズレのどこがいいのかと思うが、ヘスターのキャサリンに対する気持ちはこうである「大切なのはあなたなのよ。あなたの気持ちやあなたの未来なの。あなたを幸せにしたい。それだけがわたしの望みよ。いつも信じているわ。あなたはわたしの宝物。すべてなの」「そうよね。ごめんさない。でもダメなの。彼といたくてたまらないの」どういうことかというと、夜道で酒酔い運転したキャサリンが男を轢き殺し、ヘスターは死体を敷地の空井戸に捨てた。キャサリンは井戸に食べ物やら水やらを降ろし、男は生きていて出してほしいと頼んでいる、自分は男を愛しているしいっしょに出て行くとヘスターに言うのだ。死んだやつが生き返るか。馬鹿らしい話を一笑に付したがキャサリンはこれで男から買い物を頼まれた、と100ドル札を示す▼男を井戸に捨てた翌日、ヘスターは農地を売却した多額の現金が全部盗難にあったことがわかる。あの男が金を盗って逃走中車に轢かれた、だから井戸の中に金はある、キャサリンに取ってこいというのだが、キャサリンは男が生きているといっているわけ。しかし100ドル札をみてヘスターにはすべてがわかった。男は死んだままだ、金を盗ったのはキャサリンだ。金が手に入った以上はこんな荒野で中年女と二人、暮らす理由なんかない。脱出あるのみだ。しかし盗んだことを隠すため男が生きているとか、愛しているとかいっしょに逃げるとか、くだくだ一芝居打っている。ヘスターはそれがわかって「お金はあげるわ」とまで言うが、キャサリンにすればヘスターといること自体、彼女の愛情自体が逃走したい対象なのである▼キャサリンが金をもって家を出た。ヘスターはあてもなく徒歩で歩いている。そこへ農場を買い取って隣人になった子沢山の主婦が車で通りかかる。親しげに声をかけ「乗っていきなよ、どこに行くのだい」車を止めた。車の中には所狭しと子供たちがいて、じろじろヘスターをみている。いちばん小さい男の子が「乗りなよ」愛らしい笑顔でヘスターに席を作った。ヘスターも乗り合うことにした。ひどい目にあったが、かえってこれでよかったのだ。ヘスターにとってはキャサリンという狐憑きが落ちたようなものだ。愛情なんて頼るものでも我が物にするものでもなく、縛るものでも押し付けるものでもなく、対等にわかちあう精神の自由なのだ(ココロは要らない、金だけくれ、というのがキャサリンだったけど)。気がつくとスクリーンを統一していた青の色調が消え、自然な色彩に変わっている。まさにいままで生きてきた(どよよ~ん)の世界からヘスターは脱出したわけよ。

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