女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「銀幕のアーティスト」

2013年12月22日

特集「銀幕のアーティスト3」 イン・ベッド・ウィズ・マドンナ (1991年 ドキュメンタリー映画)

Pocket
LINEで送る

監督 アレック・ケンシアン

マドンナの言葉力

 フォーブス誌が発表した2012年6月~2013年6月の「いちばん稼いだアメリカのセレブ」によれば、トップはマドンナの1億2500万ドル(約125億円)だった。アルバムの売れ行きもさることながら、最大の収入源はコンサートツアーだ。ツアーの総売上約3億500万ドル(約305億円)。チケットだけでなくコンサート関連商品やアパレルライン、フレグランス、投資収入なども含まれる。2位の「リンカーン」のヒットによるスティーブン・スピルバーグの所得1億ドル(約100億円)を引き離している。さてその台風みたいなツアーだが、本作は1990年5月にスタートした「ワールド・ツアーブロンド・アンビション・ツアー」のドキュメントだ。監督は26歳の新人アレック・ケンシアン。マドンナに絶対服従という指示を守らず、ステージだけでなくプラーベートな場所まで撮影した。マドンナも結果それがいい目にでると踏んで撮影を続行させた▼ツアーの初日は東京だった。ニューヨークなみの寒さで雨続き。マドンナは不機嫌で早くアメリカに帰りたいとぼやき、ステージの音響チェックが気にいらず「音がよくならないなら公演は中止よ」と早くも独裁ぶりを示す。マドンナの顔ってよくみると男性的ですね。ショーが始まったときにみせた上半身、特に上腕の筋肉。もりあがった腕は本作でのちにわかるけど、アスリート顔負けのトレーニング室での鍛錬による。彼女は165センチ。どちらかといえば低い身長で(発表数値はたいてい3センチくらいサバをよんでいる)男性ダンサー7人(うち6人がゲイ)、女性ダンサー2人で構成されるマドンナ・チームのダンスでステージを圧倒する。劇中の曲は父親のために歌う「ハッピー・バースデイ」以外みなマドンナのオリジナルだ。このステージは東京公演に始まり、アメリカ、カナダ、ヨーロッパへ移る。当時の恋人ウォーレン・ビーティがカメラから顔を隠そうとしたり、マドンナのステージを批判したケビン・コスナーがつれない仕打ちにあったり、楽屋をたずねたアル・パチーノ、アントニオ・バンデラスらもカメラにおさまっている▼マドンナはステージにあがる直前、ダンサー全員と輪になり手をつなぎ祈る。たとえば故郷ボストンの公演の前はこうだった。「主よ。わたしはいつもショーの前、特大のお願いをしますね。祈れよ、さらば与えられんという言葉通り、どうか今夜歌えるだけの声をお与えください。コーラスにも。故郷なので緊張しているのです。人のいうことなど関係ないとしてもやはり気になります。ですからどうぞ、お与えください。あの特別な力を。わたしが何かを成し遂げたと示せるように。アーメン。いいショーを」彼女は5歳のとき母親を失った。マドンナの母は30歳で没した。墓参にきたマドンナは「お母さん、今はどんな姿なの。たぶん塵ね」墓石をなで「わたしはここで埋まるの。ママの横に」。そう言って寝そべり墓石にほほずりして「もう行くね」▼長い公演のあいだにはチームワークもピンチに瀕することがある。ゲイであることをホモファビア(ゲイ嫌悪者)からの嫌がらせがあったり、町中で乱暴されたりする。その日もマドンナは手をつなぎ祈る「みんな数日前に比べれば元気だと思います。ショーは安心です。わたしが祈りたいと思うのはみんなの行いです。ツアーのあとならなにをしようとわたしはかまいません。でもわたしといっしょに仕事しているあいだは思いやりと敬意をもってお互いに接してください。世の中はつらいことが多すぎます。せめてわたしたちはやさしさと敬意を。今必要なのは助け合い守りあうこと。そしてもう少し自らを愛し、もう少し隣人をも愛すことです。今夜はニューヨーク公演の最後です。アメリカでの最後でもあります。これを若くして逝ったキースに捧げます。どうかわたしたちに問題を克服させてください。今夜最高のショーができますように。アーメン。いいわ。素晴らしいショーを」。長々と書いたのは感動してしまったからだ。みんな公演の独自性とパフォーマンスに目がいくけど、スタッフをまとめるマドンナの言葉力ってすごいと思ったのだ▼もうひとつ。公演中誕生日を迎えた女性マネージャーのパーティの席で。場所はうちわだけの楽屋みたいなところだ。マドンナはプレゼントに詩を書いたと言う。「メリッサ。お誕生日の詩よ。読むね。その昔わたしがまだ罪を犯し始めたころのこと。わたしは相棒が欲しいと思い探し求めて神に祈った。ある朝マネージャーの事務所。いつも通りまくしたてるわたし。部屋をみわたすと小さな胸がたかなった。隅に見つけたのだ、スイートな彼女を。彼女はパステルで身を包み電話にかかりきり。指先に即席ネイル。その長いのなんの。わたしはウィンクしてこう言った。ミス・マフェット。このズベ公と仕事しない? 耐えられる? 私は〈フレディ、情婦をとりかえな〉=たぶん彼女はフレディの恋人だったのだろう=あとはご存知の伝説通り。一筋縄じゃいかない彼女。感謝しているわ、メリー・メル。臭いパンティを片付けてくれる。タンポン、コンドームも買ってくれる。Lサイズよ。人生はままならぬもの。わたしもわかっている。プロに出会えたわたしはラッキー。彼女の家は同じでも長い爪は消えた。彼氏は冴えないが飲む酒はドンペリ。あなたなしではなにもできない。棄てられたら自殺するわ」ひとはときにはこういう素っ裸の言葉をちゃんと伝える必要がある▼マドンナは言う「女を憎むホモは雇わない。殺してやる。ホモに限らず女を憎むなら殺してやる。女にかぎらず憎むやつを殺す。ハリウッドが目標か。ノー。評判が気になるか。ノー。お世辞が欲しいか。イェー」(笑った)。すべてを拒否してとてつもない肯定を奪う、そんな女だとしかいいようがない。

Pocket
LINEで送る