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特集「銀幕のアーティスト」

2013年12月29日

特集「銀幕のアーティスト3」 くたばれ!ハリウッド (2002年 ドキュメンタリー映画)

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監督 レット・モーゲン/ナネット・バーンスタイン
出演 ロバート・エヴァンス(ナレーション)

伝説のプロデューサー 

 ロバート・エヴァンスが7度目の離婚をしたのが2006年だった。そのあとは知らない。妻のヴィクトリア・ホワイト=オガラと1年足らずで解消したことになる。ハリウッド伝説のプロデューサーといわれるエヴァンスは生粋のニューヨーカーだ。その彼がなぜハリウッドで生きることになったのか、それがそもそもプールサイドでの大女優との出会いだったと、本作の出だしは映画に劣らずドラマティックだ。語りはむろん本人エヴァンスである。のっけからこうくる。「どんな話にも3つの側面がある。相手の言い分、自分の言い分、そして真実。だれもウソなどついていない共通の記憶は微妙に異なる」簡にして要を得た導入だ。派手な結婚歴や交友関係や、成功と挫折を繰り返した彼のことだから、その自伝というべき本作はどんなハッタリをかましているのかと思うが、自分の見解はものごとのひとつの側面にすぎない、相手の言い分もあれば真実という側面がある、とさらりと自己美化調から身をかわしています。ハッタリや自己宣伝や美化だけで男は君臨できない、少なくともハリウッドではもっと本物の野心が必要だ、たとえば彼はこう自分の例をあげている「一日18時間一週間に8日働くこと」凄まじい労働というべきだ。彼の成功がきれいごとに聞こえないのは、もぎとる果実が甘く大きいほど自らをしぼりつくした犠牲も大きかったからだろう▼彼は俳優からプロデューサーに転身したとき、どうしてもこの業界で認められる(というより自分をあなどるやつをアッといわせる)成功例が必要だった。二枚目の役者として映画界入りしたエヴァンスは俳優では映画を支配できない、全権を持つプロデューサーこそおれの本分だと、3作で俳優にみきりをつけた。2作目はヘミングウェイの「陽はまた昇る」で、闘牛士に扮したが原作者はクレームをつけた。エヴァンスは降ろされるはずだったが、せっせと闘牛士の技を身につけ撮影に臨んだ。闘牛場でエヴァンスの演技をみたダリル・ザナック(プロデューサー)が「あの子を残せ」と言った(THE KID SAYS IN THE PICTURE)。これを聞いたエヴァンスはザナックのようなプロデューサーになりたいと思った。そのときのザナックの言葉が本作の原題だ▼エヴァンスのプロデュース第一作は「ローズマリーの赤ちゃん」だった。誰も名前を知らなかったロマン・ポランスキー監督をエヴァンスは選ぶ。ウマがあった「すぐ意気投合した。どちらも人生という学校の卒業生だった」と言う。映画は大ヒットしたが、ポランスキーの留守宅をヒッピーが襲撃し、妻のシャロン・テートはじめその場に居合わせた全員が射殺された。この日ポランスキー邸に招かれていたエヴァンスは、編集作業が長引いたため遅れ、九死に一生だった。売れっ子プロデューサーとなったエヴァンスはでアリ・マッグローを主演に「ある愛の詩」映画化に取り組んだ。つきあっている彼と結婚してベニスに行くことを計画しているというアリに「計画なんかよせ。貧乏人のすることだ。その男とダメになったら電話をくれ。おれはダイアル7桁の距離にいる」あほらしくなるほどキザだ。でもこれで7度も結婚したのだ。映画は社会現象になるほどヒットした。「愛とは後悔しないこと」は流行語になった。エヴァンスはアリと結婚し、次作「ゴッド・ファーザー」に挑んだ▼困難を極めた映画化だった。監督のフランシス・コッポラは無名だったが作家主義でエラソーだった。主役に決まったマーロン・ブランドは偏屈だった。原作者マリオ・プーゾが脚本を担当したが共同執筆者コッポラとは衝突ばかりだった。気が狂いそうなトラブルのなかで映画は完成し、アカデミー作品賞を受賞した。エヴァンスの手腕は映画界を席巻した。私生活ではアリとの間に息子が生まれた。「ゴッド・ファーザー」にかかりきりのエヴァンスは妻との距離が遠くなり、妻は「ゲッタウェイ」で共演したスティーブ・マックイーンと恋愛に落ちエヴァンスのもとを去った。エヴァンスの独白はこうだ「女の心が読めるなどという男は何もわかっちゃいない」。最愛のアリを失いコカイン所持や殺人事件にまきこまれたエヴァンスは転落する。パラマウントは冷たかった。いったいおれが会社にいくら儲けさせたと思っている、エヴァンスは憤慨したがやるべきことはたったひとつ、成功して見返すことだ▼昔の恩義を忘れなかった友人たちがいた。彼らに助けられエヴァンスは「硝子の塔」で大ヒットをとばす。自分の性格に合うドラマティックなものに強いのだ。本作で彼は73歳だ。ハリウッドの現役で仕事している。ポランスキーやクリント・イーストウッドに比べたら10歳若い。まだまだやるだろうと思うと…さあなにを作るだろう。いささかゾッとするものがあるけど。

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