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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2013年12月13日

特集 LGBT-映画にみるゲイ ウォーター・メロン・ウーマン(1995年 ゲイ映画)

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監督 シェリル・デュニエ
出演 シェリル・デュニエ/グウィネヴィア・ターナー

先駆者へのオマージュ 

 ドキュメンタリーというものの、ドキュメントする対象は架空の人物なのだ。この架空のヒロインの名前がウォーター・メロン・ウーマンつまり「スイカ女」。シェリル・デュニエは監督・脚本・主演をこなします。相手役のダイアナが「Go Fish」のグウィネヴィア・ターナーです▼場所はフィラデルフィア。映画作家をめざすシェリル(シェリル・デュニエ)はビデオ屋でバイトしている黒人レスビアン。1930年代の映画「思い出の農園」で黒人の召使になって主演した女優ウォーター・メロン・ウーマンのドキュメンタリーを制作しようと決める。シェリルは古い映画のほんの端役で出てくる同郷の女優になぜか心惹かれたのだ。でも「スイカ女」という名さえクレジットされないのが当時の黒人女優の扱いだった。シェリルは「スイカ女」という変わった名前を唯一の手がかりに過去をさかのぼり、母親の古本の山の中から「スイカ女」の写真を見つけ出す。母親は彼女を「フェイ・リチャーズだ」と別人の名前をあげたのだ。フェイトとはなにもの。シェリルは生存する関係者や図書館の資料から、フェイがマーサという白人の女性映画監督のもとで女優活動をしていたことを知る。黒人の女優の役とはほとんどが使用人であり召使であること、フェイは黒人映画に多数出演したが小さな役ばかりだったこと、マーサとなにかトラブルがあったらしくフェイはマーサと別れ帰郷して歌手となったことなどがわかってくる▼シェリルの性格が好ましい。ビデオ屋でバイトするくらいだからもちろん裕福ではなく、映画作家といってもだれも認めたことがない。彼女は同じビデオ屋で働く気のいいビアン友達のタマラを助手にして取材に行く。シェリルは店にきた小粋なダイアナとすっかりいい雰囲気になった。それをみた新入りのバイト女子は、レンタル手続きの手順を教えてやるというシェリルに「わたしも名札をつけたいわ。そしたらいい女が店に来たら名前を覚えてもらえるし、ナンパできるわ」なんて言う、そろってレスビアンの陽気な店員たちなのだ。筋らしい筋はシェリルがフェイの軌跡を追うことだけだ。しかしこれも、フェイその人が架空の人物なのだから、じゃ一体シェリルが追ってきたものはなんなのだ、ということになる…シェリルはダイアナと恋人同士になり、蜜月が続く。でも黒人仲間にひきあわせるとダイアナはちょっと噛み合いにくいものがあるらしい。シェリルのことは好きなのに、シェリルの背景にある社会とか文化とか、目に見えない壁の厚さに圧迫されるのだった▼シェリルはアスリートのようなひきしまった体である。キラキラした目、たるみのない頬、筋肉の分かれ目がくっきり筋になってわかる腕、身長は高すぎず、低すぎず、一言でいえば嫌味のない体なのだ。ターナーは「Go Fish」の脚本・主演でデビューして以来、フェミニンでありながらタフな芯をみせるキャラで、たちまちレスビアンのアイコン的存在となった。劇中、生前のフェイの情報を、シェリルに教え直前に入院したフェイの友人が、シェリルにあてた手紙というのが紹介される。それには「フェイは生きて多くをなしとげ、あなたのような若い人が自由に生きる道を開いたのです。どうかそのことを記録してください」とある。シェリルがこの映画で追ってきたものは、彼女自身がエンディングで言うように「フェイはかけがえのない人だった。25歳の黒人女性である自分にとってフェイとは希望とインスピレーションと可能性と歴史の源」としてのフェイなのだ。黒人であることとレスビアンという二重のマイノリティを背負ったシェリルの人生出発宣言のようなものだろう。この映画は切り込みは浅いし結論は幼く紋切り型だ。しかしレスビアンの先人たちが、長い間かかって切り開いてきた苦闘のおかげで、自分たちの「自由に生きる道」は現実となりつつあること、恋人をアルバイト先でナンパしようと、いっしょに暮らそうと、異常者扱いでも変態扱いでもない、そんな時代になったこと、だからこそ女たちに自由と希望の源を与えてくれたウォーター・メロン・ウーマンへのオマージュを捧げる。それがこの「記録」である。平明な日常に組み込まれたレスビアニズム。シェリルやダイアナやタマラはフェイが待ち望んでいた時代の子だった。彼女ら若い映画作家によって緒についたレスビアニズム新時代の映像化は、さらに分厚く意欲的で、ポルノティックでさえあることも恐れない「Lの世界」に収斂していこうとしていた。

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